第 14 回 世界のブックフェアー
北京国際ブックフェア2025:アジア最大規模の書籍の祭典
北京国際ブックフェア(BIBF)は1986年に創設されて以来、アジア最大級、世界でも有数の規模を誇る書籍イベントとして定着しています。
2025年のフェアは、6月18日から22日までの5日間、北京国家会議センターで開催され、過去最大規模を記録しました。今回のフェアには、80の国と地域から1,700社以上が出展し、来場者は30万人を超えました。展示された書籍は、アートブック、科学書、児童書、電子書籍など多岐にわたり、その数は22万点以上にのぼりました。また、会期中の著作権契約数は、前年2,300件を上回る2,826件に達し、翻訳・映像・ゲームなどへの二次利用も含まれる多角的なメディア展開が加速しています。
「文明の継承と発展を促進し、相互利益のための交流と相互理解を促進する」をテーマに掲げた今年のBIBFは、このテーマに沿って、オープンサイエンスについて話し合う「STM APACカンファレンス」や、出版業界におけるAIやデジタル技術の活用をテーマにした「PubTechカンファレンス」など、先端的かつ専門性の高いイベントが多数開催され、出版業界関係者から高い評価を受けました。
そのほか、児童書フォーラムでは、中国国内外の専門家が集まり、商品開発や政策、マーケティングなどについて議論しました。また、アートブック展示エリアでは、デイヴィッド・ホックニーらの作品が注目を集め、連日長蛇の列となりました。
中国の出版市場は、2025年第1四半期に前年同期比10.7%増と成長を続けており、年間では約192万点の新刊が発行されています。BIBFはこの成長の中核を担い、オンライン小説、AIツール、電子学術リソースの国際展開を推進する重要なプラットフォームとしての役割を果たしています。
今年のBIBFは、規模、多様性、技術革新の三拍子が揃い、書籍市場の活性化と文化交流の場として、その存在感を一層高めました。デジタル時代の出版を支える国際的なクロスロードとして、国内外のパートナーとの連携が深まり、今後のさらなる発展が期待されます。
なお最後に、同時期に韓国のソウルで開催されたソウル国際ブックフェア(SIBF)についても触れておきます。2025年のSIBFには、17か国から530を超える出展者が参加し、記録的な盛況のうちに幕を閉じました。テーマは「The Last Resort(最後の拠り所)」。世界的な不安の時代における「本の力」を問うもので、多くの来場者の共感を呼びました。
同時期に開催されたアジアの二大ブックフェアですが、北京は国際的な出版ビジネスの拠点として、ソウルは読者との文化的な体験を重視するイベントとして、それぞれ異なる方向性と特徴を示しました。今後も両都市は、それぞれの立ち位置からアジアの出版文化の発展に寄与し続けていくことが期待されます。
荒木智子(あらき・さとこ)
立命館大学英米文学専攻卒業。バベル翻訳専門職大学院法律翻訳専攻修士課程修了。
特許翻訳歴約 10 年。心も体も健康に 150歳まで生きるのが目標。完全菜食主義で、野菜は自然農で自給を目指す。自然の美に感動しながら田舎で楽しく暮らしています。