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2024年6月7日 第341号 World News Insight             (Alumni編集室改め)                                    食料自給率3割というウソ、いざという時に日本人の3割も生き延びられない!?                                バベル翻訳専門職大学院 副学長 堀田都茂樹

今回は東京大学大学院の 鈴木宣弘教授に、日本の食料安全保障の危機的状況を聴いてみたいと思います。

曰く、日本の食料自給率はカロリーベースで約38%と公式の数字ではなっていて、すなわちいざというときでも国民の38%も生き延びられるというまやかし数値がまかり通っているというわけです。

例えば、品目別にみると、野菜の自給率というのは80%と言われていますけども、その種は海外の畑で9割、種取りしてもらって運んできているわけです。とすると自給率は実は80%でなくて、8%ということになります。種が止められても自分で種をとって植えればいいじゃないかと言う人がいますが、今のタネは一代限りのF1種となってしまっています。

食料は命の源ですが、種は更にその源であるということです。加えて、肥料の話ですが。種が止められたら自給率は野菜で8%と言いますが、肥料はどうかというと、化学肥料の原料をほぼ100%輸入に頼っています。

とすれば、もし肥料が止められたらどうなりますか。今の農業生産のやり方であれば、収量は半分になります。そうすると、種子止められただけで野菜の自給率は8%、さらに肥料も止まったら4%。こんな数字が計算されるということです。それから、卵の自給率は97%、頑張っているじゃないかって言いますけど、その餌はどこから来ているかと言うと。トウモロコシはほぼ100%輸入に頼っています。これが止まっただけで、自給率が実は97%じゃなくて、もう12%しか作れないということです。

こういうことについて、私たちはもうちょっときちんと考えなきゃいけないと。食料を生産するためのその生産要素をどれだけ確保できているかってことが重要なんですと。

おまけに、米や麦や大豆などの種も、自給率1割、海外に9割依存するという厳しい最悪の状況を考えると、食料自給率はなんと9.2%ですよ。いざという時にこれだけの人間しか生きられないっていうのが日本の現実です。

今、実際に種子の自給率が1割しかないのは野菜です。米、麦、大豆がほぼ今国内で種子作っているわけです。ところが、日本はこの大事な主要穀物の種子を全部グローバル種子農薬企業に渡していくような、法律の廃止や改定をしてしまったのです。

種子を制する者は世界を制すると言って、グローバル種子農薬企業が、世界中の種子を自分のものにして、それを買わないといけないようにしようとする制度改革を世界中で進めてきました。世界中の農家、市民が猛反発すると、かれらは、では日本で儲けようじゃないかということで、日本にたくさんの要求が来ました。

まず、公共の種子をやめてくれと。国がお金を出して、県の試験場で良い米、麦、大豆の種子を作って、それを農家さんに安く供給するのはやめろ。やめただけじゃダメで、種子は企業に渡せと。農業競争力強化支援法8条の4項ですね、そのように譲渡しなさいという法律まで作らされています。

そして今一番問題になっているのは中国の爆買い。中国の爆買いが今どれだけすごい状況になっているかというとですが、今や、小麦や大豆やトウモロコシや魚粉や肉や魚も、日本が買いに行っても残ってないのです。

中国が高い価格で大量に買い付けてしまうのです。日本の商社が買い付けに主導権を持っていた時代はもう終わったと言われています。

中国の爆買いがいかにすごいかと言うのを少しデータで見てみてみると、例えばトウモロコシが、2016年の数字と2023年の数字と比べると、ほぼ10倍に増えているんです。それから、大豆はもともと中国が大量に買っていますけども、今や年間1億トンレベル買っているんです。

これがいかに凄いかというとですね、日本は大豆の94%を輸入していますが、それでも日本の輸入量というのは300万トン。中国の端数にもならないんです。

おまけに、日本では、農業基本法は、一番大事な法律が、25年ぶりに改悪されることになりました。

世界的にも食料はいつでもお金を出せば安く買えるという時代が終わってきたと。一方、国内の農業はコスト高で皆苦しんで、それが価格転嫁できないということで、ばたばたと農家が潰れています。

そもそも日本の農業者の平均年齢は68.7歳。この衝撃的な数字は、あと5年、10年したら日本の農業がほとんど崩壊しかねないです。恐るべき数字です。そこに今もコスト高と価格転嫁ができないという状況での倒産を重ねて、もう崩壊のスピードは高まっています。

また、最近の農業基本法の改定原案を見てびっくりします。食料自給率とかその向上という言葉が一言も入ってないんです。さすがにこれは与党自民党との折衝で、一言入りました。しかしながら、結局なぜ食料自給率を向上する必要があるのかとか、そのために抜本的な政策やるのかというようなことについて一切触れられていないのです。

食料自給率という指標を大事にすること自体が国益を損ねるのではないかというような議論さえ行われて、食料自給率を非常に軽視する姿勢が見られます。

いざというときに国民の命を守るのが国防というならば、農業農村を守ることこそが一番の国防、安全保障の1丁目1番地です。こういうことをきちんと理解して、私たちは政策を立て直さなければ大変なことになります。そういう正念場に来ていることを、今回の基本法の改定が示しています。

こう結んだ、鈴木教授の危機感と使命感に頭が下がると同時に岸田政権の食料安全保障に対する無能さぶりにあきれるばかりです。

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