
世界の出版事情―各国のバベル出版リサーチャーより第74回
アメリカ書籍レポート - 2月
12月から1月にかけてのベストセラー
柴田きえ美(バベル翻訳専門職大学院生)
気がつけばもう2月。各小売店ではバレンタイン商戦が本格化し、街の雰囲気もどこか華やいできました。書店でも、本好きへの贈り物をテーマにした特設コーナーが設けられ、『ロミオとジュリエット』をモチーフにしたバッグやキャンドル、『若草物語』の文房具セット、シャーロック・ホームズの大人向けレゴなど、クラシック作品にちなんだ魅力的なグッズが並んでいます。
それではここから、12月から1月にかけてのベストセラーを見ていきましょう。今回は、いくつか新しいタイトルもランクインしていました。
The Rose Bargain (2025) 著者:サーシャ・ペイトン・スミス(Sasha Peyton Smith) 邦訳:なし 対象年齢:13~18歳
作品について:
発売直後から話題となり、瞬く間にNYタイムズ・ベストセラーとなった、YAロマンタジー。
1848年のロンドン。イングランドは400年にわたり、不死の妖精女王モリエンに支配されてきた。彼女は慈悲深い支配者を装い、国民一人ひとりに「人生で一度だけ、最大の願いと引き換えに取引をする機会」を与えている。
妖精の女王が支配する国では、少女たちは成人を迎えると必ず「取引」をしなければならない。願いは叶えられるが、必ず代償が伴う――。
没落した家柄、心を病んだ姉、結婚の望みもない人生に行き詰まったアイヴィ・ベントンは、女王が主催する王子ブラムとの結婚をかけた競争に参加することを決意する。王冠こそがすべてを変えると信じ、血の契約に名を連ねたのだ。
思いがけず有力候補となった彼女を支援するのは、王子の弟エメット。だがその助力にも代償があった。華やかな舞踏会の裏で、試練は次第に残酷さを増し、アイヴィは気づく。これは恋や結婚の物語ではなく、妖精との取引がもたらす“代価”を描く物語なのだと。
ヴィクトリア調の世界観の中で繰り広げられるロマンスと緊張感が融合した、ダークで魅惑的なファンタジー
著者:
サーシャ・ペイトン・スミスはYAファンタジーを得意とするNYタイムズ・ベストセラー作家。『The Witch Haven』(2021)は世界中で翻訳出版され注目を集めた。本書の続編『The Thorn Queen』は2026年4月発売予定。現在はユタ州在住。

Dear Debbie (2026) 著者:フリーダ・マクファデン(Freida McFadden) 邦訳:なし
作品について:
『ハウスメイド』(高橋知子 訳、2025年 早川書房、原題:The Housemaid, 2022)のシリーズの著者として知られるフリーダ・マクファデンによる新たなサイコスリラー。
デビー・マレンは長年、「ディア・デビー」という人生相談コラムで、夫に無視され、軽んじられ、ときには傷つけられる女性たちの声に寄り添ってきた。理性的で思いやりのある助言を与えるのが、彼女の役目だった。
しかし今、デビー自身の人生が崩れ始めている。仕事を失い、思春期の娘たちのようすがおかしいだけでなく、夫のスマホこっそり仕込んだ位置情報アプリから、なにやら“隠し事”の存在が見えてくる。
限界だった。もう我慢しない。これまで「大人の対応」をしてきた彼女は、ついに決意する。今こそ、自分自身に向けてアドバイスを実行するときだ、と。
これまで理不尽な扱いに耐えてきた女性が、自ら正義の鉄槌を下す側に回ったとき、読者は思わず「よくやった!」と叫びたくなる。
著者:
フリーダ・マクファデンは、ボストンに住む医者兼作家。ベストセラー作家としてNYタイムズ、サンデー・タイムズ、USA Today, Publishers Weeklyで取り上げられ、彼女の作品は40か国語以上で翻訳出版されている。国際スリラー作家賞およびGoodreadsチョイス賞を受賞している。

Dungeon Crawler Carl (2024) 著者:マット・ディニマン(Matt Dinniman) 邦訳:なし
作品について:
本作は元々著者が2020年から2024年にかけて自費出版していたシリーズの第一巻。2024年に Penguin Random Houseが書籍出版権を購入した一方、著者自身はAmazonでのKindle販売権を留保している。以降これまでにテレビ化やウェブコミック、グラフィックノベルへと展開されており、そして今年はボードゲームの販売が予定されている。
本作は、地球滅亡後の世界を舞台にした、ブラックユーモア満載のSFアドベンチャー。ある日突然、地球は異星人に侵略され、人類の生存者たちは“銀河規模で放映される残酷なリアリティ番組”への参加を強いられる。元沿岸警備隊員のカールは、破局した元恋人が飼っていたショーキャット、プリンセス・ドーナツとともに、まるでゲームのようなダンジョンを攻略しながら生き残りを目指すことになってしまう。
爆発するモンスター、危険な罠、奇妙なアイテムが待ち受けるこの世界では、生き延びること以上に「視聴者を楽しませること」が重要。過酷で理不尽、それでもどこか笑える、異色の終末SFシリーズ第1作。
著者:
マット・ディニマンは、アメリカ・ワシントン州ギグハーバー在住の作家・アーティスト。『Dungeon Crawler Carl』シリーズでニューヨーク・タイムズ・ベストセラー作家となり、終末世界を舞台にした作品を数多く手がけている。音楽活動も行っており、バンドでベースを担当している。
柴田きえ美 カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生として法律翻訳を学ぶ。これまでに日英・英日両方を含め7冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得。現在は、BTCで翻訳プロジェクトマネージャーとして翻訳に携わっている。
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