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第61回 アメリカ書籍レポート

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより 第 61 回

 

アメリカ書籍レポート - 4 月独立系出版社協会(IBPA)が主催するベンジャミン・フランクリン賞ファイナリスト

柴田きえ美(バベル翻訳専門職大学院生)


 

独立系出版社協会(IBPA)が主催するベンジャミン・フランクリン賞のファイナリストが発表されました。
IBPA はもともと、1983 年に南カリフォルニアの小さな出版業者 15 社が寄り集まって立ち上げた協会でした。当時、そうした小規模な出版社では ABA(アメリカ書籍業協会)の主催する書籍イベントに参加する費用の捻出が難しかったため、自分たちで主催したのが始まりです。現在では、多くの独立系出版社や自費出版者にガイドラインやノウハウを共有しており、独立系出版業界に大きな影響力を持っています。
ベンジャミン・フランクリン賞もその取り組みの一環で、毎年4月に受賞者が発表されます。この賞の目的は、独立系出版社や自費出版者による優れた書籍を称え、出版業界での業績を表彰することです。
今年のファイナリストは 171 書籍、57 カテゴリーでそれぞれ金賞と銀賞が選出されます。授賞式は4月 26 日にデンバーで行われる予定です。授賞式と同時進行でパブリッシング・ユニバーシティー(業界関係者の交流会、意見交換の場)も設けられ、参加チケットは一般販売されており、だれでも購入できるようです。
それでは、今回発表されたファイナリストから、いくつかの作品をご紹介します。

 

<自己啓発部門>

Brave Thinking (2023)

 

  • 作:メアリー・モリッシー
  • 出版社:Page Two

作品について:
心の内で望む素晴らしい人生を、ただの夢として終わらせてしまうのですか。
堅実に築き上げ、実現させませんか。著者メアリー・モリッシーは、恐れや疑念、過去の失敗といった障壁を打破するのに役立つ Brave Thinking Institute を設立し、これまでに世界中の人々の夢の実現に助力してきた専門家です。本書では、より大きな夢を実現し理想の人生を歩む人々を紹介しています。その中には、十代で妊娠した過去を率直に語るモリッシー自身も含まれています。明確なビジョン、信念の転換、そして行動パターンにより、健康と健やかさ、恋愛、職業、そして時間と金銭的自由という4つの分野において、不可能を可能にしていくのです。
著者:
メアリー・モリッシーは、ベストセラー作家であると同時に 40 年以上にわたるコンサルタントでもあります。Brave Thinking Institute の創設者として講演やセミナーを行い、世界中の人々に精神的な活力、繁栄、真の成功達成する力を与えています。これまでに3度、国連演説に招かれたこともあり、ダライ・ラマ法王やネルソン・マンデラとの会談も行ってきました。著書『No Less Than Greatness』と『Building Your Field of Dreams』はベストセラーとなり、テレビで特別番組として放映されました。

 

<ティーン・フィクション部門>

The Last Saxon King (2023)

 

  • 作:アンドリュー・ヴァーガ
  • 出版社:Imbrifex Books
  • シリーズ名:A Jump in Time

作品について:
十六歳のダン・レンフルーは、気が付くと、1066 年のイングランドに佇んでいました。なぜそんなところにいるのか。それはダンの家系が代々、過去を旅し、時間の流れに発生したトラブルを解決する秘密のヒーローの系譜だったからでした。ダンが元の時代に戻るためには、アングロサクソン時代の正しい歴史に修復しなくてはなりません。けれども、北部ではバイキングがイングランドを荒廃させ、南部ではノルマン軍が今まさに侵略するかという恐慌状態です。新たに戴冠したイングランドの王ハロルド・ゴドウィンソン王は、その地位を守るべく必死になっています。ダンは、すべての出来事が歴史通り正しく進行するよう奮闘しなければなりません。ところが、こうした歴史の異変の陰に、世界の未来を脅かす邪悪な存在がいることがわかり…。本書が第 1 作目となる『A Jump in Time』シリーズの第 3 作目は、今年 2024 年の 9 月に発売予定です。

著者:
アンドリュー・ヴァーガは、母親から自身がバイキングの末裔であると聞かされたことをきっかけに、歴史に強い興味を持つようになりました。数百冊の歴史書を読み、無数の歴史映画を見て、トロント大学では英語科の歴史専門を専攻し学士号を取得しました。
これまでに何度もヨーロッパ各地の古城、博物館、歴史的名所を訪れています。趣味はフェンシングや剣術、剣道で、中世ヨーロッパの武器をコレクションしています。本シリーズを書くうえで特に歴史に忠実であることを重視し、それでいて読者を楽しませることができるよう細部に工夫を凝らしているそうです。

 

<ユーモア部門>

The Funny Moon (2023)

 

  • 作:クリス・リンカーン
  • 出版社:Imbrifex Books
  • 出版社:Rootstock Publishing

作品について:
結婚して 25 年の中年カップルが直面する様々な紆余曲折を描いたロマンス・コメディーです。マッサージ・セラピストのクレアは、動物やあの世の人々と話すことができます。夫のウォーリーは、疲れ果てた広告マンで小説家志望ですが、ゴルフに夢中になって現実逃避しています。夫に対する愛情はあるものの、最近はあまり好きではなくなってきたクレア。ある日、ウォーリーが夫婦喧嘩の末に家出してしまいます。そうして、クレアは自身が抱く恐怖や欠点、空想と向き合うこととなり、男好きな親友、年上の裕福な求婚者、太極拳の師匠、そして軽口ばかりの犬とも交流を深めていきます。ウォーリーの方はというと、友人のガレージの屋根裏部屋で借り暮らしをしており、小説家で成功する夢想に浸りつつ、最後の一人となった顧客を離すまいと奮闘していました。そんな時、思いがけず事態が好転すると、彼はクレアを取り戻そうと躍起になります。果たして、自由を新しく手に入れたクレアは、不安定な二人の結婚生活にもう一度戻るなんて、考えられるのでしょうか。

著者:
クリス・リンカーンは、クリオ賞(広告業界のオスカーと呼ばれる賞)を受賞した実績豊かなコピーライター兼クリエイティブディレクターです。2004 年にも、ノンフィクションの書籍『Playing the Game: Inside Athletic Recruiting in the Ivy League』を Nomad Press から出版し、広く称賛されています。この他、ニューイングランドを拠点とする雑誌や新聞でスポーツ、娯楽、芸術に関する記事を書いています。妻と共にバーモント州に在住。『The Funny Moon』は、クリス・リンカーン初のフィクション小説です。

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