東アジア・ニュースレター
海外メディアからみた東アジアと日本
第166 回
中国政府が包括的な景気対策を発表した。政策金利や準備預金比率の引き下げ、低迷する不動産市場と株式市場へのテコ入れ策を含む包括的景気刺激策である。だが、内需の振興に必要な財政刺激策に欠けていると批判され、また低迷する経済の再生には、自由な民間経済の活動が不可欠だと指摘されている。
台湾は防衛に不可欠とされるドローン製造で米国と連携しようとしている。このため、最近ドローンやドローン迎撃技術を製造する米国企業と台湾企業が会合を開いた。台湾は米国や同盟国向けドローンのサプライチェーンで主要プレーヤーに成長することを目指し、米国はドローン業界での中国の支配的地位や部品での中国依存の抑止を狙っている。
昨年、韓国企業が対米プロジェクトのコミットメント額で前年に最大だった台湾を上回りトップとなった。背景にバイデン米政権が2022年に成立させた「CHIPSおよび科学法」と「インフレ削減法」の存在がある。韓国プロジェクトの3分の1以上は、自動車やエレクトロニクス分野とされる。
北朝鮮の金総書記が兵器級核物質を生産する核兵器研究所を訪問し、その際の写真からウラン濃縮工場の内部が初めて公開された。金総書記は核兵器の大幅増のために遠心分離機を増やす必要性を強調したという。米大統領選前後に核実験実施の可能性も報じられており、金総書記の行動は米大統領選後を睨んだ核戦略の一環とも考えられる。
東南アジア関係ではマレーシア経済が好調で安定を維持している。中央銀行は通年の成長率が4~5%予測の上限に達し、総合インフレ率とコアインフレ率は予想の範囲内にとどまり、今年は3%を超えないと予想している。エコノミストたちも金融政策の現状維持を見込み、大半が少なくとも2026年までは政策変更はないと予測する。
インドのモディ首相は、増大する経済力を活用して地域における影響力を強化している。同じく地域で存在感を高める中国に対抗する狙いがある。インドが影響力を強めている地域はスリランカ、ブータン、バングラデッシュなどの近隣諸国である。世界の大国を目指すインドは一里塚として地域大国化の道を歩んでいると言える。
主要紙社説・論説欄では、二つのテーマを取り上げた。一つは米連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利下げの決定、二つ目は日本の首相交代に関するメディアの報道と論調である。
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北東アジア
中 国
☆ 人民銀行、大規模景気対策を発表
9月24日、中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁は北京で記者会見し、市中銀行の預金準備率を少なくとも2018年以降で最低水準に引き下げると発表した。主要短期金利の一つである7日物リバースレポ金利の引き下げも明らかにした。両方の引き下げが同日に公表されたのは初めてだと同日付ブルームバーグが報じる。
報道によれば、預金準備率は0.5ポイント引き下げられ、これにより1兆元(約20兆円)の流動性がもたらされる。7日物リバースレポ金利は現行の1.7%から1.5%に引き下げられる。苦境にある国内不動産市場を支えるための措置も発表。最大5兆3,000億ドル(約762兆円)相当に上る既存の住宅ローンの借り入れコスト引き下げや、セカンドハウス購入に関する規制の緩和などが盛り込まれた。証券会社やファンド、保険会社が人民銀行からの流動性を利用して株式を購入できるようスワップファシリティーを設立する。このほか専門の借り換えファシリティーを別途設立し、上場企業や大口株主が株式買い戻し・保有増に充てられるようにする。総裁はさらに、低迷する中国株式市場に少なくとも8,000億元の流動性支援を供給する方針を示し、株式安定化基金の設立を検討していることも明らかにした。
この景気対策に関連して9月25日付フィナンシャル・タイムズは、「中国の景気刺激策は多額だが不十分」と題する社説で、的を絞った財政出動と民間部門の束縛を解くことが次のステップだと以下のように論じる。
火曜日、急遽開催された中国経済当局者数名による共同記者会見では、デフレに陥っている中国経済に自信を取り戻すための一連の景気刺激策が発表された。金利引き下げ、株式市場への資金供給、不動産セクターへの支援など、世界第2位の経済大国である中国にとってコロナ・パンデミック以来の積極的な経済対策となった。投資家はその衝撃と畏怖で興奮した。中国のCSI300株価指数は火曜日に4.3%上昇し、2020年7月以来の最高値を記録した。世界の株価も上昇した。しかし中国と世界経済にとってより重要な問題は、中国が切実に必要としている実質的かつ持続可能な需要喚起をこのパッケージで開始できるかどうかだ。
その尺度からすると中国の最新の経済対策は十分ではない。金融対策から始めると、中国人民銀行は銀行の預金準備率を50ベーシスポイント引き下げ、貸出金利、住宅ローン金利、預金金利の引き下げを発表した。これらの措置は銀行システムの流動性を高め、融資活動を支援する可能性がある。しかし中国の不動産市場の調整による影響が続くなか、企業や家計は依然としてデレバレッジに熱心で、融資需要を大幅に押し上げるにはおそらく貸出金利のより大幅な引き下げが必要になるだろう。特にインフレ率の低下により実質金利が高止まりしているためだ。
次に、価格が下落し販売が低迷している住宅市場を活性化させるため、当局はセカンドハウスの頭金比率を引き下げた。また、国有企業が不動産デベロッパーから売れ残りの在庫を買い取る際の融資条件を改善するとしている。いずれも既存の政策を少しずつ改善するもので、これまでのところ販売促進には限定的な成果しか上げていない。中国の膨大な売れ残り住宅在庫を減らすことは経済を活性化させるために極めて重要だが、エコノミストたちはもっと多額の補助金や債務再編の努力が必要だと考えている。
最後に、株式市場の再生のためにブローカー、保険会社、ファンドの株式購入を支援する5,000億人民元(710億ドル)の基金を設立すると発表した。また人民銀行は企業の自社株買いを支援する資金も提供する。市場は好意的な反応を示したが、この措置は根本的な問題を解決するための一時的な猶予に過ぎない。中国の株式パフォーマンスと投資家心理は、習近平によるハイテク企業や富の創造者に対する取り締まりによって構造的に弱まっている。
結局のところ、火曜日の景気刺激策は中国経済の現実的な課題に対処できていないということだ。内需は高い予防的貯蓄率と民間部門に対する信頼感の低さに悩まされている。輸出主導の成長を望む中国政府の思惑は、米国との貿易戦争激化の圧力にもさらされている。今回の景気刺激策はこうした問題に的を絞ったものではなく、中国政府の年間経済成長率目標である5%を達成するための小手先の努力に過ぎないだろう。中国に必要なのは需要を高め、デフレ圧力を打ち破るための的を絞った財政刺激策である。家計、特に貧困層には後押しが必要だ。つまり、貯蓄を促す経済的不安を和らげるために社会保障や医療への支援を引き上げることだ。売れ残った住宅在庫の買い取りや企業投資へのインセンティブも助けになるだろう。そして、中国の投資家や企業家のアニマルスピリッツを解き放つには、政策の安定と規制緩和が必要だ。このためには中国政府が大きな支出への躊躇と民間部門をコントロールしたいという欲望を克服する必要がある。
今回の景気刺激策は、少なくとも正しい方向への一歩である。中国当局が経済を緊急に再活性化させる必要性に目覚めていることの表れである。しかし経済の低迷を好転させるには、資金投入を増やし、焦点を絞った政策対応を行い、投資家や消費者の信頼を共に傷つけている暴言に終止符を打つ必要がある。
以上のように、社説は今回の景気刺激策をコロナ・パンデミック以来の積極的な経済対策と評価しつつも、中国経済の現実的な課題に対処できていないと批判する。すなわち、このパッケージでは中国が切実に必要としている実質的かつ持続可能な需要喚起は開始できず、融資需要を大幅に押し上げるにはインフレ率低下により実質金利が高止まりしている現状では、貸出金利のもっと大幅な引き下げが必要だと主張する。住宅市場の活性化策もセカンドハウスの頭金比率の引き下げや、国有企業が不動産デベロッパーから売れ残りの在庫を買い取る際の融資条件の改善など既存政策の小幅調整に止まっているとし、もっと多額の補助金や債務再編の努力が必要だと指摘する。株式市場の再生策もブローカー、保険会社、ファンドの株式購入を支援する基金の設立や人民銀行による自社株買い支援などの措置を打ち出したが、根本的な問題を解決するための一時的な猶予に過ぎないと批判する。
社説は、結局今回の景気対策は政府の年間経済成長率目標5%を達成するための小手先の努力に過ぎないと切って捨て、需要を高めるために的を絞った財政刺激策が不可欠だと提言する。貯蓄を誘導する経済的不安を和らげるために社会保障や医療への支援を強化し、中国の投資家や企業家のアニマルスピリッツを解き放つために政策の安定と規制緩和が必要だと強調する。特に政府に対する注目すべき提言は、民間部門をコントロールしたいという欲望と、投資家や消費者の信頼を傷つける暴言の抑制を求める提案であろう。
同じく9月25日付ウォ-ル・ストリート・ジャーナルも「中国、追加金融緩和より必要なもの」と題する社説で、民間経済の促進が必要だと主張する。社説は、今回の景気対策によって、不動産業界を悩ませている債務・デフレサイクルを断ち切れるかどうかが問題だと指摘し、以下のように論じる。
不動産分野はかつて、中国経済の3分の1を占めていた。習氏が2020年に不動産バブルをしぼませる取り組みを始めて以来、大規模なデレバレッジ(過剰債務の解消)が進んでおり、その渦は巻き込む範囲を拡大している。そこにまず吸い込まれたのは不動産開発業者であり、倒産あるいは倒産寸前の業者の数が増えている。一方、家計もその影響から逃れられなくなっている。中国政府は不動産価格の下落に歯止めをかけるべく、今年5月にも刺激策を打ち出したが、価格は下がり続けている。このことは家計の心理に染みついてしまった。人民銀行の調査で次の四半期に不動産価格が上昇すると思うと答えた都市部の住民は、わずか11% (調査開始以降で最低)にとどまり、23% (調査開始以降で最高)は価格がさらに下落すると思うと答えた。消費者は依然として悲観的で、資本逃避は長期的な懸念材料になっている。
24日、中国政府は不動産市場の調整が続く中で、ある程度の経済成長の維持を可能にする生産的な資本の使い道を提供することが解決法の一つだと認識したという点で正しい方向を向いていた。当局者が株式市場への支援を通じてやろうとしていたことは、これなのかもしれない。しかし、金融工学分野への補助金は、不動産業界を悩ませている債務・デフレサイクルを断ち切れるかどうかが問題だと中国経済に必要な投資機会を創出するものではない。そうした機会を創出する唯一の道は、民間の技術開発者や起業家の自由な活動を促進することだ。
しかし習氏はそれを認めようとしない。ハイテクに支えられたプラットフォーム、配車アプリ、オンライン教育など数え切れないほどの民間経済分野への習氏の長期にわたる攻撃は容易に忘れ去られないだろう。経済改革不在の下での不動産デフレという日本の経験は、不幸な出来事だった。小泉純一郎、安倍晋三両氏の政権下で民間投資の自由化が進められた後でようやく、日本経済は(限定的ながら)成長軌道に戻った。中国政府が日本のこの経験から学ばないならば、習氏が一連の金融緩和を進めても中国経済の低迷は続くだろう。
以上のように、ウォ-ル・ストリート・ジャーナル社説は、中国経済の復興には不動産業界を悩ませている債務・デフレサイクルを断ち切れることが問題だと述べ、それには経済が必要とする投資機会の創出が求められ、そうした機会を創出する唯一の道は、民間の技術開発者や起業家の自由な活動を促進することだと主張する。これに対して習国家主席はそれを認めようとせず、長期にわたってハイテクに支えられた民間経済分野を攻撃してきたと指摘。同じく経済改革不在の下での不動産デフレを体験してきた日本が小泉、安倍両政権の下で民間投資の自由化が進められた後で経済が限定的ながら成長軌道に戻ったと述べ、こうした日本の経験から学ぶべきだと提言する。
以上、今回の景気対策は政策金利や準備預金比率の引き下げ、低迷する不動産市場と株式市場のテコ入れ策を含む包括的景気刺激策となった。だが、内需の振興に必要な財政刺激策に欠けていると批判され、また低迷する経済の再生には、民間経済の自由な活動が不可欠だと指摘されている。財政刺激策については、政府、人民銀行がそうした方向に動く可能性があるとみられているが、民間経済の活性化は習体制のこれまでの路線と大きくかけ離れており、実現は難しいと思われるも今後の習政権の動きを注視したい。
台 湾
☆ ドローン技術で台湾を支援する米政府
米政府関係者は台湾がドローンのサプライチェーンで今より大きな役割を果たすことを期待していると、9月25日付ニューヨーク・タイムズが報じる。記事によれば、米国と台湾の企業や政府関係者は、ドローンの大量生産で優位に立つ中国への懸念に駆り立てられ、台湾防衛に不可欠となりうる空、海でのドローン製造で手を組もうとしている。水曜日に終了する台湾での数日間の話し合いは、ほとんど人目に触れることなく行われ、ドローンやドローン迎撃技術を製造する20数社の米国企業と、米国の知識や顧客を求める台湾企業が一堂に会した。米商務省国際貿易局が主催したこの貿易ミッションは、中国が商業用ドローンの世界最大のメーカーであることによって、米国と台湾両政府がいかに揺さぶられているかを示す最新の兆候であった。軍事用ドローンは、台湾を領土と主張する中国による侵略や攻撃から台湾の防衛力を低下させる可能性を秘めている。台湾はそのリスクを回避するため、軍用ドローンの数を増やす計画だ。
台湾政府関係者は、台湾が先進的な半導体の生産で成功したように米国や同盟国向けのドローンのサプライチェーンにおいて、台湾がより大きなプレーヤーになることを望んでいる。米国政府関係者は、台湾の製造業の強みを活用することで中国製のドローンや部品への米国の依存度を下げたいと考えている。両陣営は、ウクライナやその他の紛争地帯の戦場から得た教訓を活かしている。先週、台湾の顧立雄国防相は台北で記者団に対し、米国のドローン代表団について「彼らは一定の能力を持っており、我々の能力を知るために来ている」と語った。「我々は国際的なサプライチェーンの一部になることができる」。台湾の報道によれば、米国代表団には大手軍事機器サプライヤーであるノースロップ・グラマン社の代表のほか、海底ドローン、ドローン探知機、無人航空機(U.A.V.)のその他の技術革新を提供する企業の代表が含まれていた。「米国と台湾の産業協力は、あらゆる技術のサプライチェーン・セキュリティーを発展させる上で極めて重要である」と、米国在台湾協会(台北にある米政府の事実上の大使館)のプレスオフィスは声明で述べた。しかし、米国やその同盟国とともにドローンの設計・製造においてより大きな役割を果たそうという台湾の野望の前に一部ハードルがあり、これによって計画が遅々として進まない可能性がある。米国は、国防請負業者を通じて軍事用ドローンのほとんどを製造している。
台湾の小規模な製造業者は、政府の支援がなければ生産量を増やすのに十分な資金を得ることが難しくなる可能性がある。また嘉義市出身の議員である陳冠廷氏によれば、米軍のドローン用の部品を供給するためには厳しいセキュリティチェックを通過しなければならない。米国の政策立案者たちは、ドローン部品を台湾に依存しすぎることを警戒しているのかもしれない。産業機密が中国に漏れることを心配する向きもある。さらに台湾が中国の封鎖や攻撃を受けた場合、米国のドローンメーカーは重要な部品の流れを失う可能性がある。国務省は、アメリカの防衛請負業者であるエアロビロンメント社に最大720機のスイッチブレード・ドローンを台湾に販売する許可を与えている。ワシントンの研究機関、民主主義防衛財団のクレイグ・シングルトン上級研究員は、「安全保障と知的財産のリスクは現実的だが、適切な保護措置を講じれば対処可能だ」と述べる。「台湾との協力は極めて重要だが、より安全な場所への生産シフトを含む、より広範な戦略の一部である必要がある。そうすることで、米国は地政学的リスクに過度にさらされることなく、台湾の能力から利益を得ることができる」。
それでも、中国の軍事技術に対する共通の懸念は、米台両国の企業をさらなる協力関係へと向かわせ続けるだろう。台湾の国防副大臣である徐衍璞(シュー・イェンプー)氏は、月曜日にフィラデルフィアで開催された米台防衛産業会議で、「台湾に対して軽率に戦争を仕掛けるな、という正しいメッセージを中国共産党に送ることができる」と語った。台湾国防省によると、中国の軍用ドローンは台湾近辺の空でますますよく見かけるようになり、台湾本島を旋回する飛行も行っているという。中国は、世界市場の70%を握っているという中国のドローン生産会社DJIを筆頭に、米国や世界の多くの地域で商業用ドローンの販売を独占している。台湾は中国との政治的関係が冷え込んでいるが、DJIのドローンは中国内と同様に台湾の消費者に人気がある。「DJIのドローンは、羽の生えたファーウェイと考えるのが一番だと思う」とシングルトン氏は最近のプレゼンテーションで述べ、DJIを中国の巨大通信会社になぞらえた。力ずくの経済によって、中国は現在の市場を支配する自国のチャンピオンを作り上げた。
このように中国が市場を支配しているため、台湾のドローン企業は十分な規模に成長し、軍事受注に応えるほど強力になることが難しくなっている。それを克服するうえで商業用と防衛用の両方で米国からの受注を増やすことが役立つだろう。「我々は台湾のU.A.V.産業を支援することの重要性を理解しており、パートナーシップは双方に利益をもたらす形で構築できると信じている」と、貿易使節団の一員であるエアロビロメント社のマーケティング・コミュニケーション担当副社長、ルネ・カルボン・バードルフ氏は声明で述べた。6月、国務省は台湾に最大720機のエアロビロンメント社製スイッチブレード・ドローンの販売許可を出した。昨年、台湾側では国防省が今後数年間で7,700機のドローンを取得すると発表している。
以上のように、米国と台湾は台湾防衛に不可欠とされるドローン製造で手を組もうとしている。このため、ドローンやドローン迎撃技術を製造する米国企業と米国の知識や顧客を求める台湾企業がひそかに会合を開いたと記事は報じる。台湾としては先進的な半導体での成功体験を踏まえて米国や同盟国向けドローンのサプライチェーンで主要プレーヤーに成長することを目指し、米国はドローン業界における中国の支配的地位をくつがえし、部品などでの中国依存を抑えたいと目論んでいる。ただし、これにはいくつかの問題点が指摘されている。例えば、ドローン産業から中国の部品サプライヤーをどこまで排除できるか、ドローン部品を台湾に依存しすぎることや産業機密の中国への漏洩などに対する米側の警戒感、中国が台湾を攻撃し封鎖した場合の部品サプライチェーンの停止懸念などである。米台間の連携体制はそう簡単には進まない可能性があると言えよう。
韓 国
☆ 急増する対米投資
9月18日付フィナンシャル・タイムズは「中国との緊張が高まるなか、韓国が米国のトップ投資家に浮上」と題する記事で、韓国の対米投資が急増していると以下のように報じる。
バイデン政権がサプライチェーンから中国を切り捨てようとし、先端技術メーカーに対して有利な補助金を出していることから、韓国企業が米国に記録的な額の資本を投じている。本紙が分析した国連貿易開発会議のデータによると、韓国企業による昨年の米国プロジェクトへのコミットメントは合計215億ドルに達し、他のどの国よりも多く、2022年に最大の投資家だった台湾を上回った。昨年は、韓国が少なくともこの10年間で初めて米国におけるプロジェクトコミットメントでトップの座を確保し、中国の地位が低下するなかで画期的な年となった。
国連データによると、2014年の対米投資額は中国がトップだったが、昨年は3分の1に減少し、8位となった。昨年の韓国からのコミットメントは前年より11%減少したが、2023年の韓国企業によるプロジェクトは合計90件で過去最高となり、前年比50%増となった。「米国はもう中国からの調達を望んでいない。韓国の投資急増は、バイデン政権が2022年にCHIPSおよび科学法(注:バイデン政権は同法を通じて、今後5年間で連邦政府機関の基礎研究費に約2,000億ドル、国内の半導体製造能力の強化に約527億ドルを充てることを決定)と「インフレ削減法」を成立させたことを受けたものである。これにより米政府は、半導体やソーラーパネル、電気自動車などのクリーン・テクノロジーの米国での製造を急発進させ、主要生産国である中国への依存を減らすために数千億ドル規模の税額控除、融資、補助金を提供するものである。
韓国の自動車サプライヤーであるサムキーの最高経営責任者、キム・チファンは昨年FT紙にサムキーは1億2,800万ドルを投資し、アラバマ州タスキギーに自動車部品を製造する初の米国工場を開設したと語った。本紙の子会社であるfDi Marketsが昨年追跡した米国での韓国プロジェクト発表の3分の1以上は、自動車やエレクトロニクス分野だった。米国税務当局は、北米での組み立てを必要とする電気自動車に対し、7,500ドルの消費者税額控除を提供している。
米中間の緊張はまた、韓国企業に対して米国での事業拡大を追求するよう中国での事業を制限する圧力をかけている。例えば、チップス法ではその資金提供のための「国家安全保障のガードレール」の概要が示されており、受給者による中国での製造能力拡大を防ぎ、中国やその他の「懸念される外国事業体」での技術供与活動を制限している。昨年は韓国の対外投資の半分以上が米国に流れ、2019年の18%から上昇した。一方、国連貿易開発会議(Unctad)によると、中国が昨年受け取った韓国投資は1%未満で、2019年の11%から減少した。fDi Marketsによると、昨年発表された最大の案件には現代自動車とLGエナジー・ソリューションによるジョージア州の電気自動車工場に供給するバッテリーセル製造プロジェクト(投資額は43億ドルで同州史上最大)や、サムスンSDIとGMによるインディアナ州セントジョセフ郡での同様の35億ドルの投資案件がある。セントジョセフ郡の経済開発ディレクターであるビル・シャリオール氏は、「これまで計画してきたことだ」と語る。インディアナ州当局は過去5年間に4回、投資家勧誘のために韓国を訪問しており、同州はソウルからの投資で第2位にランクされている。インディアナ州は、韓国のプロジェクトによる人口動態の変化にも対応している。セントジョセフ郡から90分離れたココモにもサムスンSDIの工場があり、市は1,000人以上の韓国人駐在員と6軒の韓国料理レストランの新設を見込んでいる。
ただし、韓国メーカーの投資も厳しいマクロ経済状況や輸入価格の下落、電気自動車需要の鈍化により一部遅れており、米国の貿易保護の強化を求める声が高まっている。7月、LGエナジー・ソリューションは「市場の状況」を理由にアリゾナ州にある23億ドルの蓄電池工場を一時停止した。サムキー社は電気自動車の導入が予想より遅れているため電気自動車ラインの増設を1~2年延期している。「ジョージア州にある韓国の太陽電池部品メーカーQセルズのような企業は、毎月数十億ドルの損失を出している。Qセルズの公共政策・政府関係責任者であるハル・コノリー氏は、5月に行われた商務省と米国国際貿易委員会の公聴会で、「このセクター全体の投資は、破綻の危機に瀕している」と述べた。「貿易面での救済がなければ、状況は悪化するばかりだ」と、コノリー氏。同社は、東南アジアでのダンピング疑惑を理由に中国の太陽電池メーカーに追加関税を課すよう他の米国太陽電池メーカー数社とともに申し立てている。
以上のように、昨年対米プロジェクトのコミットメント額で韓国企業が前年に最大だった台湾を上回り、トップとなった。これはバイデン米政権が2022年に「CHIPSおよび科学法」と「インフレ削減法」を成立させたことを受けた結果とされる。米国での韓国プロジェクト発表の3分の1以上は、自動車やエレクトロニクス分野だったとされる。ただし、米貿易保護の受給者である韓国企業は、中国での製造能力拡大や中国やその他の「懸念される外国事業体」での技術供与活動で制限を受けており、さらに米市場での電気自動車の需要減や中国製品との価格競争などで苦戦しているとみられ、今後の動向を注視していく必要があると思われる。
北 朝 鮮
☆ ウラン濃縮工場の写真を初公開
金正恩総書記が核兵器備蓄の「指数関数的な」増加を要求したと9月13日付フィナンシャル・タイムズが「北朝鮮、ウラン濃縮工場の写真を初公開」と題する記事で報じる。記事は、北朝鮮は金総書記が核兵器開発の拡大を呼びかけるなか、ウラン濃縮施設の写真を初めて公開し、その加速する兵器開発計画を垣間見る貴重な機会となったと概略以下のように伝える。
国営メディアは、金曜日に金総書記が兵器級核物質の生産拠点である核兵器研究所を訪問したと伝えた。朝鮮中央通信(KCNA)が公開した写真には、ウラン濃縮に使われる金属製の遠心分離機の列を見学し、北朝鮮の科学者から説明を受ける金総書記の姿が写っている。KCNAによると、金総書記は原子力分野の技術力に大きな満足感を示し、「自衛のための核兵器を飛躍的に増やすために遠心分離機の数をさらに増やす必要性を強調した」という。また金委員長は防衛力と先制攻撃能力を強化するよう求め、「米帝国主義主導の従属勢力による反北朝鮮と反核の脅威はより露骨になり、レッドラインを超えた」と警告した。金正恩は以前、北朝鮮の核ドクトリンを改定し、幅広いシナリオでの先制攻撃を可能にした。報道は金正恩がいつこの施設を視察したのか、どこにあるのかは明らかにしていない。
KCNAによれば、金正恩は軍事訓練基地も訪れ、多連装ロケット発射システムを視察した。韓国の統一省は金曜日に平壌のウラン濃縮施設の公開を非難し、北朝鮮の「違法な」核兵器開発計画は国際平和に深刻な脅威をもたらすと述べた。北朝鮮の核兵器開発計画は、数々の国連安全保障理事会決議によって禁止されているが、北朝鮮は寧辺(ヨンビョン)の主要施設以外にもいくつかのウラン濃縮施設を持っていると考えられている。2010年11月、政権は米国の核物理学者ジークフリード・ヘッカー(ロスアラモス核研究所の元所長)ら科学者を招き、寧辺の遠心分離機を見学させた。ソウルに本部を置く韓国国防分析院は昨年、北朝鮮が保有する核弾頭の数を80~90発と推定しており、金正恩は核兵器の保有数を最大300発まで増やすことを目標としていた。
韓国当局は、北朝鮮が11月の米大統領選前後に核実験を行う可能性があると警告する。2017年9月に北朝鮮が行った最後の核実験(6回目)は、推定核分裂収量が120~125キロトンと、これまでで最も強力なものだった。「国際的な警告にもかかわらず、北朝鮮が再び核実験に突き進めば、前例のないレベルの抑止力と制裁に直面するだろう」と統一省のク・ビョンサム報道官は警告する。専門家によれば、北朝鮮は核兵器兵器を拡大するためプルトニウム濃縮からウラン濃縮に重点を移しているという。「西江大学教授で元政府顧問のキム・ジェチュン氏は、「プルトニウムの生産に制約があり、北朝鮮は核弾頭の生産規模を拡大するため効率の良いウラン濃縮に頼っている。このような軍事力の誇示によって、北朝鮮は米国の選挙を控えて知名度を上げ、核交渉で優位に立ちたいのだ」。
以上のように、金総書記が兵器級核物質の生産拠点である核兵器研究所を訪問し、その際に撮影された写真にウラン濃縮工場の内部が初めて公開された。金総書記は「原子力分野の技術力」に「大きな満足感」を示し、自衛のための核兵器を飛躍的に増やすために遠心分離機の数をさらに増やす必要性を強調したという。北朝鮮が保有する核弾頭の数について韓国当局は昨年、80~90発と推定しており、金正恩は核兵器の保有数を最大300発まで増やすことを目標としているとされる。金総書記によるウラン濃縮工場訪問と内部写真の公開は、そうした金総書記の計画と野望を世界に誇示する狙いがあると思われる。さらに記事は、北朝鮮は米大統領選前後に核実験を行う可能性があるとの見方も報じる。その目的は核保有国としての知名度を上げ、今後の核交渉で優位に立つためだと指摘する。一連の金総書記の行動は結局、米大統領選後を睨んだ核戦略の一環とも考えられる。
東南アジアほか
マレーシア
☆ 好調を維持する経済
マレーシアは安定した経済成長と穏やかなインフレを背景とする好調な経済を維持している。9月5日、このためマレーシア中央銀行は市場の予想通り政策金利を3%に据え置いた。報道によれば、同中央銀行は経済成長とインフレについて明るい見通しを示し、ロイターが調査した30人のエコノミストも全員が現状維持を見込んでいた。また大半が少なくとも2026年までは政策変更はないと予測している。
中央銀行はまた、金融政策の姿勢は引き続き経済を支援し、インフレと成長見通しに関する現在の評価と整合的との認識を示し、声明で「25年に向けてインフレと成長の軌道を評価するために現在の動向を引き続き注視している」と述べた。24年上半期の成長が予想を上回ったことを受けて、通年の成長率が4~5%の予測の上限に達するとしている。最新の指標は、堅調な国内支出と輸出の増加による経済活動の持続的な力強さを示していると分析している。
総合インフレ率とコアインフレ率は予想の範囲内にとどまり、今年は3%を超えないとした。マレーシア政府は6月に軽油への補助金を一部廃止し、さらなる改革を進めようとしている。中央銀行はインフレ見通しについて、政府の政策の影響を受けると指摘した。「インフレ上昇リスクは、国内の補助金や価格統制に関する政策がより広範な価格動向にどの程度波及するかや、世界の商品(コモディティー)価格、金融市場の動向に左右される」との見方を示した。キャピタル・エコノミクスは、上半期の経済成長は強かったが補助金廃止でインフレに対する懸念が高まると指摘し、来年末まで政策金利が据え置かれるとの見方を示している。
通貨マレーシアリンギは中央銀行の発表後、ほぼ変わらなかった。リンギは2月に記録した26年ぶり安値から急ピッチで回復し、対ドルで今年6%値上がりしている。中央銀行は米国など主要国の金利低下見通しが背景だとの認識を示した。なお9月30日付ロイターによれば、週末の中国の追加景気刺激策が市場心理を押し上げてアジア新興国通貨が全般的に堅調となり、そのなかでマレーシアリンギは対ドルで0.6%高となり、その上げが目立っているという。リンギは堅調な外国人投資家の資金流入や経済成長、政治的安定など多くの要因に牽引され、四半期ベースで約12.6%上昇し、アジア新興国通貨の中で年初から上げが目立っている。因みにタイバーツ、台湾ドル、韓国ウォンは0.2%~0.4%の上昇でシンガポールドルとフィリピンペソは横ばいだった。
以上のように、マレーシア経済は好調で安定を維持している。中央銀行は通年の成長率が4~5%の予測の上限に達し、総合インフレ率とコアインフレ率は予想の範囲内にとどまり、今年は3%を超えないと予想している。これに伴いエコノミストたちも金融政策の現状維持を見込み、大半が少なくとも2026年までは政策変更はないと予測している。通貨リンギも2月の安値から急ピッチで回復、対ドルで今年6%値上がりしている。マレーシア経済には今のところ死角が見当たらないが、政府は6月に軽油への補助金を一部廃止し、さらなる改革を進めようとしている。この補助金廃止でインフレに対する懸念が高まると指摘されており、注視していく必要がありそうだ。
インド
☆ 経済力をテコに地域の影響力を高めるモディ首相
ナレンドラ・モディ首相は、中国の影響力に対抗するため急成長する経済力を活用し、近隣諸国に資金援助を提供していると、10月10日付ニューヨーク・タイムズが伝える。記事によれば、インドの近隣諸国が政治的混乱に陥るなか、モディ首相は中国と影響力を競うために比較的新しい武器、つまり急成長する経済がもたらす資金力を利用している。例えば、スリランカが2022年に経済的大惨事に見舞われた際、インドは40億ドル以上の援助に踏み切った。中国と国境紛争を抱える小さな隣国ブータンでは、モディ氏はインドの援助を倍増させ、5年間で10億ドルを拠出した。バングラデシュでは、8月に追放されるまでインドの利益を推進していた独裁的な指導者を支援するためインフラ整備プロジェクトに数十億ドルを提供した。
最新の受益者はモルディブである。モルディブのモハメド・ムイズ新大統領は昨年、「インド・アウト」を掲げて選挙戦を展開し、モディ氏に同国に駐留する少規模のインド軍部隊を撤退させるよう要求した。しかしムイズ氏は月曜日、そのことは忘れ去られたかのように国賓晩餐会、夫人とのタージ・マハルでの記念撮影、そして極度の財政難に陥っている同国政府を救済するための7億5,000万ドルを超えるインドからの援助などのためにューデリーを訪問したのである。「インドはモルディブの社会経済とインフラ開発における重要なパートナーであり、モルディブが困窮しているときに味方になった」と語り、ムイズ氏はモディ氏の隣に立った。
世界銀行によれば、中国や他の近隣諸国がコロナ大流行前の成長レベルに戻ろうと苦闘しているなか、インド経済の成長率は約7%に達している。政界やビジネス界のリーダーたちは、官僚主義への不満はあるとしてもまだ潜在的経済力を十分に発揮していないインドを取引や貿易協定のためのエキサイティングなパートナーとしてみるようになっている。インドは国内で雇用を生み出すのに苦闘しており、貧困層の多くは経済成長の恩恵をほとんど受けていない。しかし、中国が経済的な苦境に追い込まれ、地域での大盤振る舞いを縮小せざるを得なくなった一方で、インド政府は外交の歯車に油を差すために必要な資金を手にしている。
この新たな武器はインドにとって使い勝手がよいものだ。地域における中国の積極的な攻勢に直面し、インドは伝統的な影響力を失い度重なる外交的後退に直面してきた。この1年間で、少なくとも3カ国でインドに友好的な指導者が落選したり、抗議デモで倒れたりした。だが、インドの元外務大臣ニルパマ・メノン・ラオ女史は「インドは現在、近隣諸国でより大きな力を行使できるようになり、経済的影響力も以前よりはるかに強くなっているのは疑いない。しかも、近隣諸国との政治的利害関係は変わっていないと思われる」と語る。さらにラオ女史は、伝統的に反インドのレッテルを貼られたり、反インドのお定まりの見方をされたりしている地域の指導者たちでさえ、インド政府と協力するしかないのだと言う。それは目先の経済的な援助だけでなく、長期的にインドと協調するためであり、インドの経済的潜在力が将来的な利益をもたらしてくれることを期待しているのだ。地域の指導者たちは、「経済的な影響力の増大と、インドが世界の舞台で占めている地位を極めて真剣に理解している」とラオ女史は語る。またインドもかつてよりは現実的なアプローチをとるようになり、隣国との「駆け引き」や「外交劇」を避けるようになったと彼女は言う。
そうしたなか今年、インドと2,000マイルの国境を接する人口1億7,000万人の国、バングラデシュから厳しい教訓がもたらされた。インドは、バングラデシュの独裁色を強めるシェイク・ハシナ首相を財政的にも外交的にも断固として庇護しているとみられていた。ハシナ氏が批評家や反対派を迫害するなか、インドはその外交的影響力を行使し、欧米の批判者たちに手を引くよう促した。この間、バングラデシュでは彼女に対する怒りがインドに対する怒りに変わり始めた。治安部隊が数百人のデモ参加者を殺害した後に急増した大規模な抗議行動によってハシナ氏は8月に政権を追われ、インドに逃亡した。しかし、インドでの彼女の存在はジレンマを生んだ。インドは友人の側に立つことを示したい一方で、ハシナ氏を匿うことはインドがバングラデシュの新たな政治勢力との地歩を回復しようとする際に問題を引き起こすからだ。
しかし、シカゴ大学とカーネギー国際平和財団の政治学者で南アジアを専門に研究しているポール・スタニランドは、かつてよりも「これは平凡な」課題だとし、インドの経済力の増大がその重要な理由だと述べた。「インドの近隣諸国は確かにインドからの自治や、中国や他の諸国と関わる選択肢を持つことに関心を持っている。しかし、インドは巨大な経済的・政治的存在であり、すべての政府は少なくともビジネス上の関係を持たなければならない」と語る。彼は、インドの地域関係のいくつかは、「インド政府の抑制的で尊重的な姿勢と協力のための具体的な努力」によって特徴づけられていると付け加えた。「このようなアプローチは、近隣諸国におけるナショナリストの反発を抑える一方で、協力するインセンティブを生む」とラオ氏は付け加える。
インドとスリランカの関係はその一例だ。2009年に内戦が終結したスリランカで中国は巨大なプレゼンスを確立し、ポピュリストの大統領による派手な開発プロジェクトに資金を提供した。コロンボの政府関係者は、インドに好意的な者でさえ、インド政府の支援活動は中国に比べて遅々として進まず、官僚的だと不満を漏らした。2年前のスリランカの経済破綻は、不始末と無謀な出費が主な原因だったがその見方は変わった。中国は目立った存在感を示さず、スリランカの債務条件の再交渉をためらっていた。インドはこの機会をとらえ、40億ドルものさまざまな支援に乗り出した。
9月の大統領選の数カ月前、反インド的な過去を持つ小さな左翼政党の党首アヌラ・クマラ・ディサナヤケを招いた。彼は国民の怒りに乗って大統領に就任するのに最適な立場にあると思われ、双方は明らかにその歴史を克服したいと考えていた。先月、ディサナイケ氏が快勝したとき、コロンボにいたインドのトップ外交官は数時間以内に彼を祝福した。ラオ女史は、インドの近隣諸国との伝統的な結びつきは、増大する資金力と相まって中国との競争において大いに役立つだろうと述べた。「中国が経済力を大いに振るい続けることは間違いない。しかし中国は、隣国が直面する危機的状況に対して、インドのように真っ先に対応する力を持っていない。これは非常に重要な要素だと思う」。
以上のように、モディ首相は増大する経済力を活用して地域における影響力を強化している。狙いは、同じく地域で存在感を高める中国に対抗することにある。インドが経済力をテコにして影響力を強めている地域はスリランカ、ブータン、バングラデッシュなどいずれも近隣諸国である。最近では、駐留するインド軍の撤退を求めていたモルディブがある。同国は財政難にあえいでインドに支援を求めている。こうしたインドの動きは、中国が経済的な苦境に追い込まれ始め、また近隣諸国もインドの経済的潜在力が将来的な利益をもたらすとの期待を深めていることから、拍車がかかっているとみられる。そうした中で、インド政府は地域諸国に対して抑制的で尊重的、かつ協力的な姿勢で接していると報じられている。世界の大国を目指すインドは、その一里塚として地域大国化の道を歩んでいると言える。今後の動きを注視したい。
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主要紙の社説・論説から
その1. 大幅利下げに踏み切った米連邦準備制度理事会(FRB)
9月18日、FRBは連邦公開市場委員会(FOMC)で短期金利の誘導目標を0.5ポイント引き下げ、4.75〜5%とすることを決めた。0.5ポイント引き下げは大幅かつ異例であり、賛否両論の議論を引き起こす。まずFRB決定を一つの賭けとして批判する論調から紹介する。
9月19日付ウォ-ル・ストリート・ジャーナルは「労働市場重視にかじを切ったFRB」と題する社説で、FRBが雇用重視に踏み切ったと指摘すると共に問題はジェローム・パウエルFRB議長の発言や行動を信用すべきかどうかだと述べ、次のように論じる。
パウエル氏は、記者会見で米経済は全般に良好だと語ったが、今回のような積極的な金融緩和は彼が自身の発言内容よりも強い懸念を抱いていることを示唆している。パウエル氏は今回のFRBの対応について、米経済がここ数年のインフレショックから回復してきたことに伴う金融政策の「再調整(recalibrating)」に過ぎないと説明した。インフレ率がFRBの目標水準である2%に向けて下がっているため、名目金利を押し下げなければ、実質金利が上昇することになる。しかし、パウエル氏は18日の利下げについて、米経済が引き続き健全な状態にある中での微調整だと表現した。パウエル氏の発言とFOMC声明は、インフレのリスクと失業率のリスクが「ほぼ均衡している」との認識を強く打ち出していた。しかし、FRBが0.5ポイントの利下げに踏み切った上、今後の利下げが速いペースで進むとの見通しを示したことは、失業者の増加抑制への急激な方向転換を示唆している。FOMCは18日の会合で発表した四半期経済見通しで、今年と来年の失業率の予想を4.4%(現在は4.2%)とし、6月の見通しより引き上げた。また、年内に0.5ポイント、2025年には1ポイントの追加利下げを見込んでいる。
それでも、記者会見でのパウエル氏はまったく楽観的だった。同氏は、4.4%という失業率でさえ歴史的に見て低く、完全雇用を意味する可能性さえあると指摘した。この指摘は正しい。また、労働参加率、求人数、離職者数について楽観的な見方を示し、これらはすべて「堅調な」労働市場を示していると述べた。こうした矛盾するシグナルは、FRBが新たな利下げサイクルで負うことになるリスクを浮き彫りにしている。パウエル議長の賭けは、まだ到来していない景気減速を回避するために今なら積極的な金融緩和を行えるほどインフレは沈静化しているということのようだ。
パウエル氏の考えは正しいかもしれない。だが、FOMCで2022年6月以来初めて反対票が出たことは注目に値する。ミシェル・ボウマンFRB理事は0.25ポイントの利下げが望ましいと主張した。もしパウエル氏のインフレについての見立てが間違っていれば、つまりインフレ率が2%に戻るまで下がり続けなければ、FRBの信頼性はまた大きな打撃を受けるだろう。FRBにとってそれは許されない。投資家はFRBの矛盾したトーンを感じ取ったようで、株式と債券の相場は当初上昇したものの、取引終了までに下げに転じた。ドル相場は下落(その後、幾分上昇)した。FRBの積極的な金融緩和のシグナルが材料になったことは間違いない。このことは、投資家がパウエル氏の発言ではなく、同氏の行動に込められたメッセージに注意を払ったことを示唆している。
0.25ポイントか0.5ポイントかという利下げ幅の違いが実体経済に直ちに影響を及ぼす公算は小さい。しかし、最近インフレ率が高かった経緯があるだけに選挙直前の利下げは政治的な問題になる可能性がある。われわれは、経済の利益のために政治とは関係なく判断を下すことを試みていると言うパウエル氏を信じる。ドナルド・トランプ氏はそれに同意しないかもしれないが。
われわれは論説で、金融状況はFRBが主張するほど引き締まっておらず、経済が好調だとパウエル氏が述べる状況において積極的に金融緩和をすることは賭けに当たると主張してきた。今回はインフレに関する彼の主張が正しいことを期待しよう。
以上のように、WSJ社説は大幅利下げは経済の先行きについてパウエル議長が自身の発言内容よりも強い懸念を抱いていることを示唆しており、またFRBが今後の利下げが速いペースで進むとの見通しを示したことは、失業者の増加抑制への急激な方向転換を示唆していると指摘する。事実、FOMCは四半期経済見通しで今年と来年の失業率の予想を4.4%(現在は4.2%)とし、6月の見通しより引き上げ、年内に0.5ポイント、2025年には1ポイントの追加利下げを見込んでいると述べる。こうしたパウエル議長の行動を、まだ到来していない景気減速を回避するために今なら積極的な金融緩和を行えるほどインフレは沈静化しているという賭けに出ているとの見方を示す。そのうえで、ミシェル・ボウマンFRB理事が0.25ポイントの利下げが望ましいと主張したことに言及し、われわれも以前から金融状況はFRBが主張するほど引き締まっておらず、積極的な金融緩和は賭けに当たるとの見方を繰り替えしてきたと主張する。
これに対し、9月19日付フィナンシャル・タイムズは「FRBが大幅利下げを選択した理由」と題する社説で、インフレが緩和するなか、FRBは現在もう一つの使命である雇用保護のために大幅利下げに踏み切ったと以下のように論じる。
先月ジャクソンホールで講演したジェイ・パウエル氏は、米国経済が過酷なインフレショックから脱却する際のFRBの使命について明言した。「われわれは物価の安定に向けてさらに前進する中で、力強い労働市場を支えるためにできることはすべて行う」と語った。水曜日、パウエル議長はFRBの政策金利を4.75〜5%へと引き下げ、4年以上ぶりとなる緩和サイクルをスタートさせた。水曜に発表されたドットプロットと呼ばれる予測では、連邦公開市場委員会のメンバーのほとんどが政策金利は今年中にさらに半ポイント低下し、2025年には3.25~3.5%に据え置かれると予測している。ドイツ銀行のピーター・フーパー調査部副部長は、「革新的だった。経済的に非常に良い状態を長引かせるために保険をかけたのだ」と語る。FRBに30年近く勤務したフーパー氏は、「パウエルはソフトランディングを保証したいのだ」と付け加えた。この決定はFRBにとって大胆な行動であり、11月の大統領選挙を数週間後に控えた今、批判を浴びるのは必至だ。すでに共和党のドナルド・トランプ候補は、今回の利下げは「政治的」な理由(与党候補であるカマラ・ハリスを助けるため)か、あるいは経済が「非常に悪い」状態にあるからだと述べている。
この決定は、世界的な大流行、大恐慌以来の経済縮小、戦争、過去40年間で最悪のインフレを増幅させた深刻な供給ショックなどで、パウエルのリーダーシップにとって波乱の幕開けとなった。多くのエコノミストは、パウエルが世界最大の経済大国を不況に転落させることなく、物価上昇圧力を抑えることができるかどうかと疑っていた。しかし、インフレ高進のピークから2年、経済成長が堅調を維持する一方で、インフレ率はFRBの目標である2%近くまで回復した。水曜日、FRB議長は今回の決定について説明し、通常よりも大幅な利下げを物価上昇圧力が大幅に緩和される一方で、労働市場の需要も冷え込んでいる経済に合わせた金融政策の「再調整」と位置づけた。
過去、FRBが従来の4分の1ポイントの政策調整ペースから逸脱したのは、例えばコロナ禍の経済危機の発生時や2022年に米国のインフレ問題を誤診していたことが明らかになった時など、突出したショックに直面した時だけだった。そのような深刻な経済的・金融的ストレスがないまま水曜日の利下げが発動されたことは、不必要な景気後退を避けたいというFRBの願望を際立たせた。だが、水曜日の決定はむしろFRBが経済の直面するリスクのバランスを取る努力を反映したものだった。FRBの焦点は、インフレ率を範囲内に収めた後、毎月の成長率の鈍化と失業率の上昇によって懸念が高まっている労働市場に移ったのだ。
次のステップは、中立的な金利水準に到達するためにどの程度のペースで金利を引き下げるべきかを見極めることだ。パウエル議長は記者会見で「急ぐ必要はない」と述べた。ドットプロットでは、今年だけでなく2025年についても当局者間でばらつきが見られた。FRBは年末まで新水準の4.75~5%で金利を維持すべきと考えたのは、予想を記入した19人の当局者のうち2人だった。別の7人は、今年中にあと1回だけ金利を4分の1ポイント引き下げると予想した。2025年の金利については、さらに幅が広がった。パウエル議長としては、FOMCでのコンセンサス作りが仕事になろう。今回の会合で、4分の1ポイントの利下げに賛成したミッシェル・ボーマン総裁の反対意見が一つあった。
このコンセンサス達成は、混迷する経済状況によって難しくなるだろう、全体的な改善にもかかわらずインフレ率には若干の粘り強さが見られ、それ以外は堅調な労働市場にも弱さが芽生えている。元カナダ中央銀行副総裁のジャン・ボイヴィン氏は、金融市場が予想するよりも緩和サイクルが「短縮」される可能性があると警告した。すでに先物市場のトレーダーは金利が当局の予想以上に低下し、年内に4~4.25%まで低下することを織り込んでいる。その後、市場参加者は2025年半ばまでに3%以下に低下すると予想している。「インフレの見通しはかなり不透明だ」とボイヴィン氏は言い、このような背景から、FRBが借り手をどれだけ救済できるかについては慎重な見方を示した。「これが緩和サイクルの始まりだとは思わない。これは引き締めの巻き戻しだと思う。
以上のように、FT社説は通常よりも大幅な利下げを物価上昇圧力が大幅に緩和される一方で労働市場の需要も冷え込んでいる経済に合わせた金融政策の「再調整」と位置づけたFRB説明を受け入れ、FRBの焦点は、インフレ率を範囲内に収めた後、毎月の成長率の鈍化と失業率の上昇によって懸念が高まっている労働市場に移ったと指摘する。そのうえで次のステップは、中立的な金利水準に到達するためにどの程度のペースで金利を引き下げるべきかを見極めることだと述べ、パウエル議長には、FOMCでのコンセンサス作りが仕事となると主張する。
こうしたFT社説以上に大幅利下げを強く支持する論調も登場する。FRBによる大幅利下げの発表直前、ニューヨーク・タイムズは同紙のオピニオン・コラムニストでノーベル経済学賞の受賞者、ポール・クルーグマンの談話を紹介し、同氏が積極的な利下げを主張し、今は慎重を期す時ではないと主張していると以下のように報じる。些か長文で難解な部分もあるが、参考になるので全文をお伝えする。
今日、FRBは多かれ少なかれ利下げに踏み切るだろう。利下げ幅がどのくらいになるかはわからない。しかし、それは大きな意味を持つだろう。利下げが行われる理由は、何よりもまず、私たちがインフレとの戦いに勝利したからだ。そして、景気後退や失業率の大幅な上昇なしにそれを成し遂げた。今重要なのは着地をあやまらないことだ。そこで問題になるのは、「FRBは飛行機の機首を素早く引き上げ、滑走路にスムーズに着陸するだろうか」ということだ。FRBがやるべきことは大幅な利下げだろう。議論されているのは25bpから50bpの間だ。これは人々が使う専門用語にすぎない。私は、50bpは確実だと思う。しかし、よく考えてみれば、仮に50bp引き下げたとしても金利はパンデミック前夜より300bpほど高止まりしているのだ。そして、インフレはコントロールされている。
私は、FRBが200、250、300bpの引き下げをかなり迅速に、すぐにこれが始まりに過ぎないことを明確にするようなレトリックで行ってほしいと思う。FRBは政府の一部でもあり、政府の一部でもない。大雑把に言えば、FRBは流通するお金の量をコントロールすることができるため短期金利をコントロールすることもできる。つまり、FRBは非常に強力な経済主体であり、迅速に行動することができる。FRBは立法を必要としない。つまり、基本的に経済の短期的な管理者なのだ。過去数年間、FRBはインフレの大幅な加速に衝撃を受けた。当初インフレがすぐに収まると考えていたがそれは間違いだった。FRBが金利を引き上げることで対応したのは景気を冷やし、支出を減らし、商品の需要を減らすためだ。標準的なやり方だ。以前にもやったことがある。今回の利上げは1980年代初頭以来最大のものだが、利上げを開始した時点からほぼ5%ポイントも金利を引き上げた。
現在、インフレは抑制されているように見える。公式発表のインフレ率は2.5%である。FRBを含む多くの人々は、この数字さえも誇張であり、その一部は住宅費などの計算方法に関する技術的な方法を含む統計的な錯覚のようなものだと考えている。つまり、私たちは基本的にインフレに打ち勝ち、FRBは利下げを開始する必要があるということだ。現時点では、不況に陥ることなくインフレをコントロールする完全なソフトランディングが可能なのだろうか? 答えはおそらくそうだろうが、それは微妙だ。振り返ってみればわかるだろう。しかし、金利引き下げを待つにはすでに時間がかかりすぎていることは確かだ。
そして、金利決定と同じくらい重要なのが、その後の記者会見でのFRB議長の発言だ。FRBは数字を出すが、同時に声明も発表する。そして人々はその声明に目を通し、前回の声明からの言い回しの小さな変化を探す。まるで、かつてのクレムリノロジィ(ソ連研究)か何かのように、意思決定をしている人たちが何を考えているのかを推し量ろうとする。パウエル議長が、これまでFRB議長が述べてきたように「インフレ率は低下しており、景気は弱含みで推移している」と明確に述べるかどうかにかかっている。もしパウエル議長が「インフレは目標達成に向けて順調に進んでいるようだ」と力強く言えば、それはハト派的な発言となる。世の中には、「インフレが本当に一段落したとは思えない、まだラストワンマイルがある」と言う人もいる。もしパウエル議長がラストワンマイル派であるかのような発言をすれば、それは金融収縮派となり、金融環境を引き締めることになる。パウエルが「ラストワンマイルはないと思う。失業率の上昇を懸念していない」と言い、そこで立ち止まれば、それはタカ派的で、長期金利を引き上げる傾向がある。つまり、言葉と正確、明解であることが重要なのだ。
3カ月物金利に基づいて経済的な決定を下す人はほとんどいない。重要なのは10年物金利や住宅ローン金利のようなもので、これらはすべてFRBが一定の日に何をするかよりも、人々が今後数年間にFRBが何をするかと思うことによって左右される。そこで大きな疑問はFRBの利下げがどの程度のものであれ、それが一連の利下げの始まりであり、今後多くの利下げが行われると皆が認識した場合、関連する金利を下げるのに大きな効果があるのだろうかということだ。FRBが利下げを行い、これは始まりに過ぎないと言えば、たとえ利下げ自体はそれほど大きなものでなくても、住宅ローン金利は大きく下がるだろう。FRBが実際に今何をするかは、その将来の意図を示すシグナルである。だからFRBの数字が注目されるのだが、この数字はシンボルとして重要なのだ。具体的な資金コストよりもFRBの心境を物語っているのだ。
最後にもうひとつ指摘しておきたい。FRBが行うことは政治的な影響を及ぼすということだ。FRBの利下げがカマラ・ハリスにとって良いニュースであることは間違いないと思う。選挙に間に合うような経済効果はあまりないだろう。現時点では、実質的に選挙が目前に迫っている。しかし、FRBがインフレに打ち勝ったと考えているというシグナルにはなるだろう。これは現職大統領でなくとも、現職政党の候補者にとっては朗報なのだ。とはいえ、それはFRBが考慮すべきことではない。FRBはまず、その仕事と考えられていることをすべきだ。つまり、経済のために最善を尽くすべきなのだ。本当に政治的なことは、政権与党に有利な政治的影響を与えるかもしれないので正しいことをするのを控えることだろう。FRBが政治から隔離されているのには理由がある。おかしなことだが、私たちが知らないようなことはFRBも知らないのだ。FRBは内部情報を何も持っていない。それにもかかわらず、利下げを行うことでFRBはインフレに対する勝利を公式なものとし、それは政治的な影響を与えることになるのだ。
以上のように、談話は冒頭でFRBの利下げは景気後退や失業率の大幅な上昇なしにインフレとの戦いに勝利したことを意味し、今、重要なのは着地をあやまらないことで、それには大幅な利下げ下が必要だと明解に主張する。今後については、経済のソフトランディングを確実にするために、200、250、300bpの引き下げをすぐに、迅速に、これが始まりに過ぎないことを明確にするようなレトリックで行うべきだと論じ、立法措置に縛られないFRBには、それが可能だと説く。そのうえで、利下げの数字はシンボルとして重要だが、それは資金コストよりもFRBの心境を物語っているために重要だと指摘しているのが注目される。またFRBと政治の関係について、そのためにFRBが本来の任務を回避しないよう戒めていることも注目に値しよう。
結局、FRBはまさにクルーグマン教授が主張するとおり大幅利下げに動いた。これについては、インフレ見通しについて一つの賭けに出たという見方や雇用対策として必要だったとして中立的金利体制を目指して努力すべきだとする見方などが交錯する。しかし、いずれも最終的には経済の軟着陸を求めていることに変わりはない。引き続きFRBのかじ取りから目が離せない。
その2. 日本の新首相の登場と提起された国民的課題
9月27日、自由民主党は党総裁選挙を実施し、次期首相となる新総裁に石破茂氏を選出した。選挙結果に注目していた海外メディアも早速、選挙結果を報道すると共に論説を発表した。以下はその要約である。資料は次のとおりである。
9月27日付ワシントン・ポストの「Japan’s ruling party elects Shigeru Ishiba as new prime minister (日本の与党、新首相に石破茂氏を選出)」と題する記事、
9月27日付ウォ-ル・ストリート・ジャーナルの「Japan Gets a New Leader Who Wants to Remake the U.S. Military Alliance (日本版記事:日本の次期首相、石破氏は日米同盟の再構築を提唱)」と題する記事、
9月27日付米タイムの「What Japan’s Next Prime Minister Shigeru Ishiba Means for the World (日本の石破茂次期首相が世界に意味するもの)」と題する記事、
9月29日付フィナンシャル・タイムズの「Japan’s unexpected choice of prime minister (日本の意外な首相選び)」と題する社説、
9月30日付ワシントン・ポスの「A party’s seven-decade dominance raises concerns for Japan’s democracy (民主主義に懸念を抱かせる70年にわたる一党支配)」と題する記事。
まとめ:以上のメディアの報道や論調を次の5つの観点からまとめてみる。第1に石破氏が新首相に選出された勝因、第2に新首相の任務、第3に国内政策の見通し、第4に外交安保政策、最後の第5は、日本の政党政治に対する論評である。
第1の石破氏の勝因についてメディアは、石破氏は政治資金スキャンダルを受けて透明性と説明責任を呼び掛け、自民党の一般党員から幅広い支持を得たと指摘。2025年秋までに実施される次期総選挙で勝利するには石破氏が適任だと自民党議員は判断したと述べる。同時に、自民党は新首相選びで世代交代も初の女性首相も選ばず、予想外の第3の扉を開けたと評する。石破氏の勝利への道は、地方党員からの支持に依存しており、石破氏はすぐに総選挙を行うだろう。勝利すれば、石破氏の立場はより強固になろう。しかし、少なくとも野党を扱うのと同じくらい注意深く、党内ライバルを警戒しなければならないと指摘する。
メディアはまた石破氏の過去の政治姿勢に言及し、党幹部である安倍元首相を含む長老たちを公然と批判し反対してきたため、党内ではとげとげしい存在として知られていると述べる。党議員数十人が政治資金スキャンダルに巻き込まれた際、石破氏は岸田氏に責任を取って辞任するよう提案し、同僚議員から反発を買った。世論調査によれば、石破氏は党とその長老を批判する意欲があるため、国民には人気があり、同じ理由で同僚からは概ね嫌われているが、汚れた政治の一掃を望む自民党支持者の間では、同氏が最有力候補となったとし、新総裁は、党が全く新しい方に向かっていることを国民に納得させるという大きな課題に直面しているとの専門家の見解を伝える。
さらにメディアは、石破氏が9人の候補者の中から勝ち残った理由に関連して次のように伝える。石破氏は、体制派と反体制派の両方の経を持つ。この距離感が石破氏の勝利の鍵となったようだ。石破氏の人気は、不正を適切に調査し、国民の信頼を回復するための改革の必要性を率直に訴えたことで高まった。また、主要な挑戦者の中で最もポピュリストであり、原子力エネルギーや女性が天皇になれるかどうかなど、世論次第で様々な問題を翻すことで知られていた。石破氏には明らかに破天荒な一面もある。日本の韓国植民地化における過ちを認める数少ない自民党政治家の一人であり、以前、日本が独自の核抑止力を開発することへの支持を表明したことがある。
第2は新首相の任務についての論調である。メディアは、石破氏は一連の汚職スキャンダルのために自民党と日本の指導者に対する信頼がかつてないほど低くなっているなか後を継ぐことになると述べ、これに対し同氏は汚職スキャンダルについて「国民にきちんと説明し、それが国民に受け入れられる必要がある」と語っていると報じる。石破氏は、国民に人気のある特異な人物で、過去10年間は日本政治の主流から外れていたと述べ、そうした過去の立場は経済、日米同盟、党の管理において政権運営を難しくしていると指摘。経済面で同氏は円安、インフレ、国債の増加、賃金の低迷といった厳しい状況に直面しており、説得力のある経済政策を打ち出す必要があるとの専門家意見を伝える。
次いでメディアは、新首相は地域における安全保障上の脅威と戦争のリスク増大と取り組まなければならないと指摘する。中国台頭によって再構築されつつあるアジア太平洋情勢や米国でドナルド・トランプ氏が再選される可能性を挙げ、特にトランプ再選の場合、同大統領に取り入っていた安倍元首相が暗殺されたためにパイプ役がいなくなったと懸念を表明する。
第3は、石破氏の国内政策に関する見方である。石破氏は前任の岸田氏の経済政策を当面堅持する意向を示しているが、過去には、安倍首相の景気刺激策に激しく反対し、最近では企業への増税を口にしていると指摘する。地方経済活性化を熱烈に支持しているがどのように実現するかは不明で、言うことはどれも明らかに経済成長を支持するものではないと述べる。メディアはまた、石破氏は財政支出に関してタカ派的で企業や金融所得への増税を唱えていると報じる。石破勝利で円高が進んだのは、同氏が日銀の利上げに同調する姿勢を示唆したからであり、株価先物は急落し、翌週の株価を押し下げるだろうと予想する。経済政策の柱として、日本で最も人口の少ない鳥取県出身の石破氏は、長年地方の活性化を提唱し、一極集中の東京以外での経済機会創出による経済成長促進を公約に掲げていると伝える。
第4に石破氏の外交安保政策に関する見方について、メディアはまず、アジア太平洋における中国の主張を牽制し、日本が米国とともにますます重要な役割を果たすことを考えると、石破氏の登場は世界の安全保障に影響を与えると指摘する。次いで、同氏は前例のない安保上の課題に直面しているが、日本の安全保障が米国に依存しているという「非対称性」のせいで「日本はまだ真の独立国ではない」と考えており、日本は日米同盟の中でより大きな役割を果たし、米軍が日本にどのように配置されるかについてもっと発言権を持つ必要があると主張していると伝える。前任の岸田氏は米国寄りに偏り、中国への対抗として韓国やフィリピンなどアジア太平洋地域の他の米同盟国と深い関係を築いたが、石破氏は中国との深い関わりと外交の強化を求めている。安倍氏と岸田氏は防衛費を増やし、基本的な構造を変えることなく日米同盟の深化を図った。対照的に、石破氏は同盟の非対称的な側面に不満を抱き、安保条約を不平等と批判し日米同盟の再構築を考えており、米国政府との緊張が高まるなどの可能性を秘めていると懸念を示す。
こうした見解を持つ石破氏は、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」という岸田氏の言葉について、ロシアのウクライナ侵攻を中国の台湾攻撃と混同するのは感情によるもので、中国の脅威や日本への影響に対する現実的な評ではないと批判する。ただし石破氏は台湾民主主義の強力な支持者であり、中国や北朝鮮からの脅威に対抗するために「アジア版NATO」の創設を提案する。この構想について、注目に値するという意見と共に内容が定かでなく、ワシントンの多くのオブザーバーから懐疑的な見方が提示されているなどと評されている。また石破氏は日米同盟の再構築案を幾つか提示しているとし、米軍基地の日米共同管理とする可能性や米軍基地や装備に関する日本の関与を制限する条約上の規定の修正、自衛隊をグアム島などの米国領土に常駐させる案、そして侵略抑止力を高めるためのアジア版北大西洋条約機構創設案などを挙げる。このほかに石破氏は、日本が米国に全面的な忠誠を誓うだけなら無視されるだろうと語り、日本は手ごわいぞと思わせることが大事であり、ディールのカードをもつことが肝要だが、日本は安全保障でカードを全く持っていないなどと発言していると伝える。
最後の第5は、日本の政党政治の在り方に関する論評である。メディアは、総裁選挙の過程で長い間日本を支配してきた古い政治の世界が繰り返されたと批判し、総裁候補者のほとんどが男性で女性はわずか2人、50歳以上で半数以上が父親の選挙区議席を受け継ぐ世襲政治家だと報じる。そのうえで、過去30年間の総理の半数以上が父親からその地位を受け継いでいることから、多世代政治家の普及が問題視されていると指摘する。彼らの多くは、拡大する社会格差に無関心で、有権者が指導者に日常的な関心事を理解してもらえているとは感じにくくなっていると批判されており、後ろ盾を持たない初めての候補にも勝つチャンスがあるような環境を作る必要があると提言する。
また石破氏は勝利の後、自民党の在り方について「自由闊達に議論をする自民党、公平公正な自民党、謙虚な自民党。国民を信じ、勇気と誠意を持って真実を語り、日本をもう一度、誰もが笑顔になれる安全・安心な国にするために全力を尽くす」と語ったと伝える。しかし批評家やアナリストは、自民党は4年間を除いて過去69年間、日本を統治しており、その持続力は他の議会制民主主義国家と比べても特異なものだと指摘し、一党支配の長期化と弱体な野党は、民主主義の健全性と有権者の参加に疑問を投げかける重大な欠陥だと主張する。
自民党は、ソ連とつながりのあった日本社会党の台頭を阻止するために秘密裏に米国から資金支援を受けて結党され、人口の1%未満の人々が指導者を長く選んできたと批判する。自民党は現在、安全保障タカ派や右翼ナショナリストから穏健保守派まで、幅広いイデオロギーを包含する大きなテントのような政党に膨れ上がっている。しかし、党員が意見の相違を表明する場が与えられているなど、自民党が分裂しないのは、その柔軟性が強みだからだと述べ、自民党の政権掌握力は非常に強く、弱体で分裂したままの野党に対して、事実上克服できない優位性を持っていると評する。
結び:石破氏の主たる勝因は、体制派と反体制派の両方に属した経歴を持つ主流派との距離感を生かしつつ、一連のスキャンダルから国民の信頼を取り戻すという公約を掲げ、他候補との差別化をはかったことにあると言えよう。石破氏は、これまで党長老たちを公然と批判し反対してきたため、党内ではとげとげしい存在として知られ、政治資金スキャンダルについて透明性と説明責任を呼び掛けてきた。そうした石破氏が次期総選挙を睨んで適任だと判断した自民党の一般党員から広く支持を得て、予想外の第3の扉を開けることにつながったと言える。ただし同氏には、ポピュリストの一面があり、原子力エネルギーや女性が天皇になれるかどうかなどの様々な問題について気分次第で意見を翻すことで知られていること、以前、日本が独自の核抑止力を開発することへの支持を表明したことがあるなどの報道に留意しておく必要があろう。
新首相の任務は、まず一連の汚職スキャンダルによる自民党と日本の指導者、そして政治への信頼がかつてないほど低くなっていることへの対応がある。石破氏は汚職スキャンダルについて「国民にきちんと説明し、それが国民に受け入れられる必要がある」と述べており、それを真に実行するのが第一であろう。また同氏は物価高、賃金の低迷などの厳しい経済状況への対策を打ち出す必要がある。地域における安全保障上の脅威と戦争のリスク増大と取り組まなければならないことも勿論である。
経済政策に関しては、石破氏は前任の岸田路線を当面堅持する意向を示しているが、基本は地方創生を成長の起爆剤とする考えである。ただし、その構想の詳細は未だ不明であり、東京一極集中の是正という公約に関する同氏の手腕に注目したい。また財政面で企業や金融所得への増税を目指すタカ派とされ、金融政策で日銀の正常化政策に同調姿勢であり、経済成長に関する今後の政策運営をフォローして行く必要がある。
外交安保政策に関しては、石破氏は防衛問題の専門家だと指摘されている。対米国、中国、韓国などの外交安保政策で新しい風を巻き起こす可能性がある。対米関係では、日米同盟の「非対称性」を指摘して「日本はまだ真の独立国ではない」と主張し、米軍基地の日米共同管理案や自衛隊の米国常駐案などを含む日米同盟の再構築を提案している。一見、ナショナリスト的思考にみえるが、日本が同盟関係の中でより大きな役割を果たし発言力を高めるという主張は、日本の負担増による同盟強化につながる可能性があり、その真意を見極める必要があろう。対中関係では石破氏はより深い関わりと外交の強化を求めているとされる。岸田氏が発した「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」という戦慄的とも言えるメッセージについて、ロシアのウクライナ侵攻を中国の台湾攻撃と混同する感情的表現だとし、中国の脅威や日本への影響に対する現実的な評ではないと切って捨てている。その一方で、石破氏は台湾民主主義の強力な支持者であり、中国や北朝鮮からの脅威に対抗するために「アジア版NATO」の創設を提案し、対韓政策では岸田路線を引き継ぎ、対韓デタントの維持を宣言している。
「アジア版NATO」の創設構想については、注目に値するという意見と共に内容が定かでなく、ワシントンの多くのオブザーバーから懐疑的な目でみられているなどと評されている。こうした石破氏の主張や提案は多彩ではあるが、内容についてはあいまい感が否めない。そして、そのあいまいさが国民に不安感を抱かせていると思われる。そうしたなかで、意見を簡単に変えると評される石破氏は早速、選挙前の言質と異なる決定を下した。衆院解散宣言である。国民は見極めのつかない状況のなかで選択を迫られることになった。
最後に、日本の政党政治の在り方に関するメディアの問題提起は的確である。確かに、弱体な野党と長期の与党一党支配という政治体制は異常である。自民党の持続力は他の議会制民主主義国家と比べて特異であり、その指導者を人口の1%未満の人々が長く選んできたのである。民主主義の健全性に疑問を投げかける重大な欠陥だと批判されても仕方がないだろう。議会制民主主義では多党制、特に英米型の2党制が理想とされるが、日本では定着していない。加えてメディアは、自民党一党独裁制の陰に米国の存在を示唆する。いわゆる55年体制は、冷戦時にソ連とつながりのあった日本社会党の台頭を阻止するために秘密裏に米国から資金支援を受けて成立したというのである。現在の自民一党体制が当時の政治体制を引きずっているとすれば、それは石破氏が日米同盟の不平等を理由として、日本は独立国でないと評する以上に政治体制においても未だ独立していないと言える。
そうした自民党と日本の政治体制が抱えるもう一つの大きな課題として、メディアは多世代政治家の跋扈、少数派の女性政治家と多数の高齢政治家の存在という問題を提起する。多世代政治家については、社会格差の拡大や国民の日常的な関心事に理解を示そうとしないと批判し、後ろ盾を持たない新人候補にもチャンスを与える環境をつくるべきだと提言する。女性政治家が極めて少数にとどまる問題は日本における女性の社会進出、政治家の高齢化は同じく少子高齢化の問題と深く関連している。それはまた日本と日本人固有の体質や文化と地下水脈でつながる深刻な問題でもある。自民一党体制の再編の問題と共に政治における日本カルチャーの改良、改質の問題として挑戦していくべき国民的課題である。
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(主要トピックス)
2024年
9月16日 ロシア海軍と中国海軍、日本海で艦艇によるミサイルや砲撃の演習を実施。
18日 中国広東省深圳市で日本人学校に登校中の男児(10)、刺殺される。
19日 中国外務省、上記事件について記者会見で「遺憾」の意と哀悼を表明。
外国人の安全確保のため有効な対策をとると改めて強調。
20日 岸田首相、日中間で日本産水産物の輸入再開に向けた調整に入ることで合意したと記者団に発表。
韓国の尹錫悦大統領、チェコを訪問、フィアラ首相と会談。
優先交渉権を得たチェコの原子力発電所新設に関し本契約に向けた協力を確認。
24日 中国当局、不動産や株式市場の支援策を含む金融緩和策を発表。
25日 中国人民解放軍、大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を太平洋の公海に向けて発射。
「AUKUS (オーカス)」諸国を威圧する狙いか。
インドネシア政府、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を申請。
27日 米国のブリンケン国務長官と中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相、
ニューヨークで会談、首脳会談について協議。
28日 中国人民解放軍、南シナのスカボロー礁(中国名・黄岩島)周辺の海空域で軍事演習。
29日 中国の習近平国家主席、建国75年を前に民族団結の重要性をアピール。
中国式現代化による「強国建設と民族復興を推進する重要な時期を迎えている」 とし台湾は中国の神聖な領土と強調。
30日 中国外務省、石破茂氏が率いる新政権との対話に前向きな考えを表明。
10月1日 中国で建国75年となる国慶節(建国記念日)を祝う大型連休、開始。
中国交通運輸省、延べ19億4,000万人の移動を予想。 海外旅行で日本が渡航先トップ。
中国の習国家主席、日本の新首相、石破茂氏に祝電送付。
両国の戦略的互恵関係を全面的に推進したいと表明。
5日 バイデン米大統領、中国の習主席に建国75年の祝意を電話で伝達。
6日 中国と北朝鮮、国交樹立75周年。「中朝友好年」の祝電交換。
7日 フィリピンのマルコス大統領、国賓訪問した韓国の尹錫悦大統領と会談。
尹氏、比軍の装備近代化への協力を表明。
9日 東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連首脳会議、ラオスで開幕。 石破首相が外交デビュー。
11日 ノルウェーのノーベル賞委員会、2024年のノーベル平和賞を
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表。
韓国銀行(中央銀行)、政策金利を0.25%引き下げ、3.25%にすると発表。
利下げは2020年5月以来、4年5カ月ぶり。
12日 中国の李強(リー・チャン)首相、ベトナムの首都ハノイを訪問、
最高指導者のトー・ラム共産党書記長兼国家主席らと会談。
14日 中国人民解放軍、台湾を包囲する軍事演習を開始。
台湾の頼清徳(ライ・チンドォー)総統、国家安全会議(NSC)を開き
「演習は地域の平和と安定を破壊する」と非難。
15日 韓国軍合同参謀本部、北朝鮮が南北境界地域で韓国とつながる道路を爆破したと発表。
朝鮮中央通信、金正恩総書記が国防協議会を招集と発表。
主要資料は以下の通りで、原則、電子版を使用しています。(カッコ内は邦文名) THE WALL STREET JOURNAL (ウォール・ストリート・ジャーナル)、THE FINANCIAL TIMES (フィナンシャル・タイムズ)、THE NEWYORK TIMES (ニューヨーク・タイムズ)、THE LOS ANGELES TIMES (ロサンゼルス・タイムズ)、THE WASHINGTON POST (ワシントン・ポスト)、THE GUARDIAN (ガーディアン)、BLOOMBERG・BUSINESSWEEK (ブルームバーグ・ビジネスウィーク)、TIME (タイム)、THE ECONOMIST (エコノミスト)、REUTER (ロイター通信)など。なお、韓国聯合ニュースや中国人民日報の日本語版なども参考資料として参照し、各国統計数値など一部資料は本邦紙も利用。
バベル翻訳専門職大学院 国際金融翻訳(英日)講座 教授 前田高昭
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