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第63回アメリカ書籍レポート

世界の出版事情―各国のバベル出版リサーチャーより第 63回

アメリカ書籍レポート - 8月 

Barnes & Nobleのサマーリード特集より

柴田きえ美(バベル翻訳専門職大学院生)


夏真っただ中ですが、いかがお過ごしでしょうか。日本も気温が高くなっていることはニュース等で時折読んでいます。気温が高いだけでなく湿度も厳しい日本の夏では、熱中症にお気を付けくださいね。

私の住む地域も、先日、過去最高気温とほぼ同じ華氏114°(45℃)に達しました。ちなみに2023年の華氏115度が過去最高気温でした。その後、いったん38℃程度まで気温が落ち、少しだけ涼しい数日を挟んで、また40℃超えの日々が続いております。暑いと停電が頻発し、様々な家電が壊れるので困りますが、11月ごろまで何とか乗り越えるしかないです。

さて、今回はBarnes & Nobleのサマーリード特集から気になるものを選んでみました。ほんのり(?)怖い魅力的な作品がありました。

The Art Thief (2023)

著者:マイケル・フィンケル

邦題:美術泥棒

訳者:古屋美登里

出版社:亜紀書房 (2023年10月)

 

作品について:

この作品は実話をもとに書かれています。実在する美術品泥棒、ステファン・ブレイトワイザー(Stéphane Bréitwieser)の半生を描く。ステファンは、約8年間にわたり、ヨーロッパ中で300点以上の美術品を白昼堂々各地の美術館から盗み、自宅の屋根裏部屋にコレクションしていた。彼が盗むのは金銭のためではなく、美術品を個人的に鑑賞するため。素晴らしい芸術品に囲まれ、まるで自分が国王かのように陶酔していたそうだ。当時の恋人が協力し、母親も隠ぺいに手を貸すようにまでなる。スイスで捕まり、国外追放となるものの、母親の旧姓を名乗り、フランスとの国境を難なく乗り越えて出稼ぎをしていたほど、狡猾で自信家。そんなフィクションのような泥棒がどのように生まれたのか、読んでみたくはなりませんか?

著者紹介:

アメリカ合衆国ユタ州在住のジャーナリスト。「ナショナル・ジオグラフィック」、「ローリング・ストーン」、「GQ」、「エスクワイア」、「ヴァニティ・フェア」、「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」など多くの雑誌に寄稿しています。これまでに発表したノンフィクションに、『True Story: Murder, Memoir, Mea Culpa』(2005)、『The Stranger in the Woods』(2017)[邦題『ある世捨て人の物語 誰にも知られず森で27年間暮らした男』宇丹貴代実訳(河出書房新社)2018]などがある。

 

The Housemaid Is Watching (2024)

著者:フリーダ・マクファデン

邦訳:なし

 

作品について:

この作品のタイトルを見た瞬間、少し昔に流行った某テレビドラマのタイトルと市原悦子さんが浮かびました。もちろん、全く違う主人公、異なるコンセプトのシリーズなのですが。本作品は、The Housemaidシリーズの第3作品目。これまでお金持ちの家でメイドとして働いてきた主人公。夫とようやく手に入れた自分の家に移り住み、ご近所との交流も滞りなく、新しい隣人であるローウェル夫人には夕食に誘われた。そこで見かけたローウェル家のメイドの不穏な視線に不安を覚える。さらに、怪しい人影がうろつくようになり、夫の深夜の不審な外出も彼女の不安を煽る。徐々に、引っ越してきたことを後悔し始める。最も暗い秘密は過去のものだと思っていたが、この一見して静かな住宅街は、最も危険な場所かもしれない。

著者紹介:

フレイダ・マクファーデンは、脳障害を専門とする開業医として活躍する一方、ニューヨーク・タイムズ、USAトゥデイ、パブリッシャーズ・ウィークリー、サンデー・タイムズでも取り上げられる世界的ベストセラー作家。彼女の第一作目はAmazon KDPでの自費出版から始まり、本作品のシリーズ『The Housemaid』は世界的なヒットとなる。『Never Lie』(2022)は、Netflixでのドラマ化も決定している。インターナショナル・スリラー・ライター賞のベスト・ペーパーバック・オリジナル賞とグッドレッズ・チョイス賞のベスト・スリラー賞を受賞。彼女の小説は40以上の言語に翻訳されているものの、日本語へは未だ翻訳されていない。

 

The Summer She Went Missing (2024)

著者:Chelsea Ichaso

邦訳:なし

 

 

作品について:

ペイジ・レッドモンドが毎年夏を過ごす避暑地、クリアウォーターリッジ。日中は滝のそばで日光浴をし、夜は周囲のお金持ちの家でパーティーを楽しみ、夏休みを謳歌していた。中でも親友のオードリー・コビントンの兄、ディランとは昨年の夏から距離が縮まり、今年はきっと素晴らしい夏になると期待に胸を膨らませていた。

ところが、オードリーの様子がおかしい。そしてある夜、オードリーが家に帰ってこなかった。

実は、クリアウォーターリッジではこれまでにも何人もの失踪者が出ていた。残されたオードリーの遺留品からは、次々と彼女の嘘が見つかった。結局、1年たっても事件は未解決のままだった。

そんなある日、ペイジはオードリーの部屋で秘密を見つけてしまう。すると、昨年の事件が一転して別の様相を見せる。ペイジとディランが協力して調査を進めるうちに、警察にも知られていない事実を発見する。この町の行方不明者たちを追うごとに。闇へと近づくペイジ。次に消えるのは彼女自身かもしれない。

著者紹介:

チェルシー・イチャソは、元高校英語教師で、ヤングアダルト向けのスリラー小説を得意とする作家。本書を始め『Dead Girls Can’t Tell Secrets』(2022)や『They're Watching You』(2023)、を出版しており、大人向けに『So I Lied』(2025年、Amazonから出版予定)を書いている。現在は南カリフォルニア在住。


柴田きえ美                                                                                  カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生として法律翻訳を勉強中。これまでに4冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得し、フリーランスで翻訳をしながら課題にも取り組む。

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