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第7回 海外の出版業界情報 2024年11月

イタリア出版市場の拡大

今年10月に開催されたフランクフルト・ブックフェアでは、イタリアがゲスト国として迎えられました。イタリアが最初にゲスト国となったのは1988年でしたが、36年を経て、イタリアの出版市場は大きく成長しました。Publishing Perspectiveの記事でその詳細が伝えられており、概要を以下にまとめます。

国内市場の成長

イタリアの国内市場の規模は、1988年から約2倍に拡大しました。1988年は書店やスーパーで年間約5,000万冊の書籍が販売されていましたが、2023年にはオンライン販売を含め、約1億1,200万冊が販売されました。この成長の一因は、メディアに精通した若い読者層による、コミックやロマンスなどのジャンルの人気拡大です。

国際取引件数の増加とデジタル技術の導入

イタリア出版業界は国内市場の成長だけでなく、国際市場での権利取引やビジネス拡大においても成功を収めています。2022年のイタリアの翻訳権の販売件数は7,889件で、調査が始まった2001年から4倍以上に増加しました。この成長を支えるのが、国際的なブックフェアでの積極的な参加や、新しいデジタルツールの導入です。

イタリアはフランクフルト・ブックフェアのほかに、今年の2月には台北、5月にはギリシャでゲスト国を務めるなど、大小の様々なブックフェアに積極的に参加し、存在感を示しています。

また、2020年には「NewItalianBooks.it」というデジタルプラットフォームが新たに導入され、市場における翻訳権の売買を支える新たなツールとして活用されています。

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「NewItalianBooks.it」は、イタリアの百科事典出版社であるTreccani社が2020年に立ち上げたデジタルプラットフォームです。このプロジェクトは、イタリア外務・国際協力省や文化財・文化活動・観光省、さらにイタリア出版社協会(AIE)の協力を得て運営されています。

このプラットフォームは、イタリアの最新書籍に関する詳細情報を網羅しています。各書籍の概要、著者情報、出版社の連絡先などを提供するだけでなく、イタリアおよび欧州で利用可能な翻訳支援制度や助成金情報も掲載しています。これにより、翻訳者や出版社が活用できる貴重なリソースを提供し、国際取引を後押ししています。

イタリアが国際書籍市場で成果を上げている背景には、ヨーロッパ言語としてのイタリア語の優位性もありますが、特にこのデジタルプラットフォームの存在が重要な役割を果たしています。このような取り組みは、日本でもぜひ実現すべきではないでしょうか。

日本の漫画やアニメは、海外での翻訳出版が進み、すでに国際的な成功を収めています。しかし、それ以外のジャンル、例えば文学、児童書、学術書などの分野でも海外市場進出を拡大するためには、デジタルプラットフォームが強力なツールとなるでしょう。このようなプラットフォームにより、翻訳権の取引や海外向けプロモーションがより効率的かつ効果的に行えるようになります。

デジタルプラットフォームを日本で構築するには、出版社やエージェントが一丸となって取り組む必要があります。また、このような取り組みを実現するためには、日本政府や業界団体からのサポートも欠かせません。

「NewItalianBooks.it」の成功事例は、デジタル化が国際市場での競争力を高める可能性を示しています。今こそ、日本の出版業界が一体となり、さらなる成長を目指す時ではないでしょうか。

<ライタープロフィール>

村山有紀(むらやま・ゆき)
IT・ビジネス翻訳歴10年以上。国内外の様々な場所での生活と子育ての
経験をふまえ、自分らしい発信のスタイルを模索中。

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