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WEB TPT  2025年9月8日 374号 巻頭言                                                                                                                                                      バベルグループは、まもなく創立52年を迎えます。                                                 バベル ・グループ代 表  湯浅 美代子

この半世紀の歩みの中で特筆すべきは、約30年にわたり日本・米国(英国)・中国で実施してきた「翻訳奨励賞」です。数千人規模の応募を集め続け、この賞は世界の翻訳志望者にとって確かな指標となってきました。

そして今、その半世紀に及ぶ実績を礎に、私たちは次の挑戦へと踏み出します。

それが「読ませる日本語奨励賞」(仮称)です。翻訳を通じて培った表現力を、今度は自らの声で作品(論説文、経験記、物語文、詩)として届ける。その一歩を後押しすることが、 次の時代の使命だと考えています。

30余年前、私が米国カリフォルニア州に赴任していた頃、強く印象に残ったのは「書き手を支える仕組み」の豊かさでした。『Writer’s Digest』や『The Writer』といった雑誌、ライターのための学校やイベント、そして文学エージェント。日本では見られないその文化に圧倒されると同時に、いつか日本にもこの熱気が広がることを願いました。

いま日本でも、Amazon KDPなどの普及を背景に「自ら書きたい」と願う人々は着実に増えています。しかし残念ながら、優れた翻訳者でさえ、自分の作品を世に出すことに踏み出せない傾向が見られます。翻訳の技術を持ちながら、自らの言葉で世界を描かないのは、あまりにも惜しいことではないでしょうか。

だからこそ、これからの半世紀、バベルは「翻訳者が自らの歌を唄う時代」を切り拓きます。翻訳で培った力を創作へと広げ、知を共有する新しい地平を共に拓いていきたいのです。

振り返れば、バベルの50余年は3つの時期に分けられます。

第1期は「翻訳文法」の開発と教育事業、そして米国での翻訳大学院創設。翻訳を「語の変換」として体系化した時代。

第2期は翻訳を「コミュニケーション」と捉え、日本のトップ企業への海外赴任前研修やリーガルコミュニケーション協会の設立を通じ、企業の国際対応を支援した時代。

第3期「知の共有」を理念に掲げ、未訳の名著を翻訳し日本に届ける「地求図書館」を事業化しました。そして、次には日本の作品を世界に届ける「Books & Rights Marketplace」 と続きます。

 「知の共有」は翻訳だけにとどまりません。自らの言葉で得た知見を書き、発信することによっても実現できます。これからの半世紀、バベルは翻訳と創作の両輪で、翻訳者が「書き手」としても活躍し、世界の知をさらに広げていく未来を切り拓いていきます。

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