2022年12月22日 第306号 World News Insight (ALUMNI編集室改め)
発行:バベル翻訳専門職大学院 ALUMNI Association
「 イーロン・マスク 」
バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹
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竹内一正著『イーロン・マスクの野望。未来を変える天才経営者』から、時代を画する宇宙規模の壮大なスケールの事業と米国、世界の行く末を左右するかもしれない予兆を観ていきたい。
自動車王のヘンリー・フォード、石油の世紀を築いたジョン・ロックフェラー、そしてパソコンで未来を創ったスティーブ・ジョブスなど、天才経営者や偉人は数々登場してきたが、その誰をも凌駕する桁違いの発想と、比類なき行動力を持ち、アメリカ大統領以上に世界中がいま注目する人物がいる。それがイーロン・マスクだ、と言う。
宇宙ロケット、電気自動車、そして太陽光発電。この3つの先端産業で革命を起こそうと挑んでいる異色の経営者である。イーロンが異色なのは外見ではない。彼が、金儲けのためではなく、人類を救い、地球を助けるために会社を起こしていった点であった。
アメリカのペンシルベニア大学で物理学と経営学を学んだイーロンは、スタンフォード大学の大学院に進学したが、たった2日で辞めて、ソフト制作会社を起業。その後、ペイパルの母体を築き、ペイパル社売却で170億円を手にした。
彼はロケットを従来の10分の1という激安な製造コストで作り上げた。これだけでも驚くが、イーロンの視線は遥か彼方を目指していると言う。
「人類を火星に移住させる」、これこそが彼の究極のゴールだ、と。
大きなことをいう奴ほど、現場の実態など知らないものだが、イーロンは違っていた。ロケットに使う材料や溶接方法に至るまで細部を知り尽くし、その上でロケット開発に挑んでいた、と言う。
彼の卓越した能力の一つは、成功を単なる「点」ではなく「線」で捉えることにある、と。
大学生時代のイーロンはたびたび、「人類の将来にとって最も大きな影響を与える問題は一体何か」と考えていた。そして、辿りついた結論が、「インターネット、持続可能なエネルギー、宇宙開発の3つ」だった。そして、今や、彼の資産は、約8000億円と言われる。
1971年、南アフリカの裕福な家庭で生まれたイーロン・マスクは、幼いときから本が大好きだった、と言う。弟たちがおもちゃに夢中になるのをよそに、「ロード・オブ・ザ・リング」や「銀河帝国の興亡」に熱中し、本を読みふけり、8歳でブリタニカ百科事典を全巻読破、小学校の高学年になると10時間も本を読みふけることさえあった、と言う。
10歳のときに彼は小遣いを貯めて、足りない分は父に出してもらって、念願のパソコンを購入し、プログラムの教科書を手に入れ、独学でマスターしていった。
彼はペンシルベニア大学で物理学を専攻したが、彼ほど物理学的思考を実際のビジネスで、縦横無尽に活用した経営者は他にいないかもしれない。物理学ではモノマネでなく、「原理」から思考を展開した、と。
彼は、スペースX社のCEOであるだけでなく、最高技術責任者(CTO)でもある。
実際のロケット開発で様々な技術的な決断を下している。「私は自分たちが作るロケットのあらゆることを知り尽くしている」と言い切れるだけのハードな努力をし、詳細まで理解し判断していた、と言う。
また、彼の天才的にして型破りなところは、このようにロケットの詳細開発に入り込む一方で、NASAから多額の開発補助金を引き出すというまったく別次元の才能を発揮している点にある。理系の頭に、文系の交渉力を兼ね備えたCEOだ。しかも、両方とも超高度なレベルが要求されていた。
イーロンの妻だったジャスティンは、夢を追いかける夫についてこう評していた。
「彼は単なる夢追い人じゃなく、夢に向かって爆走する桁外れの野心家なの」と。 彼は奇跡的に、お金に振りまわされないための「取扱説明書」を持っていたようだ。
「相手が何を大切にしているかを考え、それを形にできれば、相手は喜んでお金を支払う。お金は私たちの必要なところへ流れていくんです」とお金の真理を示唆していた。
イーロンは車についてこう語っている。「人は車を購入するとき、実は自由を買っているのだ。つまり、いつでも、どこへでも自分の行きたいところへ行くことができる」と。
また、この本では触れていないが、最近の彼の偉業は、Twitter社の買収である。2022年10月イーロンは赤字に苦しむTwitter社を手に入れた。
イーロン・マスクがTwitter社を手に入れて、永久凍結されたトランプ氏のアカウントを復活させた。
ディープステートの一部機関と言われている
・マイクロソフト社
・メタ社(Facebook・Instagram)
・アルファベット社(Google・Youtube)
・アマゾン社
・アップル社
などの巨大IT企業群から、これによりTwitter社が抜け出すことになる。
今は、オーナーのイーロン・マスクがCEOを務めるTwitter社。今は赤字会社だが、
将来は、新しい巨大メディアになる可能性もあるという。
トランプ氏の作った「トゥルース・ソーシャル」とその機能は、FaceBookと非常に似ていて、マスク氏のTwitterと、連携するようなことがあると、FaceBookに対抗する巨大メディアが出現する可能性も出てくる、と言う。Twitterとトゥルース・ソーシャルとが融合する可能性も指摘される。
今後も、イーロンとトランプの、米国、そして世界を見据えた動向に注視したい。