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JTA News & Topics 」 第189回  

今回は、2024426日に実施しました「日英技術翻訳の勘どころ」セミナー第6(主催:バベルユニバーシティ、後援:一般社団法人 日本翻訳協会)受講者の吉田ひろみさんよりセミナーレポートを投稿いただきましたので掲載をしています。
情報提供:一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)           https://www.jta-net.or.jp/
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          「日英技術翻訳の勘どころ」セミナー 第6

日本人の弱点を克服して Readable な英文を書こう ― 

 

●レポーター :吉田 ひろみ

バベル翻訳専門職大学院在籍中                                    米国ハワイ州在住。国際企業でフルタイム勤務の傍ら、子育てと学業の両立に奔走中。

引き続き、平井講師(有)平井ランゲージ・サービシズ代表取締役社長/技術士(情報工学)、工学修士(米国ペンシルベニア大学)のセミナーへ参加させて頂き、今回で6回目。

ダラダラ長い文を書かない、理路整然と明確に要点を伝える、文を短く切る、これはビジネスの基本と、以前、父から言われたことを思いだしながら講師のお話を伺いました。また、セミナー課題の中で印象的だったフレーズと、日常業務の中で、ほぼ毎日の様に使われているフレーズを比較してみると、改めて興味深い発見がありました。

(例): laid on the table

At this week’s executive meeting the issue was laid on the table. So, we can expect a clear direction will be announced soon.

英)議題を会議にかける

米) 議題を棚上げにする

一方ではポジティブに、もう一方ではネガティブな方向へ逆の意味になる。

ふだん、”up in the air”を耳にする機会が多いのですが、保留にする、延期するという言葉にも様々なフレーズがあり、棚上げにするという表現でtableや shelveを使うところは、日本語表現とピッタリはまっていておもしろいと思いました。

「(計画・提案などが)検討中で、審議中で」という意味

<例>All options are on the table.

すべての選択肢を検討中だ。

table は名詞だけでなく「棚上げする、保留する」「表に入れる」といった動詞としても使われる。

We don’t have enough information, so let’s table this proposal for now.

十分な情報がないので、とりあえずこの提案は保留にしよう。

Postpone(延期する)Postponeは、原因があって意図的に延期する時に使う表現で、主にビジネスシーンや正式な文書などのフォーマルな場面で使用される。

Shelve棚上げする、見送る、延期する

Shelveには「〜を棚に置く」という意味があり、そこから派生して「(物事を)棚上げする」「延期する」という意味でも使われる。

Suspend見合わせる、保留する、延期する、引き延ばすSuspendは本来、何かを「吊るす」という意味で使われる単語だが、そこから派生して「(計画などが)一時中断する、宙に浮く」「保留する」などの意味でも使用される。日本語では「延期する」と訳される場合もあるが、何かの実施や再開が難しい状況で用いることが多い。

ちなみに、似た意味でのPendingは、一時的に中断しているだけで、また再開する可能性がある時に使用される。

Reschedule スケジュールの変更をする。すでに決まっている日程を変更したい場合には、Postponeなどの他に、Rescheduleでも表現できる。

Extend 引き延ばす、延長する。「何かの期間を伸ばす」と言いたい時に使用する。

up in the air(〈計画などが〉未定の、未解決で)

(例)We’re planning on going to Japan, but the details are still up in the air. 日本へ行く予定だけど、詳細はまだ検討中だ。

(例)

Judy was scolded for chatting in the class. The teacher had not given classroom rules beforehand. It was her fault.

欧米では、先生の比率は女性の方が多い為、teacher =herとすることが多い。クラスでおしゃべりしてはいけないことをteacher が前もって言っていなかった為、teacherのfault.

ガイドライン/ルールについて

─ 一般的留意事項 ─

  • ライティングに関するいわゆるガイドライン/ルールは多いが、互いに矛盾することが多々ある。
  • 多くのガイドライン/ルールはそのまま絶対的なものとは見ず、文脈等を考慮して全体を俯瞰し、それらの間の優先順位(適用/不適用)を判断する(いわゆるメタルールを会得する)ことが肝要。 

文の論理的構成に関する諸原則

“1 idea/sentence” の原則: 1 つの文に、異なったアイディア(情報)を詰め込まない

話の中心になるものを主語にする

注1:何が話の中心になっているかは、一般に前後の文脈から判断する必要がある

注2:本項は、文章全体としての読みやすさ(スムーズな論理の流れ)を決める重要な指針の一つである。何を主語にするかは、文章全体の流れの中からとらえる注3: この原則によって、ある程度自動的に能動態/受動態の選択が決まる

文の中に節(主語や動詞の組合せ)が2つ以上ある場合、話の中心になる方または強調したい方を主節にし、それ以外を従属節(または句)にする

一つの文の中でも論理的になるように構成する

・原因/理由-結果等の論理的関係があれば、それを明確にする

論理性に欠ける文の要因分析

・論理の筋 (流れ) 上の、リンク (つなぎ) の欠如/欠落 (論理の飛躍等) (missing link)

・間違った/矛盾のある論理

・対象となる事象/事実の誤認識/理解不足

・不適切な用語/単語の使用

・論理的でない文章構成

・雑音 (無関係情報の混入等)

あいまいな/多義的な言葉を避ける

好ましくない例: 地域/国ごとに意味が異なる言葉を無神経に使う

・米国人は、「限定的用法は常に “that”。 “which” は継続的用法のみ」という教育を受けていることに要注意(米国人のチェッカーや編集者はそれにこだわる人が多い)。ちなみに、Dr. Stephen Pinker (米国人学者)は“which” を限定的用法で使うことは正しいとしつつも、要らぬ摩擦を避けるには米国式も容認する、という立場。

各種忌避事項

(1) 文頭の忌避事項

(a)文を、アラビア数字、ギリシャ文字、記号、略号で始めない

注: インフォーマル/セミフォーマルな記事等ではこの原則が無視されることも多い

(b) 文を、”Especially” で始めない

(2) 懸垂構文/懸垂修飾語 (dangling modifier) を避ける

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●●セミナーのご案内●● 

*ZOOM(オンライン)で受講できます。                           

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●ZOOM オンラインセミナー●

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 「理解するための翻訳と鑑賞するための翻訳」セミナー

   ― 戯曲の翻訳と上演用の台本作成を通じて―

 ロシア語の戯曲(『とても簡単な物語』)を翻訳しそれが上演された。上演に際してできあがった翻訳をもとに読み合わせ、立ち稽古などから参加し、役者や演出家からの疑問や意見を聞きながら翻訳を見直し、上演台本を作成していった。その課程で「原文を理解するための翻訳」と「上演(鑑賞)するための翻訳」の違いを強く感じた。今回は戯曲の翻訳であったが、いわゆる文学作品の翻訳においてもこのことは同様であるように感じられる。日本文学のロシア語への翻訳は基本的に「鑑賞するための翻訳」になっているが、それに対する批判の多くが「原文を理解するための翻訳」の立場からなされていることによる齟齬が多いように感じられる。これは英語への翻訳などでも同様であり、又逆に外国文学の日本語への翻訳においても同様に思われる。今回のセミナーでは、今回仮に「原文を理解するための翻訳」と「上演(鑑賞)するための翻訳」と名付け翻訳の違いをまず考察の対象とし、そして外国の文学作品の翻訳が翻訳された国で文学作品として成立する翻訳になるためにはどのような観点で翻訳することが必要なのかについてアプローチするためのきっかけを示せたらと考えている。

<セミナー目次(内容)>

1.『とても簡単な物語』の翻訳から台本制作にかけての見直しを通じて、

「理解するための翻訳」と「鑑賞するための翻訳」の違いについて。

2.上記の観点から文学作品の翻訳とそれに対する批判を観察した場合、

文学作品の翻訳における「原文を理解する・原文に忠実」ということと、

翻訳先の言語で「鑑賞できる文学作品」になることの相違点。

3.外国の文学作品の翻訳が翻訳された国で文学として成り立つ翻訳になる

というのがどういうことでそのために翻訳(者)に必要なのはどういう

ことなのかについての手がかり。

講師:猪塚 元 (いのづか はじめ)

・上智大学外国語学部ロシア語学科卒業、

同大学大学院言語学研究科 博士前期課程修了 文学修士

・日本語教育能力検定試験 合格

・國學院大學等で講師  大学院では音声学の研究室に所属し10年ほど日本

各地で方言のフィールドワークに従事

大学院終了語、辞書出版社で露和・和露、英和・英英などの辞書の編纂

また情報処理振興事業協会でコンピュータ用日本語辞書のプロジェクトに

従事。

著書

(共著:猪塚恵美子)『日本語の音声入門 新版』2022バベルプレス

(共著:猪塚恵美子)『日本語音声学の仕組み』2003研究社

(共著:井口厚夫他)『Japanese Now(英文)』1993荒竹出版

『キクタン ロシア語 入門編』2014アルク

(共著 原ダリア)『キクタン ロシア語 会話編』2017アルク

(共著 原ダリア)『キクタン ロシア語 初級編』2019アルク

翻訳

マリア・ラド『とても簡単な物語』(戯曲上演のための翻訳)

●セミナー日程:2024年12月6日(金)15時~17時(日本時間)

<途中10分ほどの休憩が入る場合がございます>

●申込締切 : 2024年12月3日(火)(日本時間)

◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓

https://www.jta-net.or.jp/seminar_241206.html

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「翻訳を前提にした日本語表現法」セミナー

― 翻訳前提の日本語表現法(文章読本)にむけて―

多くの文章読本や表現法は日本語のみで読まれることを想定したものであった。それに対し近年は機械(AI)翻訳の発展に応じそれに適した日本語に関心があつまり機械翻訳を見据えた文章表現法が現れている。それらを紹介しながら従来の文章読本や表現法との違いを考察し、翻訳前提の文章表現法(文章)読本作成への導入的な考察を行う。

<セミナー目次(内容)>

1 従来の文章読本、日本語表現法の目的と特徴

2 機械(AI)翻訳に適した日本語の目的と特徴

2 従来の文章読本・日本語表現法との相違点

3 翻訳(AI)前提の日本語文章読本にむけての指針

●講師:猪塚 元 (いのづか はじめ)

・上智大学外国語学部ロシア語学科卒業、

同大学大学院言語学研究科 博士前期課程修了 文学修士

・日本語教育能力検定試験 合格

・國學院大學等で講師  大学院では音声学の研究室に所属し10年ほど日本

各地で方言のフィールドワークに従事

大学院終了語、辞書出版社で露和・和露、英和・英英などの辞書の編纂

また情報処理振興事業協会でコンピュータ用日本語辞書のプロジェクトに

従事。

著書

(共著:猪塚恵美子)『日本語の音声入門 新版』2022バベルプレス

(共著:猪塚恵美子)『日本語音声学の仕組み』2003研究社

(共著:井口厚夫他)『Japanese Now(英文)』1993荒竹出版

『キクタン ロシア語 入門編』2014アルク

(共著 原ダリア)『キクタン ロシア語 会話編』2017アルク

(共著 原ダリア)『キクタン ロシア語 初級編』2019アルク

翻訳

マリア・ラド『とても簡単な物語』(戯曲上演のための翻訳)

●セミナー日程:2025年1月24日(金)15時~17時(日本時間)

<途中10分ほどの休憩が入る場合がございます>

●申込締切 : 2025年1月21日(火)(日本時間)

◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓

https://www.jta-net.or.jp/seminar_250124.html

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●●翻訳試験のご案内●● 

*試験は全てインターネット受験ですからご自宅での受験となります。 

●●実施日:2024127日(土)(日本時間)

●●締切:2024123日(火)(日本時間) 

◆第56 JTA公認翻訳専門職資格試験

https://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam.html

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●●実施日:20241214日(土)(日本時間)

●●締切:20241210日(火)(日本時間) 

◆《出版翻訳能力検定試験》

1)43 一般教養書(ビジネス関連)翻訳能力検定試験(英日)

2)43 一般教養書(サイエンス関連)翻訳能力検定試験(英日)

3)5回〔日英〕出版翻訳能力検定試験(フィクション分野)

https://www.jta-net.or.jp/about_publication_exam.html 

◆《ビジネス翻訳能力検定試験》

1) 6回〔英日〕リーガル翻訳能力検定試験

2) 6回〔英日〕医学・薬学翻訳能力検定試験

https://www.jta-net.or.jp/about_business_exam-2.html 

◆第42 フランス語翻訳能力検定試験 フィクション分野

https://www.jta-net.or.jp/about_french_translation_exam.html 

◆第42 ドイツ語翻訳能力検定試験 フィクション分野

https://www.jta-net.or.jp/about_german_translation_exam.html 

◆第33 Plain Written English能力検定試験

https://www.jta-net.or.jp/about_plain_written_english_exam.html

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情報提供 : 一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)
 
●一般社団法人 日本翻訳協会● https://www.jta-net.or.jp/
・設立:1986年10月
・Mission:「翻訳に対する社会の認識を高めること及び翻訳に関する技術及び知識を増進することによって翻訳の水準を高めること並びに翻訳者を支援してその自立を促進することを通じて、世界の文化交流及び産業経済の発展に寄与することを目的とする。」
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