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2022年5月8日 第315号 World News Insight (ALUMNI編集室改め) 

発行:バベル翻訳専門職大学院 ALUMNI Association

「 A Small Giant 」  

バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹
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 米シンクタンク経済政策研究所(EPI)によると、2020年には、米国のS&P 500に上場する企業のCEOの平均報酬は、一般労働者の平均賃金と比較して351倍に達していたと言います。具体的には、S&P 500企業のCEOの平均報酬は1,524万ドル(現時点で約16億8000万円)、一方で一般労働者の平均賃金は43,992ドルとなっています。1965年は20倍、1989年は58倍であり、年々、その差は広がる一方ということです。このような報酬格差の問題は、アメリカの社会的・経済的問題となっています。

 そんな中、アメリカで最近話題になっている言葉に、Small Giantという言葉があります。        規模は小さいけれど、影響力は巨人並ということで、スモールジャイアントと言われています。

 Small Giantの特徴は会社の存在意義が資本主義的ではないというところにあります。一般的に会社は、誰のためにあるのかという問いに 対して資本主義社会では、株主と投資家のためにあると言われてきました。

 会社は株主のものであり、株主の利益を最大化する経営が良しとこれまでされてきました。

 一方、日本人の給与が実質30年以上停滞、上がらずにいる主要因は、不況の中でも配当だけはぐんぐん伸びているといういびつな株主利益優先だからです。恐ろしいことに日本は1997年以降、資本金十億円以上の大企業であっても、売上、人件費、投資(減価償却)は全く増えていないにも関わらず、経常利益は3倍、配当金は6.2倍に膨れ上がっていると言います。

 スモールジャイアントの経営では、尊重する順番が違います。まず、顧客、環境、従業員とその家族、地域社会。そして最後に、株主、投資家という順番になっています。

 一般的な会社経営のほぼ逆の順番と言えると思います。

 2021年4月13日に、米国の大企業を率いるCEO約200人が、企業は単に株主の利益を最優先する「株主第一主義」を掲げるべきではなく、社会全体の利益を考慮するべきだという考えを発表しました。この声明は、「Business Roundtable」と呼ばれ、アメリカの最も影響力のあるCEOが参加するグループによって発表されました。一方、日本の経団連周辺ではそんな動きはまるでないようですが。

今や、ライフスタイルが転換を求められているように、企業も大きなパラダイム変換を求められているのでしょう。令和も5年目、個人事業主、フリーランス、企業に関わらず、生き方改革の必要性を痛感します。

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