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第7回 世界のライターズ・マーケット近況(2025年2月)

BookTok依存のリスク

先月は、米国でのTikTok利用禁止が現実化するかどうかに注目が集まりました。TikTok禁止法の発効日である1月19日を目前に控え、TikTokは1月18日夜に米国でのサービスを一時停止しましたが、翌日、トランプ大統領が禁止措置の延期を約束したため、すぐに再開されました。この出来事は、クリエイターたちにとって販売戦略を見直す契機となったことは確かです。

これまでBookTokを活用して販売促進を行ってきたライターにも影響が及びました。BookTokとは、TikTok上で本の紹介やレビューを行うコミュニティです。本の紹介やレビューを行うコミュニティは他にも存在しますが、特に米国でBookTokがこれほどまでに影響力を持つようになった理由として、以下の点が挙げられます。

視覚的・感情的な訴求力

TikTokは短い動画を通じて、本の内容や感想を視覚的・感情的に表現できるため、視聴者の興味を引きやすいという特徴があります。音楽やエフェクト、話し手の表情などを活用することで、本の雰囲気を直感的に伝えることができます。

アルゴリズムによる拡散力

一般的なSNSではインフルエンサーが拡散の鍵を握るのに対し、TikTokの「おすすめ」フィードでは、AIアルゴリズムに基づいてコンテンツが選ばれます。これにより、無名の本でも、ある動画をきっかけに突然人気が出る(バズる)可能性があるのです。

気軽なコミュニケーション

他のレビューサイトと比べ、TikTokでは動画のコメント欄を通じて手軽に本について語り合える点も魅力です。「この本、泣ける!」「最後の展開がすごい!」といった短いフレーズで共感を呼び、本の魅力を簡潔に伝えることができます。

このようなメリットがあったBookTokですが、今回の騒動により、BookTokに依存することのリスクが浮き彫りになりました。ライター関連の記事では、TikTokに限らず、一つのプラットフォームに依存することは危険だと指摘し、大まかに以下のような対策を提案しています。

1. マーケティングチャンネルを多様化する

      1.  読者にリーチする手段として、TikTok、Instagram、Amazonのみに依存するのではなく、Eメールマーケティング、自分のウェブサイト、ポッドキャスト、リアルイベントなど、複数の経路を活用することが重要です。

    2. メーリングリストの構築

        1.  メーリングリストは、著者にとって最も強力なツールの1つです。ソーシャルメディアのプラットフォームとは異なり、メーリングリストは自分で管理できるため、読者との直接的なコミュニケーションを維持できます。

      3. ウェブサイトに注力する

          1.  自分のウェブサイトを、読者との接点となるハブとして活用します。自身の本、ブログ記事、リソース、最新情報を発信する場として機能させます。

        4. 他のフォーマットも取り入れる

            1.  TikTokのような短い動画フォーマットが得意であれば、YouTube Shortsなどの他のプラットフォームにも展開を広げることを検討します。現在使用しているプラットフォームが混乱に陥っても、他の手段にスムーズに移行できるよう、リスク分散を図ることが大切です。

        日本ではBookTokの影響力は欧米ほど大きくないものの、書店や出版社がプロモーションに活用し始めるなど、注目が高まりつつあります。海外のライターズ・マーケットでは、作家自身が積極的にマーケティングを行うのが一般的ですが、日本では出版社を通じたプロモーションが主流です。ただし、SNSを活用する作家が増えており、特に特定のジャンルでは重要なマーケティング手法となりつつあります。今後、日本の作家市場でも個人によるマーケティングの役割がどのように変化していくかが注目されます。

        <ライタープロフィール>

        村山有紀(むらやま・ゆき)
        IT・ビジネス翻訳歴10年以上。国内外の様々な場所での生活と子育ての
        経験をふまえ、自分らしい発信のスタイルを模索中。

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