「JTA News & Topics 」 第174回
今回は、2022年12月9日に実施しました「英字新聞を徹底的に読み解く!(10)」セミナー (主催:バベルユニバーシティ、後援:一般社団法人 日本翻訳協会)受講者の吉田ひろみさん及び横須賀珠世さんよりセミナーレポートを投稿していただきましたので掲載しています。
情報提供:一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)
https://www.jta-net.or.jp/
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「英字新聞を徹底的に読み解く!(10)」セミナー
◆英字新聞を読む
― Germany Wins 'RoboCup,' the Robot Soccer World Cup ―◆
講師:江國真美
・大阪大学文学部大学院卒業。 ・バベル通信科を経てバベル通信講座、スクーリング講師 その後、フリーランスとして独立。出版翻訳、Forbes誌翻訳、 CNN登録翻訳者などを経て、現在は経済雑誌翻訳、 ジャーナリズム翻訳を中心に活動をする一方で、 翻訳学校講師として「自然な翻訳表現」を追求。 |
- レポーター :吉田 ひろみ
バベル翻訳専門職大学院在籍中。米国ハワイ州在住。
国際企業でフルタイム勤務の傍ら、子育てと学業の両立に奔走中。
この度、江國先生(バベル翻訳専門職大学院講師)の「英字新聞を徹底的に読み解く(10)」セミナーへ参加させて頂きました。事前に出された提出課題を元にしたグループ講義形式。江國先生の明るく軽快なトークのお陰で活気があり、楽しく学べるのが魅力、いつもあっという間に2時間過ぎてしまいます。
今回のセミナーは、ボン大学(ドイツ)のサッカーロボットをテーマにしたニュースをドイツ語から英語、さらに日本語へ翻訳したユニークな課題。
Deep Lを使ってドイツ語から英語へ翻訳された記事であるということを、途中おかしな英語になっている部分から気付かれたとのこと。ドイツ語~英語~日本語という3ステップ翻訳の場合、途中の英語がおかしくなると、さらに日本語もおかしくなり、原文の正しい意味が伝わらなくなるという問題点があること、また最近、知らない言語の翻訳依頼もあるという先生の体験談を伺いながら、以前、受講した機械翻訳セミナーのことを思いだし、もっと詳細を知りたいと思い調べてみました。
「ニュートラルネットワークを使って、人間の可能性を押し広げ 、言葉の壁を取り払い、異文化理解を促進すること」
大手技術系企業の翻訳システムよりDeep Lの方が上手く翻訳できることが多いのはなぜか?
他の多くの翻訳システム同様、Deep Lでも人工ニューラルネットワークを使って翻訳、ネットワークのトレーニングには、何百万もの翻訳済みテキストを使用、Deep Lのリサーチャーらは、ニューラルネットワークの方法論の全般、特に次の4分野に大幅な改善を追加、
*ネットワークアーキテクチャ
*トレーニングデータ
*トレーニング方法
*ネットワークのサイズ
Deep Lは、ニューラルネットワークを使った翻訳の精度を向上させられるよう、特別なトレーニングデータを獲得することに重点を置き、この一環として、インターネット上の翻訳を自動検索し、翻訳の品質を自動評価できる特殊なクローラーを開発。
*トレーニング方法
一般に知られている研究では、通常「教師あり学習」の手法を使ってネットワークをトレーニング。この手法では、異なる例文を何度もネットワークに提示し、ネットワークはトレーニングデータとして与えられた訳文とネットワークが訳出した結果を繰り返し比較。比較の結果、差異があればこれに応じてネットワークの重みを調整。 また、ニューラルネットワーク機械学習の別分野の技術も採用してトレーニングを行い、大幅な品質改善を実現。
*ネットワークのサイズ
主要な競合他社と同様、何十億ものパラメータを使って翻訳ネットワークをトレーニング。翻訳ネットワークのサイズがあまりにも大きいため、大規模なコンピュータクラスター上で分散してトレーニングする以外に方法以外にないが、リサーチチームでは、ネットワークのパラメータを限りなく効率的に使うことを重要視。競合他社と比べると小規模だが高速なネットワークを使って、同等の品質で翻訳できるようになり、無料版のユーザーにも、非常に高精度の翻訳サービスを提供。
https://www.deepl.com/ja/publisher
機械翻訳の進化
あらかじめ文法・統語・語彙などを規則化して翻訳する。 → deep learning で翻訳することでデータが収集されていく。
翻訳に適した表現の求め方
あらかじめ「翻訳に適した日本語表現」で日本語文を作成する。 → 日本語表現を機械翻訳しながら翻訳しやすい表現を対話で探していく。
ポイント
再翻訳を読んで原文との相違や、不足点などを補いながら翻訳をし直す。
原文を訳したものを再度訳すことで、その適切さや精度を確認しながら作業する。 →翻訳先の言語が苦手でも、再翻訳との一致を参考に、修正が可能である。
不適切な部分に関しては、原文が再翻訳でもどるように書き換えを行う。 →翻訳者が経験からやっていた「翻訳に適した表現に変換する」作業を、試行錯誤しながらできる。
★原文を変えずに、適切な翻訳を模索できる。
新井紀子氏の「DX時代の人材育成の鍵は読解力にあり」
ロボットの能力と限界
ロボットに負けないため:読解力
機械翻訳には限界がある
AIを使ったGoogle翻訳, MicrosoftBing. Deep L, Excito訳など定型翻訳、ビジネス英語などでは活躍。まだまだ文学作品やジャーナリズム等では難しい部分がある。
技術的な問題があり、現状では人間の介入がないと「より良い翻訳」は困難
膨大なデータを学習させなければならない(更新)
人間のチェックはこれからも必要
*通訳も無くならない(複雑な話し言葉は機械翻訳しにくい)
いかに、読者に興味をもって読ませていくか、ジャーナリズム記事にとって大切なこと。
スローモーションのような動きのサッカーロボットのすぐ後ろにぴったりくっついて、一挙一動を見守る開発チームスタッフの姿は、まるで心配そうに子供に付き添う親の様。まだ、ぎこちなくゆっくりした動きのロボットが、近い将来人間を越えるという発言に対し、不思議な感じもしました。
コンピューター(機械翻訳、サッカーロボット)にも、根気よく学習を繰り返すこと、たくさんのトレ-ニングが必要。どこか、人間の子育てに通じるものがあると思いました。
- レポーター:横須賀珠世
アメリカ、ミシガン州在住。日系自動車サプライヤーでパートの事務仕事をする傍ら、 2017年よりバベルの法律翻訳コースの受講を開始、2022年秋に無事卒業。
12月9日に開催された「英字新聞を徹底的に読み解く!(10)」のセミナーに参加しました。私は昔から英字新聞に対して苦手意識があり、本セミナーで読み方のコツを掴めればと思い参加しました。江国先生のスピード感のある授業の進め方と生徒一人一人を巻き込んでいく授業のスタイルが非常に心地よく、何より知りたいことが分かる授業でしたので2時間惹きつけられたまま授業が終っていきました。今回は事前に課題が出されていたので授業の前までに訳文を提出してあったのですが、各人の翻訳について適格なアドバイスを下さり、かつ、笑いも交えてご指導下り、楽しく勉強させていただきました。
授業では訳文を「自然な日本語」にすることにフォーカスし、訳出しない方が返って「日本語らしい表現」になる場合についても勉強しました。また、駆け出しの翻訳者がやってしまいがちな「ベタな訳」の例とその対策についても指導下さり、私にとっては目から鱗と言った感じでした。例えば、”NimbRo had been fitted with new high-tech vision system to help them spot the ball more accurately.” という文のmoreの訳し方を、あなたならどうしますか?私を含めクラスメートの皆さんの多くが「より」と訳していました。moreという言葉の比較表現を訳に反映させなければと思ってしまい、「より」や「もっと」という表現を使いがちです。しかし、その結果訳文がどこか不自然な日本語となってしまいます。日本語では「比較」の表現をわざわざ訳出しなくとも判断できるという特性を忘れてしまいがちなのです。
その他、今回のクラスで触れた不自然なベタ訳の例と、それに代わる訳を以下に幾つか紹介します。
So 「かなり」「相当」などの曖昧表現を使わない。「非常に」がおススメ。
They 「彼ら」と訳さない。不自然な日本語訳になってしまうので、わざわざ訳そうとしない。
Clearly 「明らかに」とせず文脈によって「断トツで」、「圧勝した」などとすると良い。
また、文字列通りの訳出をせず、形容詞や副詞を動詞化して自然な日本語に訳出するテクニックもご紹介下さいました。例えば、「Proud winners at the university said…」を「大学の誇り高き勝者」や、「大学の誇らしげな優勝者」等とせず、「大学は、誇らしげにこう語る」という具合です。これは、日本語が重心は文の後半にくるという性質を活かし動詞を使って意味を伝える技法ですが、この技法を使った訳の方が自然な日本語に聞こえます。
不自然さのない日本語に訳出するポイントは、「この表現は日本語で普段使っているか?」を常に自問し、日本語ネイティブとしての自分の感覚を信じることであると仰っていました。更に、原文に書かれていることが日本人に馴染みのない用語・内容である場合には、誰が読んでも分かるように訳注を入れたり日本語を補ったりし、逆に日本人にとって必要のない情報(例えば、「サッカー」の説明について「アメフトでない方の、フットボール、すなわちサッカー」等返って読者を混乱させる情報)を訳す必要はない点などにも触れました。
ところで、今回使用した教材はドイツ語で書かれた原文を一度英語に自動翻訳されたものであったため、英文自体が分かりにくく訳出に困った部分も多くありました。しかし、実際、こういった案件(他言語から一度英語に機械翻訳されたものを日本語に翻訳して下さいという案件)が増えてきているのが現状とのお話がありました。その上で、こういった依頼を引き受けてしまった場合の対処方法、下調べ・補足資料の集め方についても触れられました。記事が何を伝えようとしているのかを他の資料を元に割り出して訳出するため、調査がいかに大切であるかを感じました。
また、機械翻訳の技術が格段に上がってきていると言われる昨今、いかに人間の翻訳者が機械翻訳された下訳に手を入れ、読みやすく分かりやすく出来るかが重要であることを痛感しました。人間の翻訳者であり続けるには、日本語ネイティブでなければ分からない感覚を大切にし、この感性に自信を持つことが大切なのだと。
今日から即使える知識を伝授して下さる講義です。第11回目も是非受講したいと思っています。
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●●セミナーのご案内●●
*ZOOM(オンライン)で受講できます。
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- ZOOM オンラインセミナー●
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『ピーターラビット』で楽しく翻訳を学ぶセミナー(1)
― 『ピーターラビット』シリーズの石井桃子訳と
川上未映子の新訳を比較してわかること ―
石井桃子は多くの翻訳作品を生み出していますが、その中で最も有名なものは『クマのプーさん』の翻訳です。原文を読むうちにプーさんが自分の頭の中で動き、話し始めたと語っているように、ミルンの文体や『プーさん』のユーモア感覚は石井桃子と合っていたようです。それと対比されるのが、ビアトリクス・ポターの『ピーターラビット』シリーズです。ポターの本は、大変苦労して訳したと石井桃子は述べています。その理由の一つとして、ポターの文は、自分自身に欠けている単純さ、正確さ、緻密さで成り立っているからではないかと分析しています。また、簡潔な話を、絵とむきあうスペースに組み込まねばならないことにも苦労したということです。
今回のセミナーでは、第一作のPeter Rabbitと、その続編に当たるBenjamin Bunnyの
石井桃子訳と川上未映子訳とを比較し、時代による変化とともに、絵本特有の翻訳の難しさについても考えます。
【セミナー目次】
1.石井桃子とビアトリクス・ポター
2.翻訳者としての川上未映子
3.Peter Rabbitの翻訳の比較
4.Benjamin Bunnyの翻訳の比較
5.昭和の翻訳と令和の翻訳
6.絵本翻訳の難しさ
- 講師:夏目康子(ナツメ ヤスコ)
・大妻女子大学短期大学部英文科准教授
・青山学院大学、早稲田大学て゛も教鞭をとる
・マザーグース、英米児童文学、絵本を研究
<著書>
『マザーグースと絵本の世界』(岩崎美術社)
『不思議の国のマザーグース』(柏書房)
『英語で遊ぼう!マザーグースたのしさ再発見1~3』他
<翻訳>
『子どもはどのように絵本を読むのか』ヴィクター・ワトソン他編著
(共訳、柏書房)
『クリスマス百科事典』ジェリー・ボウラー著(共訳、柊風舎)
『アイルランドの風の花嫁』津川=マーダン江利子著(共訳、金星堂)他
- セミナー日程: 2023年3月3日(金)15時~16時30分(日本時間)
- 申込締切 :2023年2月28日(火)(日本時間)
◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓
https://www.jta-net.or.jp/seminar_20230303.html
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「年金を受給しながら趣味と翻訳業を楽しむには」セミナー
― 仕事(翻訳)と趣味のワークバランス ―
年金をもらいながら翻訳業と趣味を両方楽しめたら…。そんな夢のような生活を実現するためのヒントをお教えます。子供たちが独立した後、あることがきっかけで、翻訳の仕事優先の生活から、趣味である旅行を楽しみながら仕事もする生活にシフトしてから4年以上経ちました。契約翻訳会社を一社に絞り、その会社から仕事を依頼されなくなったら翻訳者を引退するつもりでしたが、予想に反して参加するプロジェクトは増えるばかり。そこで、私の個人的経験を公開し、これから趣味と翻訳の仕事の両立を図っていきたい方に何らかのヒントになれば幸いです。
【セミナー目次】
1.いつになったら自分の人生を楽しめるのか?
2. 年金をもらいながら、現役生活を続けるには?
3.シニアになっても必要とされる翻訳者でいるには?
4. 翻訳業の辞め時
- 講師:ハクセヴェルひろ子
・日本の大学卒業後、商社と外資系金融機関に勤務
・1992年トルコに移住
・1999年Proz.com に登録
・2005年バベル翻訳大学院にて翻訳修士号を取得
・2008年Proz.com Certified PRO認定会員
・現在トルコに在住し、実務翻訳に従事する傍ら、
趣味の旅行と仕事の両立を目指して奮闘中
- セミナー日程: 2023年4月26日(水) 15時~16時30分(日本時間)
- 申込締切 : 2023年4月20日(木)(日本時間)
◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓
https://www.jta-net.or.jp/seminar_230426.html
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●●翻訳試験のご案内●●
*試験は全てインターネット受験ですからご自宅での受験となります。
●●実施日:2023年3月4日(土)(日本時間)
●●締切:2023年2月28日(火)(日本時間)
◆第58回 JTA公認翻訳専門職資格試験
https://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam.html
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●●実施日:2023年3月11日(土)(日本時間)
●●締切:2023年3月7日(火)(日本時間)
◆《出版翻訳能力検定試験》
1) 第36回 一般教養書(ビジネス関連)翻訳能力検定試験 (英日)
2) 第65回 一般教養書(サイエンス関連)翻訳能力検定試験 (英日)
https://www.jta-net.or.jp/about_publication_exam.html
◆《ビジネス翻訳能力検定試験》
1) 第54回 IR・金融翻訳能力検定試験(英日・日英)
2) 第58回 リーガル翻訳能力検定試験(英日・日英)
https://www.jta-net.or.jp/about_business_exam-2.html
◆第35回 フランス語翻訳能力検定試験フィクション分野 (仏日)
https://www.jta-net.or.jp/about_french_translation_exam.html
◆第35回 ドイツ語翻訳能力検定試験フィクション分野 (独日)
https://www.jta-net.or.jp/about_german_translation_exam.html
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情報提供 : 一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)
●一般社団法人 日本翻訳協会● https://www.jta-net.or.jp/
・設立:1986年10月
・Mission:「翻訳に対する社会の認識を高めること及び翻訳に関する技術及び知識を増進することによって翻訳の水準を高めること並びに翻訳者を支援してその自立を促進することを通じて、世界の文化交流及び産業経済の発展に寄与することを目的とする。」
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