第20回 翻訳ライター(Trans-writer)のすすめ
小室誠一:Director of BABEL eTrans Tech Lab
先日、本連載の第17回「NMTとLLMの上手な使い分け」を動画にしてYouTubeにアップしたところ、以下のようなコメントがありました。
https://youtu.be/7GTXFvoew_0?si=i4TJoHtkDuJbtNdr
「このような変革期は、翻訳者にとって新たな可能性を切り開く、絶好のチャンスと言えるでしょう。みなさんも、2025年を飛躍の年にしましょう!」とありますが、どうすれば翻訳者が2025年を飛躍の年にできるか、このテーマに関する動画を是非よろしくお願いいたします。
ということで、今回から、しばらくこのテーマで進めてみようと思います。
翻訳ライター(Trans-writer)とは
バベルは2025年に創立51周年を迎えるにあたり、「翻訳ライター(Trans-writer)」という新たなキャリアパスを提案しています。これは、翻訳者が長年培ってきた知識やスキルを活かし、自らオリジナルなコンテンツを生み出していくというキャリアの新しい形です。
翻訳者としての枠を超え、表現者としての可能性を広げることで、2025年を飛躍の年にできるのではないでしょうか。
本連載では特にeトランステクノロジーの観点から、生成AIを効果的に活用し、翻訳ライターとしての新たなキャリアへ迅速に踏み出せる具体的な方法を探求していきます。
手始めに「翻訳ジャーナリスト」
翻訳を基盤にしたライティングを考えたとき、ニュース英語を日本語で伝えるという方法は、読者にとって新たな視点や深い理解を提供する絶好のチャンスとなります。単に言語を変換するだけではなく、背景にある文化や社会的文脈、さらには微妙なニュアンスまでをも伝えることで、ニュースが持つ本来の意味をより鮮明に届けることが可能になります。
特に、時事的なトピックを扱うニュース翻訳は、スピードと正確性、さらには読者に伝わりやすい表現力が求められます。翻訳ライターが生成AIを効果的に活用すれば、迅速な情報処理と同時に、人間らしい洞察力にあふれた表現を生み出すことが可能になります。
ちなみに、以下の文章は、ChatGPTを使って、ブログ用にニュース記事の評論を書いたものです。
評論:トランプ外交のリスクとウクライナ問題
今回の会談は、トランプ政権の外交方針が持つリスクを如実に示した。トランプ氏は「アメリカ第一」を掲げ、国際協調よりも米国の経済的利益を優先しようとしている。しかし、ウクライナの希少鉱物を確保することは、ロシアとの戦争終結とは異なる問題である。
特に問題なのは、トランプ氏がウクライナ問題を単なる「交渉カード」と見ている点だ。ゼレンスキー氏が「感謝が足りない」と非難されたが、ウクライナは戦争を続けながら米国の支援を受ける立場であり、単なる取引ではない。さらに、トランプ氏はロシアとの直接交渉を進めようとしており、欧州やウクライナを無視した形での和平を模索している。これが実現すれば、ウクライナの独立性が危ぶまれるだけでなく、NATOを含む西側同盟国との関係悪化も招きかねない。
また、今回の会談では「第三次世界大戦」という表現が使われた。これは単なる脅しではなく、ウクライナ問題が今後も世界情勢を大きく左右することを意味する。トランプ氏の姿勢によっては、米国の国際的信用が低下し、中国やロシアに有利な状況を作りかねない。
今後の焦点は、欧州がどこまで独自の外交力を発揮できるか、そして米国内でどのようなウクライナ支援政策が形成されるかにある。トランプ流の「ディール外交」が、単なる取引では解決できない国際問題にどこまで通用するのか、今後も注視する必要がある。
いかがでしょうか? 結構しっかり書かれています。もちろん、ファクトチェックは厳密に行う必要がありますが、十分に掲載できるレベルです。記事の長さも指定できます。
さて、このような評論を、ChatGPTを使って書く方法を検討してみましょう。
ニュース英語解説の作成
論評を書くには、まず対象となるニュース記事を十分に理解する必要があります。
以下に、具体的な手順をまとめました。
1.Webサイトから英語のニュース記事をコピーする。
2.以下の項目に沿って、その英文記事を日本語で解説する。
・記事の概要
・キーワードとその意味
・特徴的な英文の構造
・記事の重要なポイント
・記事の背景や関連情報
・まとめ
・日本語要約
3.最後に、その記事に対する論評を書く。
以上の手順に基づいてプロンプトを作成し、適切に出力されるかどうかを検証しましょう。
問題なく動作したら、マイGPTに登録します。
一例として、以下のようなプロンプトを作成してみました。
添付の英文記事について、次の、[項目]に従って日本語で解説してください。
[項目]
・概要
・キーワードとその意味
・特徴的な英文の構造
・重要なポイント
・記事の背景
・まとめ
・見出しも含めた日本語要約
最後に、この記事に対するブログ用の評論を書いてください。
これを以下のようにマイGPTに登録しました。(ChatGPT 4o 利用)
今回のニュースは、VOAからコピーしました。
Trump-Zelenskyy White House meeting on mineral deal devolves into heated exchange
https://www.voanews.com/a/trump-zelenskyy-set-to-meet-at-white-house/7991244.html
このニュース記事をWordにコピーして、英語ニュース解説のマイGPTに添付して送信しました。
以下が出力結果です。
記事解説:「トランプ・ゼレンスキー会談が鉱物取引を巡り激論に」
概要
2025年2月28日、ホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が会談を行った。主な議題は、ウクライナの希少鉱物の採掘権を米国に提供する取引だったが、会談は激しい口論に発展し、最終的に決裂。ゼレンスキー氏はロシアによる2014年のクリミア侵攻に言及し、これがトランプ氏の怒りを買った。トランプ氏はゼレンスキー氏に対し「取引をするか、それとも我々は撤退するかだ」と迫り、最終的に交渉は中断された。
キーワードとその意味
- Rare minerals(希少鉱物):ウクライナが保有する重要な天然資源で、半導体やバッテリー製造に不可欠。
- Propaganda tour(プロパガンダ巡業):ゼレンスキー氏の米国訪問が単なる宣伝活動だとする批判。
- World War III(第三次世界大戦):トランプ氏がゼレンスキー氏の対応を非難する際に使用した表現。
- Reconstruction fund(復興基金):戦後のウクライナ再建のために設立予定の基金。
- America First(アメリカ第一主義):トランプ氏の外交政策の基盤となるスローガン。
特徴的な英文の構造
- "You're either going to make a deal or we're out."
- シンプルな二者択一の命令文で、トランプ氏の強硬姿勢を示す。
- "You're gambling with the lives of millions of people."
- 「命を賭けの道具にしている」と強い比喩を使ってゼレンスキー氏を批判。
- "We are not looking to go into a 10-year war and play games."
- "We are not looking to"(〜するつもりはない)で、長期戦を避ける意向を表現。
重要なポイント
- トランプ政権のウクライナ政策
- トランプ氏はウクライナへの軍事支援に消極的で、直接ロシアと交渉しようとしている。
- ウクライナとの関係悪化が懸念される。
- 希少鉱物取引の頓挫
- 米国とウクライナが共同で管理する復興基金の設立も議題だったが、合意に至らず。
- トランプ氏は「ウクライナの資源を利用できる公平な取引だった」と主張。
- ゼレンスキー氏の対応
- 交渉決裂後も「アメリカに感謝する」と投稿し、関係修復の姿勢を示す。
- トランプ氏が「謝罪を求めるべきか?」という質問に対し、「我々は何も悪いことをしていない」と回答。
- 米国内外の反応
- 民主党のハキーム・ジェフリーズ議員はウクライナ支持を表明。
- 共和党のマイク・ジョンソン下院議長は「アメリカ第一」を称賛。
- 欧州の首脳らはウクライナ支持を強調し、「自由世界の新たなリーダーが必要」と発言。
記事の背景
- トランプ政権の対ロシア政策
- 以前からトランプ氏はロシアとの関係改善を模索。
- 2022年のロシア侵攻後も「ウクライナ戦争はウクライナが始めた」と主張。
- 希少鉱物の戦略的重要性
- ウクライナは豊富な希少鉱物資源を持ち、世界的に重要なサプライチェーンの一部。
- 米国は中国依存を減らすため、ウクライナの資源を確保したい意向。
- 2024年大統領選の影響
- トランプ氏の再選後、ウクライナへの支援方針が大きく変化。
- 「アメリカの利益」を強調し、国際支援を制限する姿勢。
まとめ
- 米ウクライナ関係に亀裂:希少鉱物取引を巡る会談が決裂し、ゼレンスキー氏はホワイトハウスを途中退出。
- 米国内の意見対立:共和党は「アメリカ第一」を支持、民主党はウクライナ支援を継続すべきと主張。
- 欧州の懸念:EUはウクライナ支持を強化し、「自由世界の新リーダー」を模索。
日本語要約(見出し含む)
「トランプ・ゼレンスキー会談、鉱物取引で決裂」
2025年2月28日、ホワイトハウスでトランプ大統領とゼレンスキー大統領がウクライナの希少鉱物取引について会談。しかし、ロシア侵攻に関する議論が激化し、トランプ氏がゼレンスキー氏に「取引をするか撤退するか」と迫った。会談は決裂し、ゼレンスキー氏はホワイトハウスを途中退席。米国内ではトランプ氏の姿勢を支持する声と批判が分かれ、欧州はウクライナへの支援継続を表明した。
評論は最初に挙げたものになります。
さて、この「ニュース英語解説」を活用すれば、記事内容を的確に理解し、スムーズに評論を仕上げることができます。迅速な記事作成が可能になるため、速報性の高い情報にも柔軟に対応できるでしょう。
実は、この連載記事の下書きの段階では、「米国とウクライナ、軍事支援の見返りに希少鉱物権益譲渡で合意間近」という記事を取り上げていましたが、突然の決裂騒ぎが報じられたので、急遽、記事を差し替えました。といっても、ニュース記事をコピーして、「ニュース英語解説」に添付しただけです。翻訳ジャーナリストはスピードが命です。この連載記事が公開される頃には、また状況が変わっていることでしょう。
ちなみに、今回の評論は、取り上げたVOA(Voice of America)の記事自体がトランプ大統領の行動に批判的な視点を持っており、それをベースにしたため、結果的に批判的なトーンが強まりました。
もちろん、プロンプト一つで論調を変えることができます。
例えば、「トランプ大統領の支持者の立場に立って、評論を書き直してください」とChatGPTに指示してみましょう。
以下が出力結果です。
評論:トランプ大統領の現実的外交とウクライナ問題
今回のトランプ・ゼレンスキー会談は、トランプ大統領の「アメリカ第一」の外交政策が明確に表れた場面だった。ウクライナとの希少鉱物取引をめぐる交渉は決裂したが、これは必ずしもトランプ氏の失策ではなく、むしろ彼の交渉戦略の一環と見るべきである。
まず、トランプ氏は「ウクライナ戦争を終わらせる」ことを公約に掲げており、ゼレンスキー氏にも和平への意思を求めた。しかし、ゼレンスキー氏はロシアの2014年のクリミア侵攻を持ち出し、戦争の長期化を正当化するような発言をした。これに対し、トランプ氏は「あなたは数百万人の命を危険にさらしている」と厳しく指摘し、戦争を無条件に続けることが正しいのか疑問を投げかけた。これは、戦争の泥沼化を避け、米国を不必要な紛争から遠ざけようとする合理的な判断である。
また、トランプ氏が希少鉱物取引の合意を急がなかったのも、彼の交渉術の一つだ。彼は「取引をするか、それとも我々は撤退するかだ」と発言し、ゼレンスキー氏に譲歩を迫った。これは、米国がウクライナを支援する代わりに、適切な見返りを求めるという現実的な交渉戦略であり、決して一方的にウクライナを見捨てる意図ではない。実際、トランプ氏は交渉が決裂した後も「彼(ゼレンスキー)が和平を望めば、再び話し合うことができる」と述べており、決して対話を拒否したわけではない。
さらに、欧州の反応を見ても、ウクライナ支援の負担を米国だけに押しつける姿勢が見え隠れする。EUの指導者たちは「自由世界の新リーダーが必要」と発言し、暗にトランプ氏の決断を批判している。しかし、米国がこれまでウクライナに提供してきた支援額は数千億ドルに上るとされ、トランプ氏が指摘するように「米国が一方的に負担する必要はない」というのも一理ある。むしろ、欧州がより積極的にウクライナを支援するべきだというトランプ氏の主張は、合理的なものと言える。
また、トランプ氏はロシアとの直接交渉を進めており、「プーチンは約束を守るだろう」と述べた。これを単なる親ロシア的な姿勢と見るのは早計だ。外交とは、敵対する国との対話を通じて最善の結果を引き出す手段であり、ロシアとの交渉を進めることで、戦争終結の可能性を模索するのは決して間違った戦略ではない。むしろ、これまでのバイデン政権のようにウクライナに無制限の支援を続ける方が、戦争を長引かせる結果になりかねない。
今回の会談は一見、失敗に見えるかもしれないが、長期的な視点で見れば、トランプ氏の戦略は「交渉を通じた現実的な平和構築」と言える。米国は世界の警察ではなく、自国の利益を最優先にしつつ、最善の外交を追求するべきだ。その意味で、トランプ氏のアプローチは、感情的な支援ではなく、冷静な判断に基づいたものだったと言えるだろう。
このように、視点を色々と変えて記事を書き直すのも簡単ですね。
【参考】マイGPT:英語ニュース解説
https://chatgpt.com/g/g-67c42137b1208191925d7d3de605a65a-ying-yu-niyusujie-shuo
eトランステクノロジー講座(AI翻訳活用編)
https://www.babel-edu.jp/ett-pr/#spb-bookmark-4
eトランステクノロジー研究室
https://www.youtube.com/channel/UCpwhJgDgTHkwia7EVUvorcg
シニアのためのニュース英語学習帳
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