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第5回 セレブリティのブッククラブ 

                                                                                                                                                     2024/9/22

本棚を見ればその人の人となりがわかると言いますが、あなたは有名人の本棚をのぞいてみたいと思いませんか? 海外では女優など多くのセレブリティがブッククラブを運営して、おすすめの本を紹介しています。今回は特に大きな影響力を持つ3つのブッククラブをご紹介します。

Oprah’s Book Club
オプラ・ウィンフリーは「オプラ・ウィンフリー・ショー」(1986〜2011年)で世界的に有名な司会者であり、女優、プロデューサー、慈善家としても知られています。1996年に「オプラ・ウィンフリー・ショー」のなかで始まったOprah’s Book Clubは28年の歴史を持ち、世界で最も有名で影響力のあるブッククラブのひとつと言われています。オプラが選んだ本は瞬く間にベストセラーになることが多く、この現象には「オプラ効果」という名前までつけられているほど。オプラが選ぶ本の多くは、深い内容のフィクションや回顧録で、選ばれた本は文化的にも大きな影響を与え、単なる読書コミュニティにとどまらず、社会的な議論を促進する場としても機能しています。これほどまでに大きな影響力を持つ背景には、大きく2つの理由があります。1つ目は、テレビショーを通じて、多様なバックグラウンドを持つ視聴者の支持を集めてきたため、ブッククラブにも幅広い年齢層や社会的背景を持つ読者が参加していることが挙げられます。選ばれる本は、人種、社会正義、個人の成長など、現代社会における重要な問題を扱っており、読者に深い考察を促すものが多いようです。2つ目にはマルチプラットフォームでの展開が挙げられます。Oprah’s Book Clubは、Apple Booksとの提携を通じてデジタルプラットホームでも強力な存在感を持ち、さらにはオプラ自身が所有するメディアネットワーク「OWN(Oprah Winfrey Network)」や雑誌「O, The Oprah Magazine」でも広く宣伝されており、物理的な本の売り上げだけでなく、電子書籍やオーディオブック市場にも大きな影響を与えています。
このようにOprah’s Book Clubは出版業界にとっても重要な存在であり、実際、数多くの著者が、オプラの推薦を受けることで大きな成功を収めています。

Reese’s Book Club
「キューティ・ブロンド」や、アカデミー賞主演女優賞受賞作「ウォーク・ザ・ライン」などで、日本でも人気の高いリース・ウィザースプーン。リースはハリウッド女優として成功を収める一方、女性のエンパワーメントとジェンダー平等の擁護者としても知られています。女性の声を伝える物語を、映画、テレビ番組、本など、さまざまな形式で発信するメディア会社「Hello Sunshine」を設立し、エンターテインメント業界内外で影響力を持っています。Reese’s Book Clubもこの事業の一環として、2017年に立ち上げられました。クラブでは、女性を中心にしたストーリーや強い女性のリーダーシップを描いたストーリーが、フィクション、ノンフィクション、回想録など広いジャンルで取り上げられます。オンラインコミュニティで強力な存在感を持ち、特にインスタグラムなどのソーシャルメディアで選ばれた本が発表され、活発に議論が行われています。また限定コンテンツを入手できる専用アプリもあります。Reese’s Book Clubで選ばれた本がベストセラーになることも多く、映画化やドラマ化された作品も数多くあります。もちろんリースの会社である「Hello Sunshine」がこうした作品を制作することもあります。

Read with Jenna
Read with Jennaを運営するジェナ・ブッシュ・ヘイガーは、元アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュの娘で、ニュースキャスターであり著者でもあります。現在NBC「Today」ショーの共同ホストを務めており、教育と読書推進の活動家としても活躍しています。2019年にスタートしたRead with Jennaでは、現在の社会問題を反映したフィクションにフォーカスすることが多いですが、示唆に富んだ内容であると同時に、読者にとって手に取りやすい本を紹介することを目指しています。著名な作家と新人作家の両方にスポットライトを当てているのも特長のひとつ。Read with Jennaは、「Today」ショーで大きな存在感を持ち、取り上げた本について毎月ジェナと視聴者が意見交換を行っています。インスタグラムなどのソーシャルメディアにも活発なコミュニティがあり、定期的に議論が行われたり、本に関連したコンテンツが共有されたりしています。

こうしたブッククラブは、文学界で大きな影響力を持つだけでなく、多様な発言を吸い上げて発信する場であり、読書の楽しさを広めるうえでも重要な役割を果たしています。日本では、タレントや人気作家がメディアでお気に入りの本を紹介したり、オンラインサロンや文芸誌で読書会や書評が行われることはありますが、定期的なブッククラブは、まだ存在しないようです。自らの言葉を発信することが日常になった日本でも、近い将来、こうしたブッククラブが誕生するかもしれませんね。

<ライタープロフィール>

今田陽子(いまた・ようこ)
BABEL PRESSプロジェクトマネージャー。カナダBC州在住。シャワー中もシャンプーボトルのラベルから目が離せない活字中毒者。

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