BOOKコミュニティをご存じですか?
2024/6/7
ブックコミュニティをご存じですか。映画やTVドラマのレビューサイトが花盛りであるように、楽曲やプレイリストの共有が今や日常であるように、誰かと感動を共有したい、自分の体験を伝えたいという欲求に、読書の分野で応えているのがブックコミュニティです。
ブックコミュニティは読書愛好家の幸福感を高めることに貢献していますが、それだけではありません。実は、出版社にとっても価値ある情報の宝庫なのです。具体的には、次のような利点があります。
- 信頼性の高いフィードバック
ブックコミュニティのメンバーは、本に対して熱意があり、知識も豊富です。彼らからのフィードバックは信頼性が高く、市場のニーズを把握するのに役立ちます。
- ターゲット市場の洞察
ブックコミュニティは特定のジャンルやトピックに焦点を当てているため、出版社は特定の市場セグメントに関する深い洞察を得ることができます。
- 新しい作家やトレンドの発見
コミュニティメンバーは新しい作家やトレンドに敏感であり、出版社はこれらの情報を活用して新しい才能を発掘し、市場の動向を把握することができます。
- 直接的なマーケティング
出版社はブックコミュニティを通じて直接読者にアプローチし、新刊の宣伝や特別オファーを提供することができます。
- 製品開発への貢献
読者からの意見や提案は、新しい本の企画や既存の本の改訂に役立つことがあります。これにより、より魅力的な製品を開発することができます。
- 顧客ロイヤルティの構築
定期的な交流を通じて、出版社は読者との関係を強化し、長期的な顧客ロイヤルティを築くことができます。
このように、ブックコミュニティは出版社が市場に効果的にアプローチし、読者のニーズに応えるための重要な情報源であり、出版業界の貴重なパートナーであると言えるでしょう。
このコーナーでは、毎月、話題のブックコミュニティやそこでの話題、また注目の書籍、著者などを紹介していきます。今回は、コミュニティをご紹介します。
BookTok
BookTokはTikTokのサブコミュニティで、2021年頃から出版業界で注目されはじめ、今も急成長を続けるブックコミュニティ界の革命児です。BookTokersと呼ばれるクリエイターが好きな本や著者を紹介したり、執筆のヒントや人気小説の再現ビデオ、本の収納方法などを共有して、大きなトレンドを生み出しています。ウィル・スミスやリース・ウィザースプーンといった有名人が本を紹介するレアな動画も魅力のひとつです。
もともとTikTokは若年層向けに作られたアプリですが、今や月間10億人以上の幅広い年齢層が利用し、社会のあらゆる場面に影響を与えています。Googleのシニア・バイス・プレジデントであるPrabhakar Raghavan氏は、2022年のFortune Brainstorm Techカンファレンスで、若者の40%がGoogle Mapsや検索ではなく、TikTokやInstagramでレストランを検索していると語っています。
中でもBookTokは、今や世界有数の書籍レコメンデーション・プラットフォームの1つであり、世界最大の出版社であるペンギンランダムハウスとも提携しています。Barnes & Nobleなどの大手小売業者もBookTokコミュニティ専用のセクションを設けています。
BookTokで紹介された書籍や著者は、他のソーシャルプラットフォームよりも早くフォロワーと売上を伸ばしていると言われており、カナダの書籍販売追跡サービスSalesDataによれば、#BookTokによるカナダ国内の書籍販売は2022年に17%増、過去5年間では44%増という数字が発表されています。
現在、日本語には対応していませんが、英訳されている日本の本も紹介されています。2023年のトップBookTok本の1冊として、川口俊和の『コーヒーが冷めないうちに』(英題『Before the Coffee Gets Cold』)が紹介されています。
Goodreads
読書愛好家の必須ツールと言われるのがGoodreadsです。2006年設立の比較的新しいブックコミュニティですが、非常に人気が高く7500万人以上のユーザーが利用しています。
Goodreadsの特長は、読んだ本やこれから読みたい本の記録ができる点にあります。年間の読書目標を設定することも可能(海外の読書愛好家の間ではとてもポピュラーな手法)です。また、書評やレビューの共有が非常に活発で、誰でも匿名で投稿できるAmazonなどのレビューに比べ、質が高く信頼性のある情報が提供される傾向があります(AmazonはGoodreadsを2008年に買収していますが、これもその大きな理由の1つだと言われています)。さらに、ユーザーの読書傾向に基づいておすすめの本を紹介してくれる機能があり、その精度の高さも評判です。また、著者がプロフィールページを作成し、新刊情報の共有や、読者の質問に答えるなど直接対話することもできます。
<参考サイト>
BUSINESS INSIDER https://www.businessinsider.jp/post-266276
Media Innovation Guild https://media-innovation.jp/article/2022/09/27/124553.html
Moyans I/O https://jp.moyens.net/social-media/218826/
Book Buz https://note.com/malimo_tokyo/n/nfce8f4529e1c
Book NET CANADA https://www.booknetcanada.ca/blog/research/2022/9/29/the-real-impact-of-booktok-on-book-sales
The Red Line Project.news https://redlineproject.news/2021/12/19/the-rise-of-booktok-and-its-impact-on-the-reading-community/
ITmedia ebook USER https://www.itmedia.co.jp/ebook/articles/1304/11/news082.html
今田陽子(いまた・ようこ)
BABEL PRESSプロジェクトマネージャー。カナダBC州在住。シャワー中もシャンプーボトルのラベルから目が離せない活字中毒者。