
WEB TPT 2026年9月7日 398号 巻頭言 豊かさの錯覚と「真の先進国」の条件
バベル ・グループ代 表 堀田都茂樹
国家の成熟度を測る指標として、長らく国内総生産(GDP)が絶対視されてきた。しかし、医療費の高騰や治安悪化に伴う警備需要、多額の教育ローン利払いが経済数値を押し上げる現象は、真の繁栄と呼べるだろうか。それは豊かさの拡大ではなく、社会的摩擦や不安を埋め合わせるための「不本意な消費」の膨張に過ぎない。
真に問われるべきは、市民一人ひとりが日々の生活においてどれほどの安心、尊厳、そして公共的信頼を享受できているかである。子どもが一人で登下校でき、医療や教育へのアクセスが人生の破滅を招かず、目に見えない相互信頼によって秩序が保たれる空間。それこそが文明の到達点であり、持続可能な先進国の姿である。経済規模の大小という単一の物差しから脱却し、社会の質と公共インフラの厚みを軸とした「新しい先進国像」の再定義が、今まさに求められている。
























