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2022年2月22日 第310号 World News Insight (ALUMNI編集室改め) 

発行:バベル翻訳専門職大学院 ALUMNI Association

「ダボス会議―世界経済フォーラムの不都合な真実                              

バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹
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 1月16日から3日間、スイス東部のダボスで始まった「世界経済フォーラム」の年次総会、通称ダボス会議は企業経営者など、およそ2700人が参加した。今年、2023年のテーマは「分断された世界における協力の姿」だということだった。 

 ダボス会議では、、現代の様々な課題、脱炭素、気候変動、ジェンダー間の不平等、デジタル化の将来などが討議される。 

 ダボス会議の創設者はクラウス・シュワブ。シュワブはハーバードの大学院に留学した際、ステークホルダー理論の基礎を考えつき、これを、ビジネスと政府が人々のより良い生活を実現するための理論と位置付けた。この発想に突き動かされたシュワブは、「ヨーロッパ経営フォーラム」と名付けて、研究者、経営者、政府当局者らの集いを1971年に主催した。舞台としてダボスを選んだのは、静寂な環境が意見を交わすのにふさわしかったからだと言う。 

 だが舞台裏は、ビジネス上の契約やネットワーク作りのための場と化している、と言う。ある経営曰く。「これは地球上で最大のロビー活動の場なんだ。最も力のある人々が、外部への説明責任など負わずに閉ざされたドアの内側に集う。そしてその場で彼らが世界全体のルールを作る」と。 

 また、よく聞く「ダボスマン」という造語は、2004年に政治学者のサミュエル・ハンティントンが考案したものである。この言葉が当初意味していたのは、「世界経済フォーラム年次総会」(通称、ダボス会議)に毎年出席するため、スイスのリゾート地、ダボスに出かける者たちのことだった。しかし歳月を経て、ダボスマンという言葉は、地球をまたにかける億万長者たちを束ねた呼び名として、ジャーナリストや学者たちが使うようになった。 

  参加者は、パートナーとメンバーからなる。パートナーは多国籍企業100社とメンバーは世界トップ企業1200社。会費はパートナーは日本円で年間217万円。メンバーの会費は日本円で444万円。日本からは、大手証券会社、大手自動車会社、大手銀行、大手食品・飲料会社、大手IT企業、大手テクノロジー会社、有名大学学長、大手商社、テレビ局、議員、政商(竹中平蔵等)たちだ。 

 彼らのねらいは国境を越えた統一政府のような存在をつくり、相対的に各国政府の存在感を薄めて、世界を牛耳るのがその狙い、と言っても過言はないだろう。実際、このねらいはEU、アジアを中心に徐々に進められつつある。日本政府も、スマートシティ構想を表看板に、マイナンバーカード、マイナポータルを通じて着実に個人情報を捕捉、世界のデジタル支配構造をもくろんでいるのが事実のようだ。 

 従って、ダボス会議は西側の自由主義陣営対共産主義陣営と言った単純な対立構造ではないようだ。それを典型的に表すのが、推奨アプリが以下のアプリ、すなわち中国アプリも推奨されているという事だ。Facebook, LinkedIn, Instagram, YouTube, TikTok, Weibo, WeChat。 

 更に、今回のダボス会議を象徴する驚くべき提案はイギリス、フランスの一部の地域ですでに実施されている「15分都市構想」である。簡単に言えば、脱炭素政策(太陽光発電は中国利権)の一環で、自宅から徒歩15分以内で生活せよという提案で、以下がその骨子。 

1.居住者が居住区域を離れたい場合、誰がOKで誰がダメかを市議会が決定して許可をだす。

2.この都市では居住者が自分の地域を離れられるのは年間最大100日。

3.外部に行く許可を取得するためには、全ての居住者が所有する車の詳細を市議会に登録する。

4.市議会は市中の高性能カメラを介して居住者の動きを24時間追跡。感電する電子ゲートを設置する。 

まさに、これこそがジョージ・オーウエルのディストピアSF小説1984を彷彿とさせるデジタル監視社会。これがまじめに提案され、英国、フランスで実際に行われているという驚愕の事実。 

 日本でも、デジタル庁肝いりの日本のマイナンバーカード、マイナポータルはデジタル監視社会への入り口。最近よく聞かれる、所謂、スマートシティ構想こそ、実のところデストピアへの入り口と言っても過言ではないでしょう。 

 我々がこれらに対抗するためには、一人一人の国民が、タテヨコの共同体的連携を思い出す必要があるでしょう。まずは、ヨコの連帯、すなわち、まず各地方公共団体が自主的にこれらに対抗する措置をとることが、国民を守ることになる。所謂、地方分権一括法は、国が理不尽なことを仕掛けても、各自治体で全てが自主的に判断し、場合によってはこれを拒否することさえできる。更には、タテの連帯、すなわち、祖先から引き継いだ2千年を越える世界最古の日本、そして、日本語、日本人を尊重、守ること。すなわち、特殊技能労働者の受け入れと言った実質的には安易な移民受け入れをしないこと。日本の土地の所有権を安易に外国人に譲らないこと、この点は日本は世界的にもまれなルーズさで、すでに日本の土地は北海道2,3個分の土地を収奪されていると言う。また、母語である日本語をないがしろにした安易な英語教育の暴走を防ぐこと、明治維新以降の政府の安易な日本語排斥、英語化を‘翻訳’を通じて阻止してきた祖先の叡智を思い起こしたい。 

 「西洋の自死」ダグラス・マレー著(東洋経済新報社)という本から学ぶ教訓をかみしめたい。今は、例えば移民大国英国(日本もすでに世界第4位)では、「イギリスはこういう国だ」、と堂々と語ると、差別発言だと非難される状況。こんな状況は絶対に避けたい。 

 我々は、ダボス会議で仕掛けられる様々な提案を、不都合な真実として受け止める確かな選球眼を持ちたいものである。

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