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WEB TPT  2026年1月22日 383号 巻頭言                                                                                                                                                   日本文学の世界的展開は、いま「翻訳の質」を問い直している
バベル ・グループ代 表 堀田都茂樹                                                        

 日本文学が英米市場で厚みをもって読まれ始めている背景には、世界の多極化という大きな潮流があるのだろう。 

 もはや世界は、単一の価値観や物語を求めてはいない。複数の感性、複数の生き方、複数の「正解」を受け入れる段階に入っている。

 翻訳家 鴻巣友季子氏が指摘するように、日本文学はいま、村上春樹一人の成功を超え、「面」として英語圏に受け取られ始めている。これは偶然ではない。日本文学が本来もってきた〈余白〉〈沈黙〉〈内省〉が、多極化した世界の読者の感性と、ようやく深いところで接続し始めた結果だろう。

 ここで重要なのは、翻訳の役割が変わったという事実だ。
かつて翻訳は「文豪を紹介する技術」だった。
しかし今、翻訳は「作家を育て、文脈をつくる編集的行為」へと変貌している。         バベルが長年取り組んできた「翻訳から創訳へ」という思想は、まさにこの変化を先取りしていた。

 創訳とは、原文を裏切ることではない。原文がその文化で果たしていた機能を、別の文化・別の時代で再起動することである。
いま世界が日本文学に求めているのは、正確な再現ではなく、「読まれるための再構成」なのだ。

 これからの翻訳出版経営において問われるのは、
・どの作家を
・どの文脈で
・どの市場に
・どのような物語として届けるのか
という、明確な編集戦略なのだろう。

 バベルの翻訳・創訳戦略は、日本文学を「過去の遺産」としてではなく、「現在進行形の知」として世界に届けるための基盤である。
いま起きている潮目の変化は、その戦略が正しかったことを、証明しつつあるように思う。

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