新着情報

第9回 海外の出版業界情報(2025年1月)

韓国の書籍プラットフォーム「MatchWhale」

 

Publishing Perspectivesの記事によると、韓国の書籍プラットフォーム「MatchWhale」が2024年12月に初のニュースレターを発行しました。2024年は韓国文学初のノーベル賞受賞者としてハン・ガン氏が注目を浴び、韓国文学への関心が一層高まる中でのニュースレター開始となりました。ニュースレターは隔週で発行され、韓国の書籍市場に関する最新情報が発信される予定で、ウェブサイトでも確認できます。

MatchWhaleは、韓国の文学作品の権利取引を促進する目的で設立されたプラットフォームです。クジラ(whale)のように膨大な韓国書籍データベースを基盤とし、韓国の優れた作品を世界に広めるため、流通サービスと「権利のマッチング・管理」機能を備えた新しいプラットフォームとして立ち上げられました。

ノルウェー、フィンランド、イタリア、ブラジルなどの多くの市場が学んできたように、翻訳権や出版権を求める世界の出版関係者にとって、権利取得可能なタイトルをまとめて提示するサービスは、強力なハブとなり得ます。「第7回 海外の出版業界情報(2024年11月)」でも紹介したイタリアのプラットフォームは政府支援型のものでしたが、Publishing Perspectivesの記事では、MatchWhaleが民間運営である点を特徴的だと述べています。

このプラットフォームは単なるカタログ以上の役割を果たすことを目指しており、「韓国の出版トレンド、厳選されたテーマ、著者紹介、韓国文学に関する幅広い洞察」を特集する予定であると、創設者であるベアトリス・リン氏は述べています。

Publishers Weeklyでも2024年にMatchWhaleを取り上げています。
「MatchWhaleでは、韓国の出版市場ではまだ広く採用されていないものの、ほぼグローバルスタンダードとなっているONIX規格*をサポートしています。また、ThemaやBISACといった国際的な主題分類コードを採用し、韓国の書籍を一括して海外の書店やデジタル図書館に流通させています」とリン氏は述べています。また、リン氏によると、2017年から2021年の間に海外で出版された韓国文学の権利販売は、年平均10%の増加を記録しました。海外で翻訳・出版される韓国作品の年間タイトル数は、現在の200から300以上に増加すると予測されています。

MatchWhaleの開発には1年以上を費やし、「本のDNA」とも呼ばれるメタデータを活用したとのこと。膨大なデータを駆使するために、データ・サイエンティスト、エンジニア、出版業界の専門家など、多様なバックグラウンドを持つ人材が参加しているのではと推察されます。電子書籍化が進む中、書籍の内容だけでなく、書籍情報のデジタル化とグローバル化も今後さらに求められるでしょう。

*ONIX規格:本の著者、出版社、価格、刊行日、内容など、本に関するメタデータを取引相手に提供するための標準規格。

 

<ライタープロフィール>

村山有紀(むらやま・ゆき)
IT・ビジネス翻訳歴10年以上。国内外の様々な場所での生活と子育ての
経験をふまえ、自分らしい発信のスタイルを模索中。

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