東アジア・ニュースレター
海外メディアからみた東アジアと日本
第164 回
中国指導部は先月の3中全会直後に会社法の抜本的改正に動いた。動機についてメディアは、ビジネスを安定させコントロールしやすくするためと述べ、改正点には先進国基準に近づけるものがあると指摘するが、外国企業の中国子会社も新規則の対象とし、取締役会への労働者代表の参加と重大な経営上の決定前に労働者との協議を義務づけた。
台湾問題が米大統領選の焦点の一つとなっているなか、メディアはトランプ氏が(台湾は)半導体ビジネスを奪ったと述べ、台湾は守ってもらう代償を払うべきだと主張しているのは、対中抑止力を高めるものではないと批判。台湾が中国に屈すれば平和を生み出してきた米国の太平洋同盟体制が終わると警告する。
韓国でコリア・ディスカウントと呼ばれる株価の慢性的な過小評価が政治課題のトップに押し上げられている。過小評価は、弱いコーポレート・ガバナンス、少数株主への対応の悪さが主因とされ、概ね財閥系大企業の支配の結果だとされる。尹大統領も自らこの問題に関心を示し、現在当局も資本市場改革案を推進している。
北朝鮮からの脱北者が急減している。理由は、国境地帯における中国当局の取り締まり強化、コロナ禍による北朝鮮の国境閉鎖、フェンス建設、国内統制の強化などが挙げられているが最大の要因は集団懲罰への恐怖心と推測されている。脱北者減は北朝鮮についてのインサイダー情報の減少を意味している。
東南アジア関係では、米政府がフィリピンに対し5億ドルの軍事援助を決定した。南シナ海で中国が影響力を増すなか、フィリピン軍隊を近代化し、対外防衛に集中できるようにするためとされる。この機会に米国の国務、国防両長官が訪比し、米比国務、国防長官の2プラス2会談を初めて開催した。
インドの総選挙で勢いを失ったモディ首相が政策面で軌道修正に迫られている。雇用問題が修正の焦点となっているが、これは自身の政策の中核を放棄しないためとメディアは指摘する。具体的には製造業と労働人口の大半を雇用する農業に予算を重点配分し、BJPの主な連立パートナーが最大の利益を得ている。
主要紙社説・論説欄では、シリーズ「世界の中の日本3」として、7月に日本で起きた動きとして海外メディアが注目した都知事選と円安から円高へと急変した円相場に関する論調を取り上げた。
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北東アジア
中 国
☆ 会社法を抜本的に改正
7月18日、中国共産党の重要会議である第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が閉幕した。同日付ロイター通信は、国内産業を現代化し、内需拡大や債務・不動産リスクの抑制を図るほか、金融・財政改革も推進する方針を表明したと次のように伝える。新華社が伝えた声明では、社会保障、医療、所得分配制度を改善し、土地制度の改革導入も明らかにした。具体的にどう変更するかは明言していないが、「課題」は2029年までに完了するとしている。アナリストによると、今回の結果は、政策決定や中国が追求する経済成長モデルの転換ではなく、継続性を示していると指摘。ピンポイント・アセット・マネジメントのチーフエコノミストは「マクロ政策に明確な変化のシグナルはない」と述べた。メルカトル中国研究所のチーフエコノミストは、きょうの声明では「楽観的な解釈の余地はほとんどない。外資系企業や中産階級の懸念を和らげるような点は、明らかにリストの上位にはなく、やや意外だ」と述べた。
上述のように、声明には外資系企業や中産階級の懸念を和らげるような点がないと指摘されているが、早速、中国政府はむしろ懸念を煽るような動きを見せた。3中全会直後に会社法について2001年の世界貿易機関(WTO)加盟に伴う改正以来の抜本的な改革を実施したのである。8月8日付エコノミスト誌は、改正について指導部はビジネスを安定させ、コントロールしやすくしたいと考えているが、過剰生産力と経済減速に悩む中国企業にとって新たな頭痛の種となっていると述べ、以下のように報じる。
新法は3つの重要な変更を加える。第1に「登録資本金」という珍しい制度改革である。この制度は、創業株主が一定額の資金を会社に提供することを表し、概ね債権者が融資を行う際の根拠となる。以前の規則では、創業者はすぐに資金を渡す必要はなかった。そのため、多くの創業者は例えば50年以上の期間をかけて譲渡することを約束する、あり得ないほど高額な登録資本金を示していた。今回の改正により設立者は登録から5年以内に約束した資本金を払い込む必要があり、故意によってその金額を支払えない者は、個人的な負債を負うか、事業への持分を手放すことを余儀なくされる可能性が出てきた。
第2の変更は、会社トップが大きな法的リスクに直面することである。新法は、債権者や消費者などの第三者が企業の役員に賠償を求める道を開く。株主も、定義が不明確な「濫用」の場合には責任を負う可能性がある。ダラム大学のレイ・チェン教授は、これらの改正はいずれも中国の会社法を先進国基準に近づけるものだと指摘する。しかし、新規則への対応に躍起になっている中国企業にとっては、あまり慰めにはならない。中国のほぼすべての企業は定款を修正しなければならず、役員保険に加入するようアドバイスされている。創業希望者は融資を受けるのが難しくなるだろう。すでにパートナーシップのような会社形態を選択した人もいる。規制はより緩やかとなるが、適切な対応であるかどうかは疑問である。
この法律によって導入される3つ目の大きな変化は、国内で事業を展開する多国籍企業にとって最も懸念すべきものとなろう。中国子会社も新規則の対象となるとされたからである。加えて、従業員300人以上の企業の取締役会には労働者代表を加える必要が起き、経営陣は重大な経営上の決定を下す前に労働者と協議することが義務づけられた。グローバルな法律事務所であるテイラー・ウェッシングのカイ・キムは、問題はこれらの労働者代表が実際にどのように選ばれるかということだと指摘する。ドイツのような同様の規定がある国とは異なり、中国では、企業に組み込まれた160万人の共産党細胞が労働者代表の指名において重要な役割を果たすと思われる。そのため、選出される労働者は中国政府の意向に沿った見解を持つ可能性が高い。オックスフォード大学のナタリー・ムロコヴァは、多国籍企業の中国事業における党細胞は、遠く離れた本社にいる多くの経営者が認識しているよりもすでにはるかに活発に活動していると指摘する。
新会社法には、「社会的・経済的秩序」を守るための政府の権利に関する、いかようにも解釈できる文言が含まれており、適切と思われる企業の運営に干渉する自由が十分に与えられている。先月の3中全会後に発表されたコミュニケでは、経済を「よりダイナミック」にすることの重要性と「市場秩序維持を改善する」必要性の両方が言及された。中国の新会社法は、国の指導者にとって最も重要なのは管理監督であることを示唆している。
以上のように、指導部は先月の3中全会直後に会社法の抜本的改正に動いた。その動機について記事は、指導部はビジネスを安定させ、コントロールしやすくしたいと考えていると述べ、主な改正点として3つ挙げる。その中には中国の会社法を先進国の基準に近づけるものがあると指摘するが、最も注目されるのは第3の改正点であろう。外国企業の中国子会社も新規則の対象となり、会社の取締役会に労働者代表を加え、重大な経営上の決定前に労働者との事前協議が義務づけられたのである。まさに先の3中全会の決議どおり、党と政府による企業経営に対する監視が強化されたのである。
台 湾
☆ 米大統領選の混乱をさせかねない台湾問題
7月18日付ウォ-ル・ストリート・ジャーナルは、「Trump’s Biggest Volatility Risk? Taiwan (日本版記事:【社説】トランプ氏最大の混乱リスクは台湾か)」と題する社説で、米国のトランプ次期大統領候補が一般の注意を喚起するかのように、中国が台湾を攻撃しても台湾の防衛に関与しない可能性についてほのめかしていると述べ、トランプ氏最大の混乱リスクは台湾かもしれないと以下のように論じる。
「台湾は守ってもらう代償を払うべきだ。知ってのとおり、我々の立場は保険会社と変わらない。台湾はわれわれに何の対価も支払っていない」。トランプ氏は、米経済誌「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」にこう語った。「(台湾は)半導体ビジネスを奪った」と主張し、なぜ「それ(台湾の防衛)をしなければならないのか」と続けた。同氏はまた、地理の授業をするかのように「台湾は(米国からは)9,500マイル(約1万5,300キロ)のかなたにある」が、「中国からの距離は68マイル(約109キロ)だ」と述べた。
トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたジョン・ボルトン氏は、これと同様のトランプ氏の発言について回顧録に記している。中国政府もボルトン氏の著書に目を通しているのは間違いない。トランプ氏の言葉は米国の(中国に対する)抑止力を高めるものではない。台湾は防衛費を増強し、わずかながら徴兵制も拡大している。一方で、中国は第2次世界大戦後で最大の軍備増強を行っている。米国はそれに対抗する再軍備を進めていない。台湾単独では、いかに勇敢な軍事的努力を行っても上陸作戦や封鎖に対する防衛に苦労するだろう。
上記のように論じた社説は、米国の台湾関与の必要性について次のように指摘する。答えは半導体だけではない。台湾が中国共産党に屈すれば、この80年間ほぼ平和な状態を生み出してきた米国の太平洋における同盟体制は終わることになる。また、中国は南シナ海でフィリピンと争いを起こしており、米国は条約によりフィリピンを防衛する義務がある。トランプ氏は自分こそが戦争を防ぐ大統領との主張を売りにしているが、同氏の虚勢が何千人もの米国民の命を犠牲にしかねない争いを招いている。台湾問題で重要なのは終わりのない戦争を繰り広げることではなく、破滅的な戦争を防ぐことだ。
バイデン大統領は、米国が台湾を守ると失言し後になって撤回した。しかし、軍事力の拡大によって発言内容を裏付けるようなことはしていない。敗北の可能性とか先制降伏(攻撃される前から白旗を掲げるに等しい行為)などよりも好ましい選択肢が米国民には示されるべきだ。対中タカ派とされているトランプ氏は、台湾海峡での危機をどう回避する計画なのかを語った方がいいだろう。
以上のとおり、台湾問題が米大統領選の焦点の一つとなっているがバイデン陣営もトランプ陣営も社説が主張するように明確な戦略を示していない。特にトランプ氏は、(台湾は)半導体ビジネスを奪った」と述べ、台湾は守ってもらう代償を払うべきだと主張している。社説は、こうしたトランプ氏の言葉は米国の(中国に対する)抑止力を高めるものではないと批判し、台湾が中国共産党に屈すれば、問題は半導体だけでなく過去80年間ほぼ平和な状態を生み出してきた米国の太平洋における同盟体制が終わると警告している。確かにトランプ氏は持論の防衛費負担問題をちらつかせて米有権者の票を集めようとしているが、こうした動きは中国にあやまったシグナルを発信すること以外の何物でもない。なお社説が言及した南シナ海における米比両政府間の動きについては別途、フィリピンの問題として取り上げたので参照願いたい。
韓 国
☆ 資本市場改革に動く当局
長年、韓国証券市場はコリア・ディスカウントと呼ばれる韓国株の慢性的な低評価に悩まされてきた。現在、監督当局の韓国金融委員会(FSC)は、株主還元拡大とガバナンス改善に向けた企業の自主的な取り組みを奨励・支援する「企業価値向上プログラム」と呼ばれる改革案を推進している。これに関連して7月24日付フィナンシャル・タイムズは、金融規制当局は今年の大半をロンドンからニューヨーク、シンガポールまで世界を駆けまわり、海外投資家に対して韓国の最新の資本市場改革への熱意を鼓舞してきたと伝え、さらに最近の動きについて以下のように報じる。
この改革は、上場企業の株価の慢性的な過小評価に対処するための韓国政府の最新の試みである。株価の慢性的な過小評価は長い間、コーポレート・ガバナンスの弱点や少数株主への対応の悪さが原因とされてきたが、それは多く財閥として知られる大企業の支配の結果とされてきた。企業価値向上プログラムには、資本効率を向上させた企業に焦点を当てる新しい指標や株主還元を優先する企業に対する税制優遇措置が含まれる。この最新の試みには新たな政治的追い風が吹いているようだ。国内の個人投資家の急増、韓国の人口危機、将来の成長鈍化に対する不安はすべて資本市場改革を韓国の政治課題のトップに押し上げる方向に働いている。日本政府が最近、株主価値の向上に成功したことは韓国当局に見習うべきモデルを与えた。
しかし、これまでのところ「バリューアップ」キャンペーンは、地元の改革支持者を失望させている。彼らは、このキャンペーンはコリア・ディスカウントの根本原因に対処できていないと主張している。ソウルを拠点とするハヌリ法律事務所と韓国コーポレート・ガバナンス・フォーラムのマネージング・パートナーを務めるキム・ジュヨン氏は、「韓国の上場企業の多くは、少数株主を犠牲にして自らの権力と利益を優先する支配株主を抱えている」と語る。「これは合併、独占的スワップ、上場廃止、会社分割などを通じてしばしば起こるが、当局は経済界からの強い反発のためこうした活動を規制することに躊躇している」。
現在、改革賛成論者は課題の大きさを説明するためにテストケースとなっている再編案を挙げる。これは斗山財閥グループが提案した物議を醸すリストラ案で少数株主の強い反対を招いている。同案によると、米国で収益の大半を上げる産業機器メーカーの斗山ボブキャットがグループ傘下の斗山ロボティクスと合併されることになる。
韓国の法律では、2つの上場企業が合併する場合、合併条件に使用される企業の企業価値(自己資本価値に純負債を加味したもの)は、前月の平均株価を使用して計算されることになっている。これは、株価がどちらかの企業の内在価値を反映しているかどうかに関係ないとされる。
しかし、本件では昨年10億ドル以上の営業利益を上げた斗山ボブキャットが市場から著しく過小評価され、損失を出している斗山ロボティクスが著しく過大評価されているなかで合併が押し進められていと批判されている。「同業他社の評価とM&Aの前例に基づき、我々は斗山ボブキャットの内在価値(イントリンシックバリュー)を約100~140億ドルと推定しているが、ボブキャットの取締役会は合併に合意したばかりで、その株式価値は37億ドルだ」と、ソウルを拠点とするアクティビスト・ファンド、アライン・パートナーズのチーフ・エグゼクティブ、チャンファン・リー氏は言う。
斗山ボブキャットの株式を保有するテキサス州のテトン・キャピタルのショーン・ブラウン氏は、この買収はロボティクスが直近12ヶ月の売上高の86倍の評価である一方、ボブキャットの評価額は同じベースで売上高の0.4倍であると指摘する。「その結果、ボブキャットの株主の持分は半分以上減少するが、同族株主が支配する斗山の持ち株会社のボブキャットの持分は14%から42%へと3倍になる」とブラウンは主張する。これに対し、斗山ボブキャットのダックジェ・チョー最高財務責任者(CFO)はフィナンシャル・タイムズ紙への声明文で、批判を「見当違いで、場合によっては根拠のない主張に基づいている」と否定し、「それぞれの価格は根拠法規(金融投資サービスおよび資本市場法)に従って決定された」と反論する。「提案された取引は、政府の企業価値向上プログラムと矛盾するものではなく、適用される法令に定められた方法で算出された比率は、会社の株主にとって不利なものではないと考える」。しかし、APGアセット・マネジメントの新興市場株式部門責任者であるパク・ユギョン氏は、今回のリストラ案は、規制当局と有権者により良い株主還元を約束した同国の保守的な大統領である尹錫悦氏に対する「平手打ち」だと評する。
しかし、一部の改革派はこの出来事から楽観的な見方を示し、株主に対するフィデューシャリー・デューティ(受託者責任)を初めて盛り込んだ商法改正を求める声を後押しするだろうと指摘する。23日、国会議員は改革派の学者、投資家、弁護士らと国会でセミナーを開き、改革について議論した。「株主に対する受託者責任は、韓国市場のすべての問題を解決するものではないが、上場企業の取締役が支配株主から他の株主の利益を損なう行為をするよう圧力を受けた場合に抵抗する助けになろう」とアライン・パートナーズのリー氏は言う。
以上のように、コリア・ディスカウントと呼ばれる株価の慢性的な過小評価は弱いコーポレート・ガバナンスや少数株主への対応の悪さが原因とされ、それは概ね財閥系大企業の支配の結果だとされる。ここでも、財閥主体の韓国経済の弱点が顕現していると言えよう。しかし、個人投資家の急増、人口危機、成長鈍化不安などが資本市場改革を韓国の政治課題のトップに押し上げており、尹大統領も自らこの問題に関心を示していると報じられている。当局が目下推進している資本市場改革案の成果に期待したい。
北 朝 鮮
☆ 困難さを増す脱北
脱北、すなわち北朝鮮からの脱出がかつてないほど難しくなっていると7月21日付英ガーディアンが社説「The Guardian view on defecting from North Korea: escape is harder than ever (北朝鮮からの脱出に関する見解:困難さを増す脱北)」で伝える。社説は、高官の北朝鮮外交官が現在、韓国にいるが、一般の人々が脱北するのははるかに難しくなっていると以下のように論じる。
7月14日、韓国は3万4,000人の北朝鮮からの脱北者を記念して「脱北者の日」を祝った。数時間のうちに北朝鮮の上級外交官が彼らの仲間入りをしたというニュースが流れた。キューバ大使館参事官で政治顧問を務めていたリ・イルギュ氏は、北朝鮮の駐英公使がロンドンから姿を消し、ソウルに姿を現した2016年以来、最高レベルの脱北者となった。リ氏は、政権への幻滅が動機だと語ったが、挫折した野心も一因のようだ。
このようなインサイダーは、北朝鮮の政情や生活、出来事について貴重な洞察をもたらしてくれる。北が意図的に孤立と不透明性を強めており、ロシアとの関係が芽吹いている石油をめぐる武器供与や兵器開発計画の進展に対する懸念が高まっている今、そのような情報は特に歓迎される。先週火曜日、英労働党新政権の国防責任者であるジョージ・ロバートソンは中国、ロシア、イラン、北朝鮮という"死の四重奏"が西側諸国に対抗して行動を共にしていると警告した。
ジョージ・W・ブッシュの"悪の枢軸"にイランやイラクと並んで名を連ねていた北朝鮮は、これをある種の昇進と見るかもしれない。核による恐喝を外交手段として利用するエキスパートであった北朝鮮は、今やロシアのウクライナ侵攻によってもたらされた好機に乗じている。ロシアは国連安全保障理事会の拒否権を行使し、北朝鮮の制裁違反を監視する専門家パネルの活動を妨害している。
体制への信頼はとっくの昔に崩壊し、人道的危機が深まっている。しかし、エリート層以外で逃亡する機会を持つ者はほとんどいない。国境地帯における中国当局の取り締まり強化、コロナ禍に起因する北朝鮮政権による国境閉鎖、フェンス建設、国内統制の強化のおかげで、脱北者の数は10年前の2,700人から昨年はわずか196人へと激減した。このため、国内で何が起きているのかについての知識も激減している。
リ氏は韓国の新聞に、2年前に表舞台から姿を消したリ・ヨンホ外相は収容所に送られ、米国と取引していたもう一人の上級外交官ハン・ソンリョルはスパイ容疑で処刑されたと語った。エリートでの生活は安全を保証するものではなく、エリートから離れることはさらに危険である。金正恩の実弟は、北のエージェントが仕組んだ陰謀により、クアラルンプールの空港で公衆の面前で殺された(北朝鮮は責任を否定しているが)。集団的懲罰によって、家族に何が起こるかわからないという恐怖のために多くの人が現状に耐えている。「北朝鮮国民は誰でも一度は韓国での生活を考える」とリ氏は言う。
今春、ヒューマン・ライツ・ウォッチが発表した力強い報告書の中である脱北者は、「銃弾や金網よりもはるかに強い一般的な恐怖感」のために、私の親戚は怖くて出国できなかったと説明している。捕まった者は、殴打、性的暴力、拷問が蔓延していると言われる収容所に送り込まれる。国連人権機関の新しい報告書に詳述されている強制労働の広範なシステムの一部である。身分が高くても低くても、北朝鮮の人々は抑圧と残忍さに直面している。しかし、多くの人々が生き残るのに苦労している一方で、トップに立つ人々は物質的な快適さを享受している。
以上のように、北朝鮮は今や中国、ロシア、イランと並ぶ"死の四重奏"の一部となった。トップに立つ人々は物質的な快適さを享受しているが、一般国民は誰でも一度は韓国での生活を考えると言われ程追い詰められている。だが、脱北者の数は10年前の2,700人から昨年はわずか196人へと激減した。減少の理由は、国境地帯での中国当局の取り締まり強化、コロナ禍による北朝鮮政権の国境閉鎖、フェンス建設、国内統制の強化などが挙げられているが、最大の要因は集団懲罰への恐怖心と推測される。脱北者減は、北朝鮮の政情や生活、出来事についてのインサイダーによる貴重な情報の減少を意味しており、西側諸国としても問題である。
東南アジアほか
フィリピン
☆ 軍事支援を明確にする米政府
7月30日付ワシントン・ポストは、米国の国務、国防両長官がフィリピンに対する米国の新たな安全保障コミットメントの詳細を明らかにしたと次のように報じる。今回の防衛計画は、フィリピン政府が南シナ海で自己主張を強める中国軍からの圧力に対抗する能力を強化しようとしているなかで公表された。米国は、フィリピン軍の近代化を支援するために5億ドルの防衛援助を提供することに合意した。
フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は2022年の就任以来、フィリピンを米国側に急接近する方向に舵を切り、直近では4月に4回訪米した。前任者であるロドリゴ・ドゥテルテは中国にはるかに友好的で、反米的なレトリックを好んだ。アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官はここ数日、東南アジアと東アジアを往来し、バイデン政権が中国の自己主張を懸念する国々の指導者たちと会談し、関係強化の努力を続けている。
日曜日に両首脳は日本で在日米軍司令部を刷新し、日本政府との関係を深める計画を発表した。その後、ブリンケンはシンガポールとモンゴルに向かう予定だ。先月、中国海警局はフィリピン海軍の艦艇に突撃し、乗り込んだ。フィリピンの艦艇が第2トーマス浅瀬として知られる、部分的に水没した岩礁に接岸している軍艦シエラ・マドレに補給を行おうとしたためだ。米国はフィリピンと相互防衛条約を結んでおり、バイデン政権高官は、中国がフィリピン艦船を攻撃した場合、米国の軍事的対応が発動される可能性があると警告している。ブリンケンは火曜日、オースティンとフィリピンのカウンターパートと一緒にマニラの軍事基地で演説し、記者団に対し「状況は複雑さを増している」と述べ、米国の支援によってフィリピンは「主権を守る態勢を改善する。それこそが目的だ」と語った。
マルコスが大統領に就任して以来、米国はフィリピンへの経済・安保支援を拡大し、情報共有など支援を強化してきた。昨年、フィリピン当局も米軍の4つの新基地への立ち入り許可に同意し、米国による戦略的重要地域における軍事的足跡の拡大を支援した。4月にバイデンはマルコス、岸田文雄首相とワシントンで会談した際、「我々の世界における多くの歴史は、今後数年間、インド太平洋で刻まれるだろう」と語った。5億ドルの軍事援助は、フィリピン当局の軍隊近代化と対外防衛への集中を可能とすることを目的としている。両米長官はまた、フィリピンのサイバーセキュリティや、東南アジア諸国が中国の脅威に対してより強靭になるような他の分野への投資を増やすことでも合意した。フィリピンのギルバート・テオドロ国防長官は記者団に対し、「真に信頼できる抑止態勢の構築は、インド太平洋での国際法支配を確保する上で不可欠だ」と語った。ブリンケン氏のフィリピン訪問は3度目で、今年に入ってからは2度目となる。
先月の第2トーマス諸島付近での事件後、中国とフィリピンは対立緩和を約束する協定に署名した。しかし再燃への懸念は根強い。バイデン政権は、インド太平洋が優先地域であり、中国が長期的な地政学的課題であると宣言している。しかし2022年のロシアによるウクライナ侵攻や、地域戦争に拡大する恐れのあるイスラエル・ガザ紛争など、他の地域に注意を向けざるを得ない外交危機にも直面している。それでもブリンケン、オースティン両長官は、中国の膨張に対処し、歴代の大統領政権で濃淡のある米国政府との絆を深めようと、この地域への訪問を繰り返してきている。
米国防当局の高官は、火曜日の会議に先立ち、外交上の微妙な問題を議論するため匿名という基本ルールのもとで記者団にブリーフィングを行い、次のように語った。「日本、フィリピン、オーストラリア、そしてその他の地域で我々が行った戦力態勢のアップグレードと改定は、すべてこの地域における戦力態勢を近代化する全体的な試みの一部である。フィリピンはその中心にいる」。ハリス副大統領もまた、マルコスと異例の強い関係を築いており、就任以来何度も会って親交を深めてきたとハリスの側近は言う。2022年の公式訪問の一環として、ハリスは同国西部のパラワン州にある地元漁村を訪れ、中国船によって伝統的な海域から押し出された漁師たちと面会した。現地の住民は、ハリスの急速な出世を興味深く見守っている。
以上のように、米政府はフィリピンに対し5億ドルの軍事援助を決定した。これによりフィリピンは軍隊を近代化し、対外防衛に集中できるようになるとされる。米国の国務、国防両長官はまた、フィリピンのサイバーセキュリティや中国の脅威に対抗して他の分野への投資増大でも合意している。米政府のフィリピンに対する思い入れは、日比豪その他の地域での戦力態勢のアップグレードと改定の中心にいるのはフィリピンだ、という米政府当局者の発言に明示されていると言えよう。なお同日付ニューヨーク・タイムズは、今回の米比国務、国防長官の2プラス2会談開催について、このようなセッションがフィリピンで行われたのは初めてだと報じ、さらに目下、米国内で展開されている熾烈な次期大統領選の最中に両長官がフィリピンを訪問したことに少し驚いているとのマルコス大統領のコメントを伝えている。
インド
☆ 妥協に迫られるモディ首相
6月に開票された下院総選挙で、ナレンドラ・モディ首相が率いるインド人民党(BJP)を中心とする与党連合・国民民主同盟(NDA)は、過半数を維持したもののBJP単独では240議席と前回総選挙から63議席減らし、単独過半数を割った。このため3期目のモディ政権は地方政党と連携する連立政権とならざるを得なく、従来の強権的な政権運営は不可能な状況となった。こうしたモディ政権の近況について、7月23日付エコノミスト誌は、「弱体化したモディ首相は、雇用に補助金を出し豚肉を配る」と題する記事で、以下のように報じる。
モディ首相は、2月に暫定予算を発表したとき、自信に満ちあふれていた。総選挙を数週間後に控え、モディ首相の与党BJPは議会での多数派を維持し、場合によっては拡大するとの見方が強かった。このミニ予算には、インドの選挙前によく行われるような福祉政策やその他の便宜措置はほとんど盛り込まれなかった。その代わりに、財政赤字の削減、インフラの改善、そして独立100周年にあたる2047年までにインドを先進国にするという長期目標に向けたその他の施策に重点が置かれた。しかし7月23日に発表された予算案には、新たな政治的現実が吹き込まれた。BJPが過半数を失い、連立パートナーによる政権樹立を余儀なくされた6月の選挙結果を示す動きだった。
この政治情勢における予期せぬ変化は、主にインフレと不平等に対する国民の怒りに起因するものだが予算にもいくつかの形で表れている。そのひとつが、今後5年間の雇用創出に向けた240億ドルの新規支出である。これには、従業員のために最初の月の賃金を拠出し、雇用主には社会保障負担の一部を払い戻すことで、正規部門での雇用を奨励する計画、それに女性のための新しい研修プログラムなどが含まれている。1,000万人の若者にインドの一流企業でのインターンシップを提供する計画も提案されたが、これはBJPのライバルである国民会議派のマニフェストから借用したものである。
雇用に焦点を当てることは、モディ氏が自身の政策の中核を放棄することなく軌道修正しようとしていることを示している。モディ氏は長い間、世界最速で成長する主要経済国としてのインドの地位を誇示し、「雇用なき成長」という批判的な主張を退けてきた。しかし政府の最高経済顧問であるV.アナンタ・ナジェスワランは、その前日に予算編成の準備を整えた。同氏は2036年まで毎年800万人の非農業部門の雇用を創出する必要があると考えている。また製造業を活性化させるために中国からの投資をさらに求めるべきだとも主張している。インドの5億6,500万人の労働人口の約45%を雇用する農業は、予算のもうひとつの大きな焦点で、農業と関連分野に180億ドルを投じることを約束した。その中には、農民をデジタル土地記録や作物調査と結びつけ、市場価格などへの情報アクセスを向上させるデジタル公共インフラの拡張が含まれていた。政府はまた、高収量で気候にやさしい作物品種の導入も約束した。
予想通り、今回の予算で最大の利益を得たのは、BJPの主な連立パートナーだった。連立第2党のテルグ・デサム党は、南部のアンドラ・プラデシュ州を本拠地とし、6月の州選挙で地滑り的勝利を収めた。予算は、「特別カテゴリーの地位」(それによって中央から毎年多額の資金を獲得できる)の要求を認めなかったが、新しい州都と巨大な水力発電灌漑プロジェクトを含む計画のために、今年18億ドル、そして将来的にはさらに多くの資金を約束した。東部ビハール州(インドで最も貧しい州)のベテラン首相ニティシュ・クマールも過酷な要求を手に入れた。彼が率いるジャナタ・ダル(統一)党は現在、連立与党の第3党であり、ここ数週間、特別カテゴリーの地位を得るために懸命に働きかけていた。インド政府はこれに抵抗し、代わりに州内の道路に31億ドルの資金を提供し、空港、医科大学、スポーツ施設、宗教施設向けのインフラ建設資金を援助すると約束した。
モディ氏にとって幸運なことに、税収の増加と中央銀行の蓄えのおかげで、このような大盤振る舞いの余裕があり、実際、予算は財政赤字目標を2月の中間計画の5.1%から4.9%に引き下げたのである。これは、長い間待ち望まれていたインドの信用格付けの引き上げ、つまり借入コストの削減にとって良い兆しである。モディ氏はその野心的なインフラ計画に水を差す必要もなかった。予算は、年間資本支出全体を1,330億ドル(GDPの3.4%相当)に増やすという2月の公約を維持した。
それでも、予算はモディ氏が不慣れなトレードオフを必要とした。インフラ支出の多くをアンドラ州とビハール州に投じることで、他州の支援者や有権者を憤慨させるリスクがある。また、雇用創出と農業への新たな支出は、最近のインド株式市場の好況から恩恵を受けた裕福なインド人の負担となっている。彼らは、キャピタルゲインと一部の証券取引に対する増税によって被害を受けた。しかし、最大のリスクは、彼の計画が今後数年間で約束した雇用創出に失敗することだ。
以上のように、総選挙で勢いを失ったモディ首相は政策面で軌道修正に迫られた。修正の焦点を雇用に当てているのは、自身の政策の中核を放棄しないためと記事は指摘する。具体的には製造業、そして労働人口の大半を雇用する農業に予算を重点配分している。同時にこうした予算編成で最大の利益を得たのは、BJPの主な連立パートナーであり、このためモディ首相はトレードオフのリスクに遭遇していると記事は報じる。まさにモディ首相の置かれた立場を浮き彫りにしていると言えよう。
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主要紙の社説・論説から
世界の中の日本.3
ポピュリストと円キャリー取引が揺るがした都知事選と円相場
この7月は世界的に出来事が多かった。選挙の年と言われているように、7月も世界各地で選挙が行われた。11月に大統領選が行われる米国では、候補者のトランプ前大統領が狙撃される事件が発生、また民主党のバイデン大統領が立候補を辞退し、副大統領のカマラ・ハリス氏が後継者の地位を固めた。議会選挙が続いたフランスでオリンピック・パラリンピックが始まった。日本では、首都東京の都知事選が実施されたが、この間、歴史的な円安が円高へと急転回した。海外メディアは、こうした日本における2つの出来事に注目しユニークな論評を展開した。今回、このメディアの日本に関する報道と論調を「世界の中の日本.3」として取り上げた。
まず、都知事選からみていく。7月7日に投開票された選挙では、現職の強みを生かして小池百合子氏が勝利する。この選挙結果について7月11日付エコノミスト誌は、「Social-media populists have arrived in Japan (ソーシャルメディア・ポピュリストが日本に上陸)」と題する政治欄記事で、地方の市長出身者が都知事選を揺るがしたと以下のように論評する。
日本の政治は生真面目な催だ。しかし7月7日にクライマックスを迎えた東京都知事選は、そうではなかった。56人の候補者は、その多くが変わりで、辛辣な言葉を交わした。選挙ポスターにはペットが描かれ、あるケースではポルノが描かれた。ある候補者は『バットマン』のジョーカーに扮し、全国ネットのテレビで戯言を吐いた。ある候補者は服を脱いだ。結局、現職の小池百合子知事が約43%の得票率で3期目の当選を果たした。しかし話題となったのは、2位となった石丸伸二氏である。率直な物言いをするがあまり知られていない元銀行員である。これまで日本の有権者は、ソーシャルメディアが煽り、他国の政治を揺り動かしているポピュリズムには不思議と動じないようにみえた。しかし、もはやそうではないようだ。
大方の予想では、与党・自民党の元国会議員である小池氏と、リベラル派の野党第一党である立憲民主党の蓮舫氏の一騎打になると見られていた。小池氏も蓮舫氏も、政界入りする前はテレビのニュースキャスターとして名を馳せていた。しかし、石丸氏にとって無名であることは障害にはならなかった。彼の短い政治キャリアは、広島県の安芸高田市長としての4年間だけで、特筆すべき業績を残したわけではない。彼の立候補はどの政党からも支持されていなかった。その代わりに、41歳の石丸氏はソーシャルメディア、特にユーチューブとティックトックを使ってメッセージを伝えた。ユーチューブでは、チャンネル登録者(サブスクライバー)が小池氏が3000人、蓮舫氏が1万人であるのに対し、石丸氏は約30万人に達した。安芸高田市で居眠りする議員を叱責する動画が拡散された。彼は権力欲の強政治家を一掃すると約束し、主要メディアのジャーナリストを愚弄した。選挙後の記者会見では、大勢の支持者が歓声を上げる中、インタビュアーが「くだらない」質問をしていると非難した。東京にあるテンプル大学のマイケル・チュチェック氏は、石丸氏は「重要なソーシャルメディア・スキルをマスターした」と言う。彼は「権力に対して真実を語っているように見えたが、実際は否定的な戯言を吐いていただけだった」という。
日本の有権者は長年、無関心に陥っているように見える。この10年間、自民党が政治を支配してきた。選挙の投票率は低下している。しかし、石丸氏の健闘は変革への意欲があること、そしてソーシャルメディアがアウトサイダーに道を開く可能性があることを示唆している。ある出口調査によれば、石丸氏は18歳から29歳の42%の票を獲得し、小池氏の27%、蓮舫氏の15%を上回った。「ほとんどの政治家は若者のことを気にかけていると言うが、本心ではないと思う」と、石丸氏に投票した28歳の女性は言う。彼女は石丸氏が「変えてくれる」と思っている。日本の有権者は「既存の政治にうんざり」しており、「不信感が高まっている」と、東京大学の政治学者である内山融氏は指摘する。
石丸氏のようなソーシャルメディアの民衆扇動は、地方選挙よりも国政選挙で頭角を現すのが難しい。年配の農村部の有権者に感銘を与えるのは、都市部の若い有権者よりもはるかに難しい。しかし、だからといって彼らが挑戦するのを止めることはないだろう。選挙後、石丸氏は記者団に対し、日本の不人気首相である岸田文雄氏が現在保持している議席を争う可能性があると語った。小池氏の勝利は、少なくとも自民党にとっては救いである。しかし、都知事選と同じ日に行われた東京都議会補欠選挙では、9議席中2議席を獲得するにとどまった。「この結果は非常に厳しい」と自民党の国会議員は言う。時事通信の世論調査によれば、岸田氏の支持率は16%にも満たない。ライバルたちは、9月に予定されている自民党総裁選で岸田氏のリーダーシップに挑戦する準備を進めている。
次に、円相場の動向に関するメディアの報道と論調を見ていく。7月18日付エコノミスト誌は「Japan’s strength produces a weak yen (日本の強さが生みだす円安)」と題する金融経済欄記事で、7月11日、12日、17日の3回にわたる急激な円高の動きに触れ、日本銀行が再び為替市場に介入しているのではないかという疑惑が持ち上がっていると次のようにコメントする。
円相場は1ドル=156円と4%上昇し、今月初めにつけた37年ぶりの安値をわずかに上回った。速報値によると、日本銀行は7月11日と12日に350億ドル以上の外貨準備を売却した(直近の明らかな介入の規模はまだ不明)。この売り越しは、過去2年間の1200億ドル以上の介入に追加されることになり、その半分以上は4月下旬から5月下旬にかけて行われたものだ。このような動きは為替トレーダーに痛い目に会わせることになるが、為替相場に長期的な影響を与えることはないだろう。当局者を失望させ、日本に押し寄せる観光客を喜ばせることになろう。驚くほどの円安は、日米の金融政策の乖離によって説明されることが多い。日本銀行は金利を少し引き上げたが、その上昇幅は米連邦準備制度理事会(FRB)のそれにほとんど及ばなかった、 つまり、過去数年間、投資家はドルを好んでいたのだ。しかし最近、物事はおかしな方向に進んでいる。10月以降、日米の5年物国債利回りの差は1ポイント以上縮まっているが、奇妙なことに同じ期間に円はドルに対してさらに4%下落している。
なぜ円安が続くのだろうか。企業統治改革の成功が一因かもしれない。2012年から2020年まで首相を務めた安倍晋三氏の下で始まった改革の結果、日本企業は投資利益率を重視するようになり、他企業への不必要な株式保有を減らしてきた。実際、過去10年間、日本株は米国を除く先進諸国の大半をアウトパフォームしてきた。しかし、リターンを重視するあまり、資金は海外に流出している。5月末までの1年間で、日本企業が海外に投資した額は外国企業が国内に投資した額を上回り、2010年の720億ドルから1,780億ドルに増加した。株式、債券、その他有価証券への投資を意味するポートフォリオ投資の流れは不安定だが、直接投資の方向性は明らかに日本国外に向かっている。
日本の南に位置する熊本県に工場を建設するという台湾積体電路製造(TSMC)の最近の決定は国際的な注目を集めたが、この台湾の巨大半導体企業は依然として極めて例外的な存在である。日本の奇妙な文化や言葉の壁は、結局のところ、進出を検討している多くの海外企業の足かせとなっている。日本への海外直接投資残高はGDPのわずか5%で、世界ランキングではキリバスやブルンジに次ぐ最下位に位置し、世界平均の44%をはるかに下回っている。そのため、円の需要はそれほど多くない。他方、リターンを重視するようになったことで、日本企業の海外利益の使い道も変わった。海外で稼いだ現金は国内に持ち帰るよりも、利回りの高い外債や投資に回す傾向が強まっている。日本は5月までの1年間で4兆円の貿易赤字を計上した。日本の公式統計によれば、これは「第一次所得収支」と呼ばれる海外の企業収益によって相殺され、37兆円の健全な経常黒字を計上している。しかし、これらの収益が実際に日本に戻らず、円に換算されないのであれば、為替レートを支えることはできない。つまり、理論的には為替レートを支えるはずの日本の安定した経常黒字は、幻のようなものなのだ。
実際、みずほ銀行の唐鎌大輔氏の試算によれば、第一次所得収支のうち、実際に国内に還流する現金に反映されるのは10分の1に過ぎない。超長期的には、サプライチェーン多様化の拠点としての日本の魅力が円高を後押しするかもしれない。より即効性があるのは、FRBが現在の市場の予想を上回るスピードで利下げに踏み切れば、日米の債券利回りの差が縮まり、円を下支えするだろう。しかし、逆方向の力もある。日本の労働力人口が減少していることを考えるとTSMCの例に倣う企業が殺到するとは考えにくい。さらに、日本企業が規律正しく、スリムで効率的な企業であり続ける限り、為替への圧力は続くだろう。
しかし円はその後、さらに急騰する。7月25日付フィナンシャル・タイムズは、早速この動きを取り上げて、米ナスダック市場で10億ドルの大暴落(wipeout)が起き、テクニカルな調整局面(technical correction territory)に入ったが、それよりも興味深い動きが日本円で起きたと以下のように報じる。
今月初めに40年ぶりの安値を付けて以来、円は対ドルで6%上昇し、7月に入ってから全世界で最もパフォーマンスの良い通貨となった。円はメキシコ・ペソ、ブラジル・レアル、トルコ・リラなどの高金利通貨に対して9%ほど上昇しているが、これは典型的なキャリートレードの巻き戻しであることを示している。日本の金利が依然として低いため、円は世界のあらゆる種類の通貨や債券取引の資金調達通貨として人気があるが、現在はその巻き戻しが進んでいる。円の空売りは数年前から人気のあるマクロ取引であり、世界の他の中央銀行が主に金利を引き上げているにもかかわらず、日本銀行は断固として金融政策を極端に緩和し続けた。その結果、日本円先物の「非商業的」プレーヤーである投資ファンドのほとんどがネット円売りポジションを急激に増やし、最近では金融危機以来の高水準に達している。それが、急激な円高によってマクロ・ヘッジファンドの損益が悪化し、取引の一部が解消されて円高に拍車がかかったと考えられる。
ドイツ銀行のジョージ・サラベロス氏は、「大規模な動き」の主な引き金となったのは、トランプ米前大統領が最近、ドル高に関する不満を漏らし、日本円を「大きな通貨問題」として取り上げたことだと語る。すなわち、急激な円高の引き金となったのは、先週トランプ氏がビジネスウィーク誌のインタビューで円について明確に言及したことを受け、市場がドル高修正政策の成功の見込みを再評価したことだと考えている。 日本はG7の中で唯一、自国通貨に市場インパクトを与えることができるほど大きな外貨準備高を持つ国であり、他にも多くの点でユニークである。第一に日本政府はG10の中で唯一、行き過ぎた円安に対する懸念を表明している。特に最近の河野太郎デジタル相が一部メディアのインタビューで、円安が行き過ぎているとして日銀に追加利上げを求めた発言は注目に値する。第二に円レートはG10の中で唯一、中期的なバリュエーションとファンダメンタルズ的に乖離している。第三に日銀とFRBの政策収の可能性が現実的な見通しとなっている。第四にそして最も重要なことは、公的準備以上に日本の準パブリックセクター(semi-official sector)が、なかでも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が資本フローに異常に大きな影響を及ぼしていることである。我々は、とりわけ今後数カ月内に予定されているGPIFのポートフォリオ・レビューが、日本円の見通しにどのように関連してくるかを注視している。
これらを総合すると、日本政府には円に影響を与えうる政策手段が複数あることから、トランプ政権が誕生した場合、他の通貨よりも日本円に大きな影響力があると考えている。広範なドル高が予想される中、このことはクロス円相場や実質円相場に最も関連する可能性がある。円の急騰はリスクオフ環境の徴候なのか、それともリスクオフ環境を引き起こしているのか。少なくとも、リスクオフ環境を悪化させているように見える。日本のような資金調達通貨や資本輸出国でこのような動きが激しくなれば、かなり大きな波紋が広がるだろう。INGのアナリストは、「円ショート(売りポジション)の巻き戻しは間違いなく世界的なリスクオフ環境に貢献している」と主張している。
今回のドル円調整の主な要因は何であったか、例えば、介入、米金利、ハイテク株の調整、トランプ政権がドル安を正当化するとの見方、日本の政治家の円高論などかは議論の余地があるが、問題の核心は引き伸ばされたポジショニング(持ち高)にある。投機的な円先物のショート・ポジショは最近、過去20年間で最も極端な水準に達しており、巻き戻しの余地は十分にある。また、今年構築された円先物のショート・ポジションは、米ドル/円の平均レート152.50で構築されたものであることも、大雑把な計で判明している。全体として、これらのポジションはほぼ水面下にある。東京市場の債券利回りは上昇傾向にあるとはいえ、欧米の利回りを下回っている。金利低下の可能性が後退するにつれ、円相場も堅調に推移している。取引終了時には、買ったときよりもさらに円安になっており、取引を手仕舞え気持ちの良い利益を得られるだろう。これを書いている今、円ドルレートは161円である。
長い間、日本人は自国通貨の下落に耐えるどころか、むしろ楽しんでいた。しかし、日本人はインフレや過剰な観光客を好まない。新聞は円ドルレートを大見出しで喧伝し、政府の無策に憤慨している。円高を予想する投資機会の鍵は、資産に組み込まれたリスクを認識していないように見える、円高に関心のない2つの投資家グループが存在することにある。ひとつは、ドルやユーロで国債を保有する日本の機関投資家で、もうひとつは、キャリートレードの資金調達のために売られている円建ての日本以外の借り手である。この通貨取引がなくなれば、円を買わざるを得ない人が大量に発生するため、爆発的に動くはずだ。投資で言えば、日本の通貨は妥当な価値よりはるかに、はるかに高くなる可能性があるということだ。ざっくり言えば、今日のアンダーシュートと同じオーバーシュートになるということである。私たちは、そのような場合、ポートフォリオが以前の失望を補って余りあると予想している。これは予測であろうか。方向性としてはそうだ。私は円をロング(購入)したいと思っている。
上記のような円の動きに関連して、同じく7月25日付フィナンシャル・タイムズは、円キャリー取引の手仕舞いについて、さらに深く掘り下げて観察する。記事は、円相場の動向をシリコンバレーの動きと関連付けて、円キャリー取引の手仕舞いが米テク株の下落に結びついているのではないか、と以下のように論じる。
疑似相関(Spurious Correlations)という素晴らしいウェブサイトは、同時期に起こったことを深読みしないように教えてくれる。たしかに、2000年から2009年までの米国の一人当たりのマーガリン消費量のグラフは、同時期のメイン州の離婚率のグラフと酷似しているが、一方が他方を引き起こしたと主張するのは難しい。とはいえ、パターンを求める愚かな人間である私たちは、常に意味のある相関関係を探し続けている。そうせずにはいられないのだ。しかし最近、理にかなっていると思われる事例が一つある。円相場(大きく上昇)とハイテク株(大きく下落)の不思議なケースである。この2つは銀行家や投資家の間で話題になっている。
これらを結びつける糸は、米国のインフレ率の低下である。1週間ほど前に発表されたインフレ率が驚くほど低かったため、ダドリー前NY連銀総裁の最新分析をシグナルとするならば、米金利は9月、あるいは早ければ来週にも低下するとの見方が強まっている。もちろん、以前にもこのようなことはあったが、投資家たちは今回こそ本物だと考えている。そして、このことが為替市場における今日最も極端な不均衡に穴を空けたのだ。過去数十年で最も高い金利を記録したドルと、パンデミック後に他の主要国のほとんどが卒業したゼロ金利時代からまだ這い上がろうとしている円との間の不均衡である。米ドルは7月11日以降、対円で5%以上下落し、長年にわたって投機投資家にとって楽勝だった長く強力な上昇気流が止まった。
しかし、低インフレ率のデータは、大型株やさらにはメガ株よりも低金利環境の恩恵を受けやすい小型米国株をも刺激している。投資家は今、小型株に殺到している。これは大型ハイテク株への賭けが見事に成功し、その利益を得るための格好の口実となっている。いずれにせよ、小型株はトランプ米大統領候補が台湾支持について消極的な発言をしているため、通常以上の政治的ストレスに遭遇していた。しかし大型株から相対的な小型株への物色ラッシュは、ここ数十年で最も強いもののひとつだ。そのため、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は、対円でのドル安と同じ期間に7%下落している。この2つは偶然の一致なのだろうか。
おそらく、そうだろう。しかし、そんな匂いはしてこない。円に対する賭けもハイテク株に対する賭けも、ヘッジファンドの間では非常に人気がある。そしてどんな投資家でも、ある戦略が不調になると、他の戦略からも手を引こうとする圧力が高まる。こうした動きは、自ずと力を増してくるものだ。その典型的な例がスイスフランである。2015年、スイスの中央銀行がスイスフランの下落を抑える努力を放棄したため、スイスフランは急騰した。多くのヘッジファンドにとって悲しいことだが、彼らはこのような事態になるとは予想していなかった。ヘッジファンド・グループのマンが今週のノートで指摘したように、スイスフランへの賭けが大きな失敗となったとき、他の賭けからも飛び出さなければならなかった。例えば、ヘッジファンドが好んでいる株式のある賭け事の指数は、その後数日間で5%下落した。 円の上昇は、10年近く前のスイスフランの上昇のようなスピードではない。それにしても、円とハイテク株の関連は偶然の一致以上のものに思える。因果関係はどちらにもある可能性がある。また大口の投機筋にすべての責任があるわけでもない。あるヘッジファンド・マネージャーは、日本の投資家が米国のハイテク株への賭けを手仕舞い、ドルを円に戻したことも一役買っていると指摘している。しかし、はっきりしているのは、人気のある2つの投機的な賭けがちょっとしたシンクロナイズド・ダイビングをしているということだ。そして、こうしたことがあっという間に、罪のない傍観者が飛沫を上げて腹を打つ、痛々しい飛び込みになりかねないのだ。
結び:まず、都知事選の結果に関するメディアの論調から点検していこう。メディアは生真面目なはずの日本の政治が都知事選ではそうではなかったと指摘。立候補者が56人にも達し、多くが変わり者だったと述べ、得票率2位となった石丸伸二氏に焦点を当てる。そのうえで、日本の有権者は、ソーシャルメディアが煽り、政治を揺り動かしているポピュリズムには不思議と動じないように見えたが、もはやそうではないようだ、と日本における政治の変化の兆しを指摘する。
確かに、選挙前の下馬評では、ともにテレビのニュースキャスターだった小池氏と蓮舫氏がそれぞれ与党と野党第一党の後押しを受けての一騎打ちという、いわば伝統的な対立の構図であった。しかし、最も関心を呼んだ候補者は、率直な物言いをするがあまり知られていない元銀行員だった。41歳の石丸氏の成功は、ソーシャルメディア、特にユーチューブとティックトックを使ってメッセージを伝えたことにあるとメディアは伝える。ユーチューブでは、石丸氏は約30万人のチャンネル登録に配信し、小池氏と蓮舫氏はその足元にも及ばなかった。さらに人気の秘密は、権力の座にある政治家や言論を差配する主要メディアを批判し、非難したことにあると分析する。安芸高田市の市長時代に居眠りする議員を叱責した動画を拡散するなど、「重要なソーシャルメディア・スキルをマスターした」との見方を伝える。ただしメディア側は、メデイア非難に関連して、「権力に対して真実を語っているように見えたが、実際は否定的な戯言を吐いているだけだ」と反論する。
石丸氏健闘で最も注目すべき点は、政治に対して無関心に陥っている日本の有権者に変革への意欲があること、そしてソーシャルメディアがアウトサイダーに道を開く可能性があることを示唆しているとの指摘であろう。メディアは、石丸氏のようなソーシャルメディアの民衆扇動家は、地方選挙よりも国政選挙で頭角を現わすのが難しいとも述べるが、彼らが挑戦するのを止めることはないだろうと後押しをする。まさに、その通りであろう。都知事選と同じ日に行われた都議会補欠選挙では、与党は9議席中2議席を獲得するにとどまった。長期にわたる自民党の政治支配に有権者はうんざりしているのである。
次に円相場の問題である。メディアは、まず円資金の動きから円安要因を分析する。第一に企業統治の観点から日本企業が投資利益の増大を見込んで海外ポーロフォリオ投資に励んでいること、このため、貿易赤字を相殺するはずの経常黒字は利回りの良い海外証券に再投資され、日本にあまり還流していない。つまり、経常黒字は帳簿上だけの幻に過ぎなくなっていることを挙げる。そして、この流れは日本企業が規律正しく、スリムで効率的であり続ける限り続くだろうと予測する。第二に海外からの対日直接投資も日本文化や言語の特殊性によって阻まれ、同残高の国内総生産比率はわずか5%程度と世界の最下位に甘んじていると指摘する。もちろんメディアは、日米金融当局の金融政策の動きいかんで日米の債券利回りの差が縮まり、円を下支えする可能性や超長期的にサプライチェーン多様化の拠点としての日本の魅力が円高を後押しする可能性なども補足する。
こうした実需面の動きと並行してメディアはさらに、円キャリー取引が問題の核心にあると強調する。極端な水準に達している投機的な円先物のショート・ポジションが引き伸ばされたと述べ、その巻き戻し余地が十分あると述べる。巻き戻し要因として、ショート・ポジションが米ドル/円の平均レート152.50で構築されていると試算し、これを超えた円高が巻き戻しを誘発するとの見方を示唆する。同時に米大統領選の帰趨や日銀、FRBの日米金融当局の政策動向、巨額の外貨投資残高を持つGPIFの動きなどを挙げる。さらに、円キャリー取引巻き戻しが、リスクオフ環境を悪化させており、日本のような資金調達通貨や資本輸出国でこのような動きが激しくなれば、世界に大きな波紋が広がると警告する。そして、行き過ぎた円安について、長い間、日本人は自国通貨の下落に耐えてきたが、(円安が招く)インフレや過剰な観光客は好まず、新聞は円ドルレートを大見出し喧伝し、政府の無策に憤慨しているとコメントする。
もう一つメディアは、米ハイテク株の下落と円急騰の関係を指摘する。それは、ヘッジファンドの間で非常に人気のある円に対する賭けとハイテク株に対する賭けが、低インフレ率という糸でつながって同時不調に陥ったためだと分析する。すなわち、低インフレ率データは、低金利環境の恩恵を受けやすい小型米国株を刺激し、投資家がハイテク株から小型株に殺到したため、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数が対円でのドル安と同じ期間に下落したと述べ、一例として日本の投資家が米国のハイテク株への賭けを手仕舞い、ドルを円に戻す動きを挙げる。
要すれば、円相場を動かす実需面の資金移動は、いわば経済原則に乗っ取った教科書的な動きと言える。そこに政府・日銀が介入する余地と必要性はないだろう。しかし投機的要素を含む円キャリー取引や株式売買には、政策的な介入の余地がある。とりわけ、日米の金利差が主因とみられる円資金の動きは、そう言えるだろう。それだけに、メディアが指摘するように、歴史的な円安は政府の無策が招いたとして憤慨する国民感情があったかもしれない。政府も過度の円安の日本経済に与える悪影響を懸念して市場介入に動いたとみられる。ただしメディアは、市場介入は長期的には効果がないと断じる。確かに、効果は一時的と言えよう。より基本的で長期的な政策対応が必要であろう。都知事選と都議会補欠選の結果や最近における円相場の急変は、底流として自民党による長期政権への不満があり、それが一気に噴出した動きと言えるかもしれない。
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(主要トピックス)
2024年
7月16日 ロシア太平洋艦隊、中国南部の海域で中国海軍との合同軍事演習「海上連合-2024」を開始。
日本政府、「太平洋・島サミット」を都内で開催。日本企業の脱炭素・
金融新事業を通じ課題解決を討議。
18日 中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)閉幕。
国有企業を柱に成長する方針、先端半導体などのサプライチェーン
(供給網)強化を打ち出す。
日本の海上保安庁と台湾海巡署(海保に相当)、千葉・房総半島沖で
合同訓練。1972年の日台断交後、初。
19日 台湾の林佳龍・外交部長(外相)、台北市内で記者会見し、日米比で
フィリピンの重要インフラに投資する「ルソン経済回廊」への協力を表明。
ベトナム共産党の最高指導者、グエン・フー・チョン書記長が死去。
22日 「日中戦略対話」を都内で開催。日中関係や地域情勢について意見交換。
24日 中国の馬朝旭外務次官、韓国を訪問。ソウルで趙兌烈(チョ・テヨル)外相ら
と外交戦略対話を開催。
25日 東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議、中国とASEANとの自由貿易協定(FTA)の年内改定方針を確認。
中国人民銀行(中央銀行)、市中銀行向け1年間の短期資金融資金利を年2.50%から年2.30%に引き下げ。
26日 上川陽子外相、ビエンチャンで中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼
外相と会談。日本産水産物の輸入停止措置の即時撤廃を要求。
27日 東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議、ラオスの首都
ビエンチャンで開幕。ASEAN加盟国に加え日米中ロなど主要国も参加。
28日 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会、北京市の天安門広場を
含む「中軸線」の世界文化遺産登録を決定。
29日 日米豪印の4カ国、Quad (クアッド)」外相会合を東京で開催。
共同声明で「東・南シナ海の状況を深刻に懸念」すると表明。
31日 日本銀行、追加利上げを決定。政策金利(無担保コール翌日物レート)を
8月1日から0〜0.1%を0.25%に引き上げ。
8月2日 海上自衛隊の護衛艦とフィリピン海軍フリゲート艦、南シナ海で通信訓練
や戦術運動の合同演習を実施。
5日 東京市場で対ドルの円相場が急伸、一時1ドル=141円台に上昇。
日経平均株価も前週末比4451円(12.4%)安の3万1458円へ暴落。
6日 台湾総統府、台北駐日経済文化代表処代表の交代を発表。
李逸洋・前考試院(人事院に相当)副院長が就任の見通し。
9日 タイで解党命令を受けた民主派の最大野党「前進党」に所属していた
下院議員ら、後継政党の「国民党」に移籍と発表。
12日 自民党の石破茂元幹事長ら超党派の国会議員団、台湾を訪問。
台北の総統府で蕭美琴副総統と会談。
14日 岸田首相、9月の自民党総裁選に立候補しないと表明。
15日 タイの連立与党、最大与党「タイ貢献党」のペートンタン党首を首相候補に
することで合意。同氏はタクシン元首相の次女。
主要資料は以下の通りで、原則、電子版を使用しています。(カッコ内は邦文名) THE WALL STREET JOURNAL (ウォール・ストリート・ジャーナル)、THE FINANCIAL TIMES (フィナンシャル・タイムズ)、THE NEWYORK TIMES (ニューヨーク・タイムズ)、THE LOS ANGELES TIMES (ロサンゼルス・タイムズ)、THE WASHINGTON POST (ワシントン・ポスト)、THE GUARDIAN (ガーディアン)、BLOOMBERG・BUSINESSWEEK (ブルームバーグ・ビジネスウィーク)、TIME (タイム)、THE ECONOMIST (エコノミスト)、REUTER (ロイター通信)など。なお、韓国聯合ニュースや中国人民日報の日本語版なども参考資料として参照し、各国統計数値など一部資料は本邦紙も利用。
バベル翻訳専門職大学院 国際金融翻訳(英日)講座 教授
前田高昭
PDF版