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2022年9月22日 第324号 World News Insight (ALUMNI編集室改め) 

発行:バベル翻訳専門職大学院 ALUMNI Association

Anywhere族のなれの果て―他山の石ではない

バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹
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以前、アメリカ第5の都市フィラデルフィアの惨状を以前動画で見ていただきました。

まるでゾンビたちが徘徊しているような有様。道路はゴミであふれ、不衛生きわまりない状態です。これがリアルなアメリカ社会。要するに、ドラッグにやられたジャンキーだらけなのです。なぜこのように体が前方に折れ曲がるようになってしまうのか。どうもこれは、Heroin Hunch と呼ばれるもののようです。これが、歴史あるフィラデルフィアの中心街、大都市で起きていることでした。

また、以前私が住んでいたサンフランシスコの現状を、ある方は以下の様に指摘していました。
I LEFT MY HEART IN SAN FRANCISCO、「想い出のサンフランシスコ」。フランクシナトラ、トニーベネットさんが魅力ある声で歌っていました。サンフランシスコの夜のケーブルカーにぶら下がって、丘の上から見るサンフランシスコの夜景に思いをはせたものです。

ところが、近頃のサンフランシスコは大変な状況になっているのです。アメリカ西海岸、ロスアンジェルスとならんで二大都市のひとつが、
City and County of San Francisco、通称「サンフランシスコ」です。経済、工業の中心地です、さらに世界5位の金融センターでもあります。

シナトラの歌にも出てくるスポット ゴールデン・ゲート・ブリッジ(金門橋)や、フィッシャーマンズワーフ、ツインピークス、そして市内を走る伝統あるケーブルカー。サンフランシスコは、一度は行って見たくなる魅力ある街でした。

ところが今は大きく様変わりしてしまいました。サンフランシスコの中心部が、ものすごい勢いで荒廃してきています。ひったくりや路上強盗、車上狙いが横行し、治安が極度に悪化してしまっているようなのです。街角にホームレスや麻薬常用者が増えてきて、街の店舗への押し込み強盗も常態化し、防犯を強化しても繰り返し狙われる店は少なくない状況だそうです。おまけに、サンフランシスコの中心部でラーメン+餃子、ビール一杯、なんと請求書が日本円で1万円だそうです。日本の物価高以上に海外のインフレが急速に進んでいるようです。

もちろんすべての都市がこうなっているわけではないと思います。しかし、歴史ある都市がこんな状況ならば、どこでも似たようなことが起きていると言っても過言ではないようです。

バイデン政権になってすぐ、メキシコとの国境をオープンにしてしまったため、不法移民とドラッグが入り放題なのだそうです。これを見て、本当にアメリカは終わりなんだと思う方も多いかもしれません。

しかし、これを他山の石と片づけられるものでしょうか。

世界が、特にヨーロッパ各国がグローバル化、移民の大量移入、それによって疲弊しきっている状況は皆様も様々なニュースでご承知でしょう。また、コロナパンデミックの要因は間違いなく、人の自由すぎる移動でしょう。ウォール街に代表される金融資本家に踊らされて、人、モノ、金の自由化に踊らされた結果、国体を破壊され今の悲惨な状況となったヨーロッパ各国。

「我が国は古来こういう国なので、こうありたい」、と堂々と自国を主張しにくくなっているのが昨今のヨーロッパ事情のようです。人、モノ、金、情報の自由な移動、グローバリズムを盲目的に良しとしている人、中国共産党をはじめ、文化的、物理的浸食を受け入れている人には、そもそもこの願い自体が意味のない事と言うのかもしれません。

例えば、方向転換したとはいえ、ドイツはドイツ人が、ドイツはこういう国だ、と堂々と言えない国になりつつあると言います。年間何十万人もの移民が、特にイスラム系の移民が流入してきたからで、かれらが自国のことを声高に主張すると、レイシスト呼ばわりされる国になりはて、おまけに、流入する移民たちは凶悪犯罪の温床にもなっていると言うのが現状のようです。

また、英国の国勢調査によれば、ロンドンの住人のうち「白人の英国人」が占める割合はすでに半数を切っているといいます。ロンドンの33地区のうち23地区で白人は少数派に転落していると言います。英国民に占めるキリスト教徒の割合も、過去10年間で72%から59%と大幅に減少し、2050年までには国民の三分の一まで減る見込みとのこと。

他には、例えばスウェーデンでも今後30年以内に主要都市すべてでスウェーデン人(スウェーデン系スウェーデン人)は少数派に転落するという予測もあります。

このように、グローバリスト主導の外国人労働者の受け入れに端を発する移民国家化によって、ヨーロッパ諸国は、民族構成や宗教や文化のあり方が大きく変容しつつあります。正面から十分に国民の意思を問うたわけでもなく、いつの間にか、「国のかたち」が、 なし崩し的に大きく変わってきてしまっています。その結果、ヨーロッパ文明は死に、ヨーロッパ人はかけがえのない故郷を失っていくのです。おまけに人命までも。

これらの惨状は、都市化、グローバル化を安易に推し進める日本の行く末のような気がします。世界第4位の移民大国、日本。留学生、技能実習生という名の下で、多くの不法就労者を生んでいます。いまは中国系からベトナム系移民に移行しつつあり、犯罪の多くはベトナム人によるものであると言います。これらの都市の現象はグローバリズムのなれの果てと言えないでしょうか。

Anywhere族、今だけ、金だけ、私だけ、個で生きていくことを信念に世界を渡り歩いていくグローバリスト。対して、地域共同体、国家共同体に属して縦横のナショナリズムを大事にするSomewhere族。一見、格好いいAnywhere族、私にもそんな素地が有ったように思いますが。これが上記のような悲惨な状況を招いたように思えてなりません。

今こそ、他山の石と考えずに、日本は、国、地方における共同体意識の欠如を反省し、安易な移民受け入れを辞め、健全なナショナリズムを取り戻すことが必要なのではないでしょうか。

【ナショナリズム 対 グローバリズム】

三橋貴明氏、ブログより

日本ではこれまで、移民政策をはじめ、人、モノ、サービスの自由な移動を
是とした、表の右側の「グローバリズム」に基づく政策ばかりが推進され、
ナショナリズムの根幹である「共同体」が破壊されてきたと言えます。

もっとも、共同体の破壊は、最近、始まったわけではなく、1945年8月15日。大東亜戦争に敗北した時点から始まっていたと考えるべきでしょうが。いわゆる「戦後」に、「縦のナショナリズム」である「歴史」が奪われていきます。いわゆる、自虐教育です。「日本は悪い国」と、教わり続けた国民が、「日本国」という共同体の維持発展に努めるはずもありません。

【両軸のナショナリズム】

更には、1979年の大平内閣の時から、日本政府を弱体化する「グローバリズム」の政策が始まりました。横軸のナショナリズムの破壊です。そして何と、その後、四十年も路線変更がなされずに、グローバリズム、緊縮財政、構造改革と日本国は次第に政府を小さくしていったのです。

そもそも、人間は共同体に属することなく生き延びることは困難ではないでしょうか。具体的には「権利の認定」「生産性向上」「安全保障確立」という三つの課題をクリアーするためにも、共同体が必要だったのです。

その共同体の価値を貶め、人間を「個」に分解していくのがグローバリズムというわけです。

今は、敗戦後75年間以上、間違え続けてきた、具体的には「共同体」の価値を貶めてきた日本国民に与えられた、ピンチであると同時に、共同体を取り戻す最高のチャンスなのでしょう。

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