「JTA News & Topics 」 第190回
今回は、2024年6月21日に実施しました「日英技術翻訳の勘どころ」セミナー第7回(主催:バベルユニバーシティ、後援:一般社団法人 日本翻訳協会)受講者の吉田ひろみさんよりセミナーレポートを投稿いただきましたので掲載をしています。
情報提供:一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)
https://www.jta-net.or.jp/
―――――――――――――――――――――――――――――――
「日英技術翻訳の勘どころ」セミナー 第7回
― 日本人の弱点を克服して Readable な英文を書こう ―
●レポーター :吉田 ひろみ バベル翻訳専門職大学院在籍中 米国ハワイ州在住。国際企業でフルタイム勤務の傍ら、子育てと学業の両立に奔走中。
引き続き、平井講師(技術士/情報工学 (有) 平井ランゲージ・サービシズ代表取締役社長)の技術翻訳セミナーへ参加させて頂きました。講師のお話を伺いながら、これは、テクニカルライティングのみならず、英語圏の学校で子供たちが習うパラグラフィングと共通する内容だと気付きました。子供の宿題やエッセイ等のリビューを頼まれ読んでみると、使っている単語や言い回しも何か違う?論理的に理路整然とまとまっていて、すごいな~と思うことが度々あります。英語圏の子供たちにとっては成長段階で自然と身に付くスキルなので当たり前、でも、私にとっては大発見!子供から、もっと文法など勉強した方がいいよというアドバイスもあり、グッドタイミングのセミナーでした。
Readability(毎回セミナー中、講師が仰る事), 3c: correct, clear, concise, パラグラフィングの3大要件(unity, coherence, clear organization/development), 1 meaning/word, top down、逆ピラミッド型などのお話が印象的でわかりやすく、大変参考になりました。
パラグラフィングおよび修辞を中心に
• 目標: Readable な英文を書くこと
Readable: 読みやすい、読む気になる、読んで楽しい
• パラグラフィングの原則
• パターンの重要性
・論理性 (“Does it make sense?”)
・スタイル(文体、読み手との距離感、言い回しの巧拙、編集的要素等)
・変化(variety vs. monotony) (語彙、言い回し、文型、スタイル等) 相反する要求
・一貫性(統一性)(語彙、言い回し、文型、スタイル等)
参考) テクニカル・ライティング(特にマニュアル、特許)では、用語/言い回 しの一貫性 (“1 meaning/word”) を強調
・パターン: 話の展開やスタイルに関する、書き手と読み手の暗黙の了解/ 期待
パラグラフの3大要件
・統一性 (unity)
・首尾一貫性(coherence)
・構成/展開(clear organization/development)
パラグラフの構造
・[導入文](introductory sentence)
・主題文(topic sentence)(核文、要約文とも言う)(通常、 1つの文)
・支持文(supporting sentences)(通常、複数)または
・展開文(discussion sentences)(通常、複数)
・[つなぎ文](transitional sentence または connecting sentence)
・[結語文](concluding sentence)
注) [ ]: 省略されることもある
各文の役割
(a) 主題文(Topic sentence): そのパラグラフの中心となる考え/情報(主題)を宣言する(そのパラグラフの要約文でもある)
(b) 支持文(supporting sentences)/展開文(discussion sentences): 主題を肉付け(支持または展開)する。具体的には下記のうちの幾つか ・説明する(理由などを述べる)(Explain)
・例を挙げる(Example)
・証拠を挙げる ・主題について、さらなる(具体的な/詳細な)情報を追加する ・主題に沿って、物語の展開を示す
つなぎ文(transitional (connecting, Linking) sentence)次のパラグラフへの遷移を示す
結語文(concluding sentence): そのパラグラフを要約する、話を締める。
実務文書では逆ピラミッド型が望ましい
逆ピラミッド型 主題文 支持文/展開文
逆ピラミッド型は、効率重視の技術/ビジネス文書で、特に米国系の文書でよく守られているが、それ以外の文書や米国以外では必ずしも顕著に守られてはいない
注2) 上記は標準的なパラグラフの構成であるが、このようなパラグラフィングのルールから外れている(特に主題文がない)パラグラフもある
パラグラフを書くプロセス(1):
ボトムアップ • 始めに個々のアイデアを作成(素文)し、その後それらを総合する 主題文を書く
開始 :素文(素材となる文)を書き出す
主題文(topic sentence)を作成する
同一パラグラフに属さない文を取り除く
(1 topic/paragraph の原則)
各素文を、論理的な順序で並び替える (首尾一貫性、結束性等)
文の形式(スタイル、主語、文法形式)を整える (並列性等)
終了 ・例: 調査/研究報告
パラグラフを書くプロセス(2):
トップダウン • 始めに主題を決め、主題文を書き、それをいくつかのより具体的な 文(素文)で支持/展開する
開始 :主題(main idea)を決める
主題文(topic sentence)を作成する
主題文を支持/展開する複数の文(素文)を書く
各素文を、論理的な順序で並べる(論理の流れを作る) (首尾一貫性、結束性等)
文の形式(スタイル、主語、文法形式)を整える (並列性等)
終了 ・例: 意見の表明/宣言
パラグラフの要件 • 統一性(unity):パラグラフが単一の主題(テーマ、トピック)でまと まっている
(a) 中心となる考え/情報(主題)を、主題文(通常は 1つ)で宣言(言及)する
(b) そのパラグラフ内の各文が、主題(中心となる考え/情報)に関連づけられている
• 首尾一貫性(coherence): 話が 1本の筋道に沿って自然に(論理 的に)流れている(この原則は、パラグラフ間の論理的つながりにも 適用される) 具体的には、 (a) 各文が秩序立って配列されている (b) 各種の結束表現(cohesive device/expression)により、各文間の結合が明確に示され ている(= 結束性 (cohesion)が良い)
• 構成/展開(clear organization/development): 論理の趣旨が充分 かつ明確である 具体的には、 (a) 充分な支持/展開: 主張を支持/展開することがらを、できれば 3個以上(理由、例等)挙 げる (b) 目的/主題に合った修辞パターンに従って論理を支持/展開する
統一性: 1 topic/paragraph の原則
(1) 書こうとする内容を分析・分解し、「1つのパラグラフに1つのトピッ ク」(1 topic/paragraph)の原則で複数のパラグラフに分ける
・書いているうちに、2つ以上のトピックが含まれることに気がついたら、パラ グラフを分ける
・一つのパラグラフの中で脇道にそれない
(2) そのパラグラフの主たる話題(主な論点/主張点、すなわち主題) を要約 する 1個の文を作り、それを主題文(topic sentence)とする
・その際、通常、そのパラグラフに書く内容(概念)を抽象化/一般化して表現 する(表現し直す)必要がある
・詳細情報ではなく、そのパラグラフ全体を一言で表す文である
(3) パラグラフの長さは、最大で十数行(百数十語)とする
・論文では長く、マニュアルでは短い傾向がある
首尾一貫性
(1): 順序配列
複数の項目(アイデアや文)を提示/記述する順序 (a) 一般論(全体論)(概念) → 具体論(各論) (general → specific)
“1 meaning/word”原則を優先(同義語等で置き換えない方が望ましい)
(エッセイや記事では、表現 のバリエーションを優先することが多い)
(c) 代名詞(特に指示代名詞 “this,” that”等) ・複数の文相互間のつながりが明確になる
(d) 並列法(parallelism)
・語句や文法構造を同じ形式で並べることにより、類似や対比の構造が明確 になる
(e) その他
注) “1 meaning/word” 原則をどれくらい逸脱するか、文書の種類等により判断する(マニュアル、論文、特許等では、キーワードは安易 に変えない) 首尾一貫性 、結束性
===============================
●●セミナーのご案内●●
*ZOOM(オンライン)で受講できます。
===============================
===============================
●ZOOM オンラインセミナー●
===============================
===============================
●「翻訳を前提にした日本語表現法」セミナー
― 翻訳前提の日本語表現法(文章読本)にむけて ―
多くの文章読本や表現法は日本語のみで読まれることを想定したものであった。それに対し近年は機械(AI)翻訳の発展に応じそれに適した日本語に関心があつまり機械翻訳を見据えた文章表現法が現れている。それらを紹介しながら従来の文章読本や表現法との違いを考察し、翻訳前提の文章表現法(文章)読本作成への導入的な考察を行う。
<セミナー目次(内容)>
1 従来の文章読本、日本語表現法の目的と特徴
2 機械(AI)翻訳に適した日本語の目的と特徴
2 従来の文章読本・日本語表現法との相違点
3 翻訳(AI)前提の日本語文章読本にむけての指針
●講師:猪塚 元 (いのづか はじめ)
・上智大学外国語学部ロシア語学科卒業、
同大学大学院言語学研究科 博士前期課程修了 文学修士
・日本語教育能力検定試験 合格
・國學院大學等で講師 大学院では音声学の研究室に所属し10年ほど日本
各地で方言のフィールドワークに従事
大学院終了語、辞書出版社で露和・和露、英和・英英などの辞書の編纂
また情報処理振興事業協会でコンピュータ用日本語辞書のプロジェクトに
従事。
著書
(共著:猪塚恵美子)『日本語の音声入門 新版』2022バベルプレス
(共著:猪塚恵美子)『日本語音声学の仕組み』2003研究社
(共著:井口厚夫他)『Japanese Now(英文)』1993荒竹出版
『キクタン ロシア語 入門編』2014アルク
(共著 原ダリア)『キクタン ロシア語 会話編』2017アルク
(共著 原ダリア)『キクタン ロシア語 初級編』2019アルク
翻訳
マリア・ラド『とても簡単な物語』(戯曲上演のための翻訳)
●セミナー日程: 2025年1月24日(金)15時~17時(日本時間)
<途中10分ほどの休憩が入る場合がございます>
●申込締切 : 2025年1月21日(火)(日本時間)
◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓
https://www.jta-net.or.jp/seminar_250124.html
===============================
===============================
●『MAD DOG Mc GRAW』で楽しむ絵本翻訳セミナー
― 読者がわくわくしてページをめくるような訳をめざして―
低年齢向けのユーモアあふれる絵本です。難しい単語はありませんが、
読者に伝わる日本語にするのは意外と大変。動詞や修飾語に気をつけて、
登場人物たちが実際どんな動きをしたのか、目に浮かぶように訳して
みたいものです。この絵本の邦訳はありません。参加者の皆さんとともに、
楽しい訳を探っていきたいと思います。
【セミナー目次】
・参加者から提出された訳の、気になる部分をピックアップしながら、解説
・講師の訳も合わせて読んでいきます
・参加者が特に悩んだり迷ったりした部分があれば、聞かせてください
・その動詞、実際はどんな動作?
・物語の流れが変わるところ
*このセミナーでは、ご参加者様にあらかじめ課題問題を解いていただき、
各人が提出した課題の回答を題材に解説も致します
*時間の都合でお送りいただいたご参加者様の回答を題材にできない
場合がありますのでご了承ください。また、課題の添削はございません
*課題の提出は任意でございます。
*課題提出締切:2025年2月13日(木) 午後3時まで(日本時間)
お早目にお申込み下さい!
●講師:小林 晶子 (こばやし あきこ)
・大学では国文学を専攻。
・小学校の読み聞かせ活動に参加して絵本の面白さに目覚める。
・3年間のカナダ滞在時に英語の絵本に触れ、帰国後
バベル・ユニバーシティーなどで絵本翻訳を学ぶ。
・『こおりのなみだ』で第18回いたばし国際絵本翻訳大賞英語部門大賞受賞。
翻訳作品 『どこかな あるかな さがしてね くまくんの クリスマス』
『「危険なジェーン」とよばれても』(いずれも岩崎書店)
監訳 『うさぎのピーターのゆかいな毎日』(バベルプレス)
●セミナー日程: 2025年2月19日(水) 15時~16時30分(日本時間)
●申込締切 : 2025年2月14日(金) (日本時間)
◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓
https://www.jta-net.or.jp/seminar_20250219.html
==============================
==============================
●●翻訳試験のご案内●●
*試験は全てインターネット受験ですからご自宅での受験となります。
●●実施日:2025年1月25日(土)(日本時間)
●●締切:2025年1月21日(火)(日本時間)
◆《出版翻訳能力検定試験》
1)第45回 ヤングアダルト・児童書翻訳能力検定試験(英日)
2)第44回 エンターテインメント小説翻訳能力検定試験
https://www.jta-net.or.jp/about_publication_exam.html
◆《ビジネス翻訳能力検定試験》
1) 第6回〔日英〕リーガル翻訳能力検定試験
2) 第6回〔日英〕医学・薬学翻訳能力検定試験
https://www.jta-net.or.jp/about_business_exam-2.html
◆第42回 フランス語翻訳能力検定試験 ノンフィクション分野
https://www.jta-net.or.jp/about_french_translation_exam.html
◆第42回 ドイツ語翻訳能力検定試験 ノンフィクション分野
https://www.jta-net.or.jp/about_german_translation_exam.html
◆第40回 翻訳プロジェクト・マネージャー資格上級試験
https://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm_2.html
===============================
情報提供 : 一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)
●一般社団法人 日本翻訳協会● https://www.jta-net.or.jp/
・設立:1986年10月
・Mission:「翻訳に対する社会の認識を高めること及び翻訳に関する技術及び知識を増進することによって翻訳の水準を高めること並びに翻訳者を支援してその自立を促進することを通じて、世界の文化交流及び産業経済の発展に寄与することを目的とする。」
===========================