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ブックコミュニティ第10回

中国と韓国の
ブックコミュニティ

これまでは北米のブックコミュニティを取り上げてきましたが、今回は視点をアジアに移し、中国と韓国のブックコミュニティについてご紹介します。

中国のブックコミュニティ

中国のブックコミュニティは、何千年にもわたる豊かな文学伝統に根ざしています。古代中国では、書籍は知識の蓄積と伝承の主な手段として重要視されてきました。孔子や老子などの偉大な哲学者たちが書き残した古典文学は、今日でも中国の文化と教育において重要な役割を果たしています。

現代の中国で、ブックコミュニティはオンラインとオフラインの両方で活発に活動しています。北京、上海、成都などの大都市では、独立系書店がブックコミュニティの拠点として機能しています。イベントやトークショーが定期的に開催され、文化交流の場としても重要な役割を果たしています。興味深いのは、上海では現代文学、広州ではビジネス書、成都では詩や哲学など、地域ごとに人気のジャンルが異なることです。

中国のブックコミュニティも北米と同様に、SNSやオンラインフォーラムを通じて読者同士が交流できる場を提供しています。中国で最も有名なレビューサイトである「豆瓣读书」(https://m.douban.com/book/)やウェブ小説のプラットフォームとして人気の高い「起点中文网」(https://www.qidian.com/)や「晋江文学城」(https://www.jjwxc.net/)は多くの読者が利用しています。また、SNS機能で読書記録を共有できるアプリ「微信读书(WeChat Reading)」や、そのグループ機能を活用した読書会、作家を招いたオンラインイベントも人気です。

中国のブックコミュニティは、国内外の文学作品に対する影響力が大きく、特に若い世代の間で人気のあるジャンルやトレンドを創出しています。近年の人気ジャンルとしては、「自己啓発書」「歴史小説」「SF」が挙げられ、特に、共感しやすい短い詩やエッセイが若者の間で流行しています。

韓国のブックコミュニティ

韓国のブックコミュニティもまた、長い歴史と豊かな文化的背景に根ざしています。伝統的な韓国文学は、詩や散文、古典文学など、多岐にわたるジャンルで発展してきました。特に、朝鮮王朝時代に編纂された『朝鮮王朝実録』や『訓民正音』などの文書は、韓国の歴史と文化において重要な役割を果たしています。

現代の韓国でも、ブックコミュニティは多様な形で存在しています。韓国の若者は読書をライフスタイルの一部として取り入れる傾向があり、おしゃれな写真や短い詩、エッセイをシェアすることが人気です。また、最近はウェブ小説やウェブ漫画の読書コミュニティも急成長しています。

 RIDI Books(https://ridibooks.com/webtoon/recommendation)やYES24(https://www.yes24.com/Main/default.aspx)は韓国の大手電子書籍プラットフォームで、ユーザーは購入した本のレビューを書いたり、他の読者とコメントを交わしたりすることができます。さらにSNSやブログを通じて、本に関する情報交換やレビューの共有も盛んです。Instagram上では「#북스타그램(#Bookstagram)」のハッシュタグが非常に人気で、本の感想やおすすめをシェアする文化が浸透しています。また韓国版の「Meetup」や「KakaoTalk」のグループ機能を使った読書会が盛んで、SF、詩、哲学など特定のジャンルに特化したクラブが多いのも特徴です。

 また、ソウルには、観光地としても人気のStarfield Library(ピョルマダン図書館)やSeoul Chaekbogo(本宝庫)といった大型施設や, Book Park Loungeなどのブックカフェが立ち並び、多くの人が訪れています。また、公立図書館や学校図書館も広く利用されており、読書文化の発展に寄与しています。

韓国文学は近年、国際的な注目を集めており、多くの作品が翻訳され、海外の読者にも愛されています。また、ウェブ小説やウェブ漫画も新しい読書スタイルとして定着しており、紙の本だけでなく、スマホで楽しめる作品も多くの人に支持されています。

中国と韓国のブックコミュニティは、それぞれ独自の歴史と文化的背景を持ちながら、現代では多様な形で発展しています。両国の読者は、伝統的な文学作品から現代のトレンド作品まで、幅広いジャンルに興味を持ち、積極的に読書を楽しんでいます。これからも、中国と韓国のブックコミュニティは、文化と知識の共有を通じて、さらなる成長を続けると思われます。

<ライタープロフィール>

今田陽子(いまた・ようこ)
BABEL PRESSプロジェクトマネージャー。カナダBC州在住。シャワー中もシャンプーボトルのラベルから目が離せない活字中毒者。

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