2025年5月7日 第366号 World News Insight (Alumni編集室改め) 千田式『作家になる方法』とは バベル翻訳専門職大学院 副学長 堀田都茂樹
千田琢哉の『作家になる方法』は、作家としての在り方や、創作活動における精神的な準備、執筆の技術、さらには作家が持つべき哲学について論じている。本書の核心にあるのは、「作家は世界を変えられる」という信念であり、著者は読者に対して、自身の思想を言語化し、それを広めることで世界に影響を与える可能性を示唆している。
本書の大きな特徴として、「作家は単なる文章を書く人ではなく、思想家である」という考え方がある。千田は、作家は自身の思想を世界に伝える存在であり、本を書くことは、単なる自己表現を超えて、読者の価値観や社会そのものに影響を与える行為であると述べる。これにより、作家は自分の思想を地球規模で広める力を持つことになる。
また、千田は「作家が書いたことは現実化する」と述べている。これは、作家が創作を通じて未来を予見する能力を持つという考えにも通じる。多くの著名な作家が自身の作品の中で描いたことが後に現実となった例を挙げ、作家にはある種の予言的な力があることを示唆している。
作家として成功するためには、「書き上げる力」が必要であると千田は強調する。本書では、原稿用紙200枚以上(現在の書式では70ページ以上)の文章を、一気に書き上げる能力がプロ作家の基準であると述べている。これは、執筆に対する継続的な取り組みが重要であることを意味している。
また、「準備ばかりしていると寿命が尽きる」という指摘も興味深い。完璧を求めすぎるあまり、執筆を始められない人が多いことに対し、千田は「とにかく書くことが最優先である」と断言する。作家を目指す者にとっては、実際に執筆し、作品を仕上げる習慣を身につけることが不可欠である。
千田は、「日常のすべてがネタになる」という視点を持つことで、人生のあらゆる出来事を肯定的に受け入れることができると述べる。たとえば、職場の人間関係や喜怒哀楽の経験が、作家にとって貴重な素材となる。ノンフィクション作家に向いている人の特徴として、「ゲスの勘繰りをやめられない人」という表現を用い、社会の出来事の裏側を探ることが重要であると説いている。
さらに、「ズル休みのすすめ」という章では、忙しい現代人に対して、一度思い切って休むことで新たな視点を得ることができると提案している。リラックスした状態でこそ、良いアイデアが生まれるという考えは、創作活動においても重要である。
千田は、自身が港区南青山のタワーマンションに書斎を持つ生活を、学生時代からイメージしていたことを述べている。これにより、成功するためには具体的な目標と、それを実現するためのビジョンが必要であることを示唆している。単なる願望ではなく、実際に目標を描き、それに向かって行動することが重要である、と。
また、「本気のサクセスストーリーを描く」という考え方は、作家に限らず、どの分野においても応用できるでしょう。言語化し、何度もイメージトレーニングを行うことで、自らの夢を実現する可能性を高めるという考え方は、多くの人にとって示唆に富むものだろう。
本書は、作家を目指す人だけでなく、何かを創造し、世界に影響を与えたいと考える人にとっても有益な一冊である。千田のメッセージは一貫しており、「作家とは思想を広める存在であり、そのためには実際に書くことが最も重要である」という点に集約される。
また、作家が持つべき視点として、
・日常のすべてを創作の材料として捉えること
・未来の成功を具体的にイメージすること
・まず書き上げることを習慣化すること
といった要素が挙げられる。
本書を通じて、作家になるための精神的な準備と、実際に執筆を続けることの大切さが強く伝わってくる。特に、「準備ばかりしていると寿命が尽きる」という言葉は、創作活動において大きな示唆を与えてくれる。作家を志す人にとって、本書は強い刺激と実践的なアドバイスを与えてくれる一冊だと思う。