世界のブックコミュニティをご紹介(3)
2024/7/8
これまでに取り上げたグッドリーズやライブラリーシングなどのソーシャル・ネットワーク・サイトを大型ショッピングモールだとすると、今回ご紹介するのは、ユニークで遊び心満載のセレクトショップのようなサイトです。新たな視点で本の楽しさを再発見させてくれるブックコミュニティをフィーチャーします。
【ブッククロッシングBook Crossing】
「本を愛しているなら、それらを手放してみよう(ニューヨークタイムズ)」、「驚きの、グローバルな社会実験(ブックマガジン)」、「現代版メッセージボトル(サンフランシスコ・クロニクル)」と評され、そのユニークなスタイルが話題のブッククロッシング。
ブッククロッシングは、読み終えた本を“野生に放したり捕獲したりすることで”、本に世界中を旅させ、人と人をつなぐという試みです。つまり、持っている本を友人に手渡したり、公園のベンチに置き去りにしたり、カフェで隣り合わせた人に預けたりして、本に旅をさせるのです。本にはサイトからダウンロードできるBCID(Book Crossing ID)と呼ばれるラベルを貼り、番号をサイトで登録することで、その本が今どこを旅しているのかを追跡できます。2024年7月現在、1,936,691人のブッククロッサーが登録し、14,478,893冊の本が132カ国を旅しています。最も旅した本の旅行回数はなんと601回! 本の所在地が一目でわかる世界地図を眺めているだけでもワクワクします。
最近では、ブッククロッシングのコミュニティがますます活発になり、ユーザー間での本の交換やオンラインイベントが増えています。さらに、専用アプリがリリースされ、より簡単に本の追跡や交換ができるようになりました。これにより、世界中の本好きが一層つながりやすくなっています。
ブッククロッシングは、本を通じて人々をつなぎ、新しい冒険を提供するユニークなプラットフォームとして進化し続けています。
【リッツィLitsy】
2016年にアパレル系の企業によってローンチされたリッツィは、インスタグラムとエックスとグッドリーズを足して3で割ったようなプラットフォームを提供するソーシャルネットワーク。ユーザーは300字以内で、作品紹介、お気に入りのフレーズ紹介、レビューを手軽に投稿できます。画像をアップロードしたり、ハッシュタグをつけたり、「いいね!」をつけたりすることができる、インスタグラムに似た視覚的にアピールするインターフェイスが魅力です。ハッシュタグから直接本を選んだり、その本に関するすべての投稿を見ることができるのも便利な機能。また、読んだ本や読みたい本を「書庫」に追加して、読書リストを作ることも可能です。
リッツィのユニークな特徴のひとつは、ユーザーの活動内容に応じて「Litfluence」スコアが付与され、各ユーザーの影響力が示されること。ゲーム的な要素があり、ユーザーをより積極的にコミュニティに参加させる動機づけに成功しています。
2018年にライブラリーシングが買収したことで、ユーザーはライブラリーシングの書籍データベースにアクセスできるようになり、両サービスを同期できるようになりました。
さらにリッツィには、著者をサポートする専門チームも存在し、ペンギン・ランダムハウスやハーパー・ペレニアルといった出版社はリッツィを利用して、本の宣伝や読者との交流を図っています。
また、最近では新しい機能を導入し、ユーザー体験を向上させています。新機能には、読書チャレンジの参加や、より直感的なインターフェース、パーソナライズされた本の推薦機能などがあります。また、オンラインイベントや著者との交流の機会も増え、ますます多くの読書愛好家が集まるプラットフォームとして注目を集めています。
今田陽子(いまた・ようこ)
BABEL PRESSプロジェクトマネージャー。カナダBC州在住。シャワー中もシャンプーボトルのラベルから目が離せない活字中毒者。