新着情報

JTA News & Topics 」 第175回                                  今回は、2023125日に実施しました『The Snow Princess』で楽しむ絵本翻訳セミナー (主催:バベルユニバーシティ、後援:一般社団法人 日本翻訳協会)受講者の吉田ひろみさん及び横須賀珠世さんよりセミナーレポートを投稿していただきましたので掲載をしています。
情報提供:一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)           https://www.jta-net.or.jp/
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
   The Snow Princess』で楽しむ絵本翻訳セミナー 

 ー美しい物語の世界を、日本語で表現してみましょうー

 ・大学で国文学を専攻。

 ・小学校の読み聞かせ活動に参加して絵本の面白さに目覚める。

 ・3年間のカナダ滞在時に英語の絵本に触れる。

 ・バベル・ユニバーシティーなどで絵本翻訳を学ぶ。

 ・第18回いたばし国際絵本翻訳大賞英語部門大賞受賞『こおりのなみだ』

 ・翻訳作品『どこかな あるかな さがしてね くまくんの クリスマス』

  『「危険なジェーン」とよばれても』(いずれも岩崎書店)

  • レポーター :吉田 ひろみ

バベル翻訳専門職大学院在籍中                                    米国ハワイ州在住。国際企業でフルタイム勤務の傍ら、子育てと学業の両立に奔走中。 

今回、小林講師の「The Snow Princess」で楽しむ絵本翻訳セミナ-、美しい物語の世界を、日本語で表現してみましょう、へ参加させて頂きました。

小林 晶子講師のご紹介                                        ・大学で国文学を専攻。                                       ・小学校の読み聞かせ活動に参加して絵本の面白さに目覚める。                     ・3年間のカナダ滞在時に英語の絵本に触れる。                              ・バベル・ユニバーシティーなどで絵本翻訳を学ぶ。

・第18回いたばし国際絵本翻訳大賞英語部門大賞受賞『こおりのなみだ』               ・翻訳作品『どこかな あるかな さがしてね くまくんの クリスマス』                 『「危険なジェーン」とよばれても』(いずれも岩崎書店)

Book fairの古本セールラックの中にあった本との偶然の出会い。きれいな物語の訳の注意点として、なんとなくスルスルと美しい言葉を使って訳せてしまい(独りよがりの言葉選び)、一見、物語はきれいにまとまっていても、原文とずれている危険性もあるので、原文に立ち返り、自分のム-ドだけでいっていないか、声に出してみることで、オヤッ?と自分自身で気付く部分もある、という講師の体験談に基づくアドバイスは参考になりました。

物語の元となっているのはロシア民話に登場する雪むすめ(ロシア語でスネグーラチカ)。19 世紀に戯曲化され、オペラとして上演。春になって雪が融けると娘も消えてしまうのが元のストーリー。サンダーソン氏は、困難に打ち勝って幸せをつかむ新しいヒロイン(カーチャ) を描いており、また、絵の才能もすばらしく、美しく魅力的。

『カーチャは、セルゲイのほほにふれました。とそのとき、じぶんのゆびさきがあたたかいことに気がつきました。カーチャのかおはもう青白くなく、ほんのりと赤みをおびていました。からだじゅうにかんじ、死んでしまうようにはとてもおもえません。 雪はとけつづけ、あらわれはじめた大地は、草木の芽や、花のつぼみをぐんぐんとおしあげました。カーチャはおどろいて目をやりました。すると、あたらしくめばえたいのちたちのあいだに、母である春が立っているのが見えました。 「わたしは、にんげんを愛しまいました。だけどまだ生きています」カーチャはいいました。 「むすめよ。あなたは、いつかかならず死ぬのです。愛があなたのこころをうごかしたから。あなたはにんげんになり、いつか死ぬうんめいをうけいれた。すべての生きものとおなじように、年おいて死ぬのです」そういうと春の母は、ゆっくりと目のまえからきえていきました。』

サンダ-ソン氏の絵本は、ティーンエイジャ-も楽しめそうな少し大人っぽい物語。内田莉莎子氏の再話、佐藤忠良氏の絵による『ゆきむすめ』1963年に月刊絵本「こどものとも」の一冊として刊行され、1966年に出版されたロシアの民話を元にしたお話は、もう少し幼い子供から楽しめる物語。雪でつくられた娘は、賢く美しく育っていくのですが、春が来て夏が近づけば雪が消えるのは自然の摂理。他の雪よりも長く地上に留まっていたゆきむすめも、たき火にはかなわず、湯気となり、空へと立ちのぼってしまう、というはかなくせつない物語。

1873年にアレクサンドル・オストロフスキーが書いた童話『雪娘 / 春のおとぎ話』を1882年にリムスキー・コルサコフの戯曲化で、3時間15分ほどのオペラを上演。1836年に発表されたハンス・アンデルセンの童話『人魚姫』や日本の『鶴の恩返し』などを思わせる物語。

恋を知らない存在の雪娘が人間界で恋と愛を知る物語。永遠の恋の典型である三角関係を軸にせつない雪娘の愛の成就が描かれています。

ロシア5人組と呼ばれるチャイコフスキーとリムンスキ-のオ-ケストラ演奏を聴きながら、ロシアの厳しい冬の自然と壮大な風景が目の前に広がりました。同時期に活躍した作曲家たちのバックグラウンドや曲風の違いも興味深く、何度も聴き返しました。オペラ歌劇の物語とオーケストラ演奏の融合が印象的で、さらに想像力を掻き立てられました。

それぞれ、比較しながら読んでみるとおもしろく、心に残る味わい深いお話がすばらしく、感動、感涙。

  • レポーター:横須賀珠世

アメリカ、ミシガン州在住。日系自動車サプライヤーでパートの事務仕事をする傍ら、2017年よりバベルの法律翻訳コースの受講を開始、2022年秋に無事卒業。現在は専業主婦。

1月25日に開催された『The Snow Princess』で楽しむ絵本翻訳セミナーに参加しました。私個人の経験ですが、息子が小さかった頃、なかなか日本語の絵本を入手できず現地の絵本を自分で訳して読み聞かせることがあったため、今回のセミナーにはとても興味がありました。数年前に別の先生の絵本翻訳セミナーに参加したことがありましたが、今回もまた、新たな学びが多くありました。

先生が挙げられた本セミナーのポイントは以下の通りです。

  • 「彼」「彼女」などは使わない・漢字の使用 対象年齢
  • どこか、自分の独りよがりの物語にして原文と微妙にずれる危険性
  • 声に出して読む
  • 過去形・現在形
  • 英語話者由来でない物語

セミナー前半では早速、宿題の翻訳の見直しに入りました。先ず受講生が躓いたところは、「The Snow Princess」というタイトルでした。あまりにも短いこのタイトルを、どう表現するか。幾つも候補を立てるも、何故か「ゆきひめ」では、落ち着きが悪いと感じていました。「かぐやひめ」も、「ももたろう」もしっくりくるのになぜ・・・。短いタイトルには「リズム」がなく、リズムを付けるのに「五七五」を採用すると、すわりが良くなるという技法をご紹介下さいました。

上記注意点で特に今回私がなるほど、と思わされたのは「どこか、自分の独りよがりの物語にして原文と微妙にずれる危険性」についてでした。今回の課題で私は、「対象年齢」のところから大きな躓きをし、訳全体にその影響が顕著に表れてしまいました。課題が出されたときに、原作本の対象年齢をアマゾンでざっと調べました。対象年齢は「baby - 3years」と書いてありましたが、文字数多めの本でした。無理があるなと思いながらも、それ以上調べず自分なりに設定を3歳から5歳くらいと設定し直して翻訳に取り掛かかってしまいました。未就学児に分かるような言葉選びと、簡潔な文章にしなければとの思いが、結果「独りよがりの物語」になってしまったのです。原文に書かれていることを大幅に端折り、原文の表したかったことと訳がかなりずれてしまったのです。セミナー中に分かったことですが、本の出版社のサイトでは「preschool to grade 3」と設定してありました。対象年齢をきちんと調べた上で、分かりやすくとも原文からかけ離れない訳をするという大切さを目の当たりにしました。

また上記のポイント以外で、「絵から読み取れるもの」の大切さについてもご説明下さいました。絵には本文では触れられていないものが多く描かれています。例えば、本文中にhomeという言葉がでてきますが、そこには「城」が描かれており、訳文に「家」ではなく「城」という表現を使っていいのかという点に触れました。またmusic instrumentという表現が出てきたときに、私は「笛や太鼓」と表現してみました。しかし、実は絵に太鼓は描かれていなかったのです。特に絵本では絵と本文の内容が一致してることが大切である点について、納得させられました。

また、今回とても印象的だったのは、日本語のもつイメージを理解した上での訳付けという点をご紹介下さったところです。例えば、She crossed barren deserts of ice and snow with the polar bears.という文が出てきましたが、私も含め、受講生の多くが「砂漠」という訳語を選びました。しかし、日本語の「砂漠」という言葉が持つイメージは、「サハラ砂漠」のような「砂」の砂漠です。今回の絵本はロシアが舞台のお話ですが、この「砂漠」という言葉では寒い地域のイメージとの間に食い違いが出てしまい、これも又、読者を混乱させる原因となります。先生が提案下さった訳は、「荒れ地」でした。なるほど!という感じでした。このように、日本語の「単語」もつイメージを理解し、大切にすることの意味について気付かされました。

上記注意点以外にも、以下のようなポイントについてお話を伺いました。

  • 時代に合ったGenderの訳
  • 人名(呼び名)の決め方
  • 対象年齢小学校中学年でも、使用する漢字は1年生で習う漢字程度
  • その物語のなかでその漢字がどんなイメージを読者に与えるかで選ぶ漢字
  • 原文にはない部分を補足してあげる点

約一時間半のセミナーでは我々がやってしまいがちな間違いや勘違いなどについて幅広くご指導くださいました。いつか、絵本翻訳をやってみたいという思いがあり、次の絵本翻訳セミナーも是非、受講したいと思っています。 

==================================

●●セミナーのご案内●● 

*ZOOM(オンライン)で受講できます。                           

==================================

==================================

●ZOOM オンラインセミナー●

==================================

==================================

「年金を受給しながら趣味と翻訳業を楽しむには」セミナー

― 仕事(翻訳)と趣味のワークバランス ―

年金をもらいながら翻訳業と趣味を両方楽しめたら…。そんな夢のような生活を実現するためのヒントをお教えます。子供たちが独立した後、あることがきっかけで、翻訳の仕事優先の生活から、趣味である旅行を楽しみながら仕事もする生活にシフトしてから4年以上経ちました。契約翻訳会社を一社に絞り、その会社から仕事を依頼されなくなったら翻訳者を引退するつもりでしたが、予想に反して参加するプロジェクトは増えるばかり。そこで、私の個人的経験を公開し、これから趣味と翻訳の仕事の両立を図っていきたい方に何らかのヒントになれば幸いです。

【セミナー目次】

1.いつになったら自分の人生を楽しめるのか?

2. 年金をもらいながら、現役生活を続けるには?

3.シニアになっても必要とされる翻訳者でいるには?

4. 翻訳業の辞め時

  • 講師:ハクセヴェルひろ子

・日本の大学卒業後、商社と外資系金融機関に勤務

・1992年トルコに移住

・1999年Proz.com に登録

・2005年バベル翻訳大学院にて翻訳修士号を取得

・2008年Proz.com Certified PRO認定会員

・現在トルコに在住し、実務翻訳に従事する傍ら、

趣味の旅行と仕事の両立を目指して奮闘中

  • セミナー日程: 2023年4月26日(水) 15時~16時30分(日本時間)
  • 申込締切 : 2023年4月20日(木)(日本時間)

◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓

https://www.jta-net.or.jp/seminar_230426.html

================================

================================

映像翻訳入門セミナー

― 映画「シャレード」で学ぶ映像翻訳 ―

ネットによる映像配信は依然として盛んですが、優秀な翻訳者はまだまだ足りない状況が

続いています。このセミナーでは字幕翻訳の演習を行い、プロになるための大事なポイント

をご教示いたします。初心者から上級者の方までどなたでもご参加いただけます。

<セミナー目次(内容)>

1 字幕翻訳のルール

字幕翻訳の様々なルールについてお話しします。

2 字幕翻訳の演習

あらかじめ作ってもらった字幕について講評し解説します。

3 プロになるためのポイント

仕事に結びつけるために何が大事であるかをお話しします。

*このセミナーでは、ご参加者様にあらかじめ課題問題を解いていただき、

各人が提出した課題の回答を題材に解説も致します。

*時間の都合でお送りいただいたご参加者様の回答を題材にできない

場合がありますのでご了承ください。また、課題の添削はございません。

*課題の提出は任意でございます。

*課題提出締切:2023年5月12日(金)15時まで(日本時間)

お早目にお申込み下さい!

  • 講師:田中 武人(タナカ タケト)

・早稲田大学教育学部卒業

・字幕翻訳歴34年

・バベル翻訳大学院USA「字幕/ドラマ」プロフェッサー

・劇場公開『CUBE』『ホテルルワンダ』『最終目的地』、

ドラマ『CSI:科学捜査班』『ヤング・スーパーマン』など翻訳作品多数。

  • セミナー日程: 2023年5月17日(水) 15時~17時(日本時間)

<途中、10分ほど休憩が入ります>

  • 申込締切 :2023年 5月11日(木)(日本時間)

*課題提出締切:5月12日(金)15時まで(日本時間)

◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓

https://www.jta-net.or.jp/seminar_230517.html

===============================

===============================

●●翻訳試験のご案内●● 

*試験は全てインターネット受験ですからご自宅での受験となります。 

  • ●実施日:2023415日(土)(日本時間)
  • ●締切:2023411日(火)(日本時間) 

◆《出版翻訳能力検定試験》

1) 第38回 ヤングアダルト・児童書翻訳能力検定試験 (英日)

2) 第37回 エンターテインメント小説翻訳能力検定試験 (英日)

https://www.jta-net.or.jp/about_publication_exam.html 

◆《ビジネス翻訳能力検定試験》

1) 第1回 〔英日〕リーガル翻訳能力検定試験

2) 第1回 〔英日〕医学・薬学翻訳能力検定試験

https://www.jta-net.or.jp/about_business_exam-2.html 

◆第33 翻訳プロジェクト・マネージャー資格上級試験

https://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm_2.html 

◆第28 Plain Written English 能力検定試験

https://www.jta-net.or.jp/about_plain_written_english_exam.html 

◆第35 フランス語翻訳能力検定試験 ノンフィクション分野 (仏日)

https://www.jta-net.or.jp/about_french_translation_exam.html 

◆第35 ドイツ語翻訳能力検定試験 ノンフィクション分野 (仏日)

https://www.jta-net.or.jp/about_german_translation_exam.html

 

===============================
情報提供 : 一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)

●一般社団法人 日本翻訳協会● https://www.jta-net.or.jp/
・設立:1986年10月
・Mission:「翻訳に対する社会の認識を高めること及び翻訳に関する技術及び知識を増進することによって翻訳の水準を高めること並びに翻訳者を支援してその自立を促進することを通じて、世界の文化交流及び産業経済の発展に寄与することを目的とする。」
================================

0
おすすめの記事