第 56 回 世界の出版事情-アメリカ書籍レポート-柴田きえ美
世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより 第 56 回
アメリカ書籍レポート
10 月 スポーツの秋と読書の秋、一度に両方満喫しませんか?
柴田きえ美(バベル翻訳専門職大学院生)
夏の熱さも落ち着き、スポーツを楽しむのにはぴったりな季節となりました。そこで今回ご紹介したいのは、スポーツに関連した子供~ハイティーン向けの書籍です。
日本では体育の授業などで一通りのスポーツを体験する機会がありますが、US では場所によっては体育の授業が少なく、部活動の形態も日本とは異なるため、能動的にスポーツを体験しないと一切触れる機会がないまま大人になる子供も多いです。だから、書籍からでも様々なスポーツに触れられるのは良い機会だなと思います。
著:ネイサン・チェン
絵:ロレイン・ナム
邦訳:ウェイと金のスケートぐつ
翻訳:すがのりこ
出版社:新書館 (2023)
作品について :
「3 歳のある日。家族と一緒にアイスリンクに一歩を踏み出したウェイは、それ以来アイススケートが大好きになりました。アイスの上でつるつる滑り出し、みるみる力をつけていったウェイ。トレーニングに励み、8 歳のとき、初めての大会に挑むことになりました。しかし、家族一丸となって応援されるにつれ、ウェイはうまく滑れなくなってしまいます。失敗したらどうしよう、大会で負けたらどうしよう。
そういう不安からふさぎ込んでいると、お母さんが優しく声をかけてくれました。「勝ち負けじゃない。楽しんで滑っておいで」その言葉が思い詰めていたウェイの心を解きほぐし、大会では実力を発揮することができました。ネイサンの実体験をもとにした、スポーツに挑む子供たちへのメッセージが込められたお話です。絵本なのでデフォルメされてはいますが、足の動き、体のポスチャーが正確に描かれているイラストにも注目です。
著者:
2022 年北京オリンピックで金メダルを獲得したフィギュアスケーター。3 歳でスケートを始めたほか、バレエや体操、ピアノといった習い事も行っていた。勝ち負けにこだわらず、楽しく滑ることを心に決め、得意の四回転を武器にブレのない安定したパフォーマンスで観客を圧倒させる。また、ネイサンの衣装はシンプルなものが多く、派手さを競い合う男子フィギュアスケーターの中で、逆に新鮮なトレンドを生み出している。
作:Tom Glave
邦訳:なし
対象年齢:8-12 歳
作品について:
自分の好きなスポーツ選手について、お友達と語り合うことはありませんか?
この選手はここが素晴らしい、あの選手はあれが得意だ。どちらがどう優れているのか、想像してみたことはありませんか。この Versus シリーズは、ゴルフやフットボール、サッカーやアイスホッケーの有名選手たちを、想像の上で対決させたらどうなるか、比較して理解する解説書です。本書では現代の名ゴルファー、タイガー・ウッズ対歴史的ゴルファー、ジャック・ニコラスの特徴を捉え、ティーショット、アイアンの選択から、ショートゲーム、プレッシャーの中での冷静さを考察し、比較しています。また、章末のファクトボックスでは、各選手のプレーを並べて比較できるほか、用語集も掲載。読者それぞれが選ぶ、ナンバーワンは誰だろうか?
著者:
小中学生向けのスポーツ書籍を多数出版している
作:John Henry Hardy
邦訳:なし
対象年齢:13-18 歳
作品について :
弱小チームのチェロキースが、ついにライバルのクリークスを打ち負かす日はやってくるのか?ペンシルバニア州パインヴィルの小さな町の誰もが、バックス郡少年野球リーグの優勝決定戦が近づくにつれ、浮足立っていた。しかし、クリークスはズルをしており、裕福なスポンサーであるコンラッド・ビーミスが明らかに年齢制限を超える選手を投入していた。町の人々は何とかクリークスに一泡吹かせることを願った。そこに現れた救世主、ティミー。謎の多い彼は驚異的な腕を持っていた。信頼と友情の大切さ、健全なスポーツマンシップにのっとったフェアプレイなど見どころがたくさんあります。
著者:
ニュージャージー出身のジョン・ヘンリー・ハーディは、元米海兵隊。経営学の修士号を取得したあと、海兵隊の広報担当官として、多くの新聞や雑誌の記事を執筆した。発表した記事のひとつがジョージ・ワシントン名誉勲章を授与され、別の報道発表はフリーダム・ファンデーションの名誉証明書を授与された。本作のほか、ベトナム戦争を舞台にしたロマンス&歴史小説『Whisper In My Ear』などがある。