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2025年1月7日 第355号 World News Insight (Alumni編集室改め)                                                    60歳以上を対象にビジネスをする場合は、年齢で一括りにするのではなく、                       人生の「ステージ」に応じて考えよう。                                 バベル翻訳専門職大学院 副学長 堀田都茂樹

 天才マーケターと言われる神田昌典氏が、最近の注目すべき本として、Susan Wilner Golden氏の著書『STAGE(NOT AGE)』をとり上げています。今回は、年明け、マーケティングのスタートにあたりこの本の骨子を取り上げてみたいと思います。

著者は60歳以上の人々を年齢で一括りにするのではなく、人生の「ステージ」に基づいて理解し、彼らの多様なニーズに応える重要性を説いています。この層は世界で最も急成長しているダイナミックな市場であり、社会や経済に大きな影響を与える潜在力を持っています。本書では、年齢に基づく固定観念を打破し、ステージごとの特性に基づいたアプローチを提案しています。

1. 年齢ではなくステージで考える
60歳以上の人々を年齢ではなく、「キャリア継続型」「自己成長型」「家族優先型」など、ライフステージに基づいて分析することが重要です。

キャリア継続型シニア:
65歳を過ぎても企業の顧問や起業家として活躍する人々。地域産業の復活や新規事業の立ち上げに取り組む例が増えています。

自己成長型シニア:
70歳で大学に再入学する、オンライン講座で新しいスキルを学ぶなど、学びや趣味を通じて成長を続ける人々。

家族優先型シニア:
孫育てや家族旅行に力を注ぐ人々。例えば、孫と一緒に行ける観光地やアクティビティの需要が増加しています。

2. 60歳以上の人口動態の急増
世界中で60歳以上の人口が急増しており、これが次世代市場の成長を牽引しています。健康でアクティブなシニア層が新たな社会的・経済的な力となっています。

アクティブ旅行者:
リタイア後に世界一周旅行を楽しむ、または健康志向の温泉療養やヨガリトリートに参加するなど、観光業界の重要な顧客層。

都市生活型シニア:
美術館巡りやコンサート通いなど、都市の文化資源を積極的に活用するライフスタイルを持つ人々が増えています。

3. ビジネスの新たなチャンス
シニア層向け製品やサービスの需要が多岐にわたる中、以下のような市場が注目されています。

健康管理市場:
ウェアラブルデバイスで健康を管理するシニア層が増加。健康促進アプリや健康食品の需要が拡大しています。

趣味活動支援:
写真撮影や料理を始めるシニア向けに、初心者用のオンライン講座やサポートキットが人気を集めています。

テクノロジー市場:
簡単操作のスマートフォンや音声アシスタントデバイスが、テクノロジー初心者のシニア層に受け入れられています。

4. シニアのニーズに応えるためのアプローチ
シニア層が抱える課題を解決するためにデザイン思考を活用し、彼らの視点で問題を捉えるアプローチが求められます。

交通支援サービス:
運転免許を返納したシニア向けに、低コストのタクシーや地域コミュニティ運営の乗り合いバスが導入されています。

住環境の改善:
バリアフリー住宅や転倒防止設計の照明システムなど、シニアの安全性を考慮した住宅改修サービスが普及しています。

社会参加の促進:
地元の農園で野菜作りを楽しむための農業プログラムなどが、シニアの社会的孤立を防ぐ一助となっています。

5. 成功事例の紹介
シニア市場で成功を収めた企業やサービスの具体例も本書で取り上げられています。

旅行業界:
「50歳以上限定クルーズツアー」では、ヘルシー志向の食事やシニア向けアクティビティが高い評価を得ています。

教育サービス:
初心者向けプログラミング講座が、リタイア後にアプリ開発を始めるシニア層を生み出しました。

健康食品業界:
柔らかい食材を使った栄養補助食品が、特に噛む力が弱くなったシニアに支持されています。

6. 社会的影響とポジティブな視点
シニア層の活動は若い世代や社会全体にも良い影響を与えます。

世代間交流型プロジェクト:
手工芸や伝統文化を若い世代に教える活動が、シニアの生きがいと若者の学びの場を同時に提供しています。

地域コミュニティ活動:
環境保全や清掃活動をリードする「エコリーダー」が、地域の活性化に寄与しています。

教育支援:
元教師や教授が無料で学習支援を行い、地域教育に貢献しています。

まとめ
『STAGE(NOT AGE)』は、60歳以上の人々をステレオタイプで捉えるのではなく、個々の「ステージ」に基づいて対応することの重要性を強調しています。このアプローチにより、企業や社会が高齢化社会に適応し、多様で豊かな未来を築くことが可能です。ステージごとの視点は、新たな市場創出や社会全体の活性化にもつながるでしょう、と。

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