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JTA News & Topics 」 第173回  

今回は、20221021に実施しましたビジネスにも役立つ英文契約書の和訳セミナー(主催:バベルユニバーシティ、後援:一般社団法人 日本翻訳協会)受講者の吉田ひろみさんよりセミナーレポートを投稿していただきましたので掲載しています。
情報提供:一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA) https://www.jta-net.or.jp/
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ビジネスにも役立つ英文契約書の和訳セミナー

  ― 基本を知れば、英文契約書は怖くない

講師:高田道子

 ・19913月 早稲田大学 法学部卒業
 ・19914月~19963月 ()東芝 法務部 国際提携業務担当
 ・1998年からフリーランスの法律翻訳者
 ・2001年よりバベルにて添削指導開始
  担当講座「英日日英契約書翻訳講座(初級)」
  「翻訳者の権利保護法」「サマライズ講座(要約英日文法)
  契約書篇」
 ・2012年より本研修講師担当

  • レポーター :吉田 ひろみ

バベル翻訳専門職大学院在籍中

米国ハワイ州在住。国際企業でフルタイム勤務の傍ら、子育てと学業の両立に奔走中。 

今回は、いつもお世話になっている高田先生(バベル翻訳専門職大学院  法律翻訳担当講師)のセミナーということで、いつもとはまた違うライブセミナーを楽しみにしておりました。一見取っ付きにくく難しそうな法律翻訳ですが、法律翻訳初心者の方でも、ポイントを掴めば以外とトライできるもの、という先生のお言葉は励みになります。法律翻訳の独特な言い回しや訳し方について、「そんなの学校で習わない(未来推量の助動詞shallwillなど)」というご家庭でのお子様とのやり取りを交えたエピソードには、自分と子供の日常が重なり、いつも以上に先生を身近に感じられました。日々、子供の意見から気付きをたくさんもらっては学び、とても参考になっております。英文契約書でよく使われる助動詞、用語の訳し方、定義語、仮定的用法、数量及び期間、範囲の訳し方などについてお話を伺いました。(エピソードに出てきた助動詞について、下記参照)

法律翻訳初心者の私でも安心して学習を進めることができるのは、親切できめ細やかなアドバイスと温かいサポートのお陰です。きっと、こんなに丁寧なご指導は他にはないと改めて感じながら、よい復習の機会となりました。感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。

1.契約書でよく使われる助動詞 shall/may/will/must

(1) shall 「義務」を表す助動詞

例) Seller is obligated to inform Buyer of any change in its Products.

=Seller shall inform Buyer of any change in its Products.

<shallの訳し方>

(a)「しなければならない」(特に強い義務表現)

「上から下」への命令のような意味合い。そのため、「ならない」という表現は、法令ではよく使いますが、契約書のように契約当事者同士が対等の立場である場合にはあまり使いません。 

(b)「するものとする」契約書では、基本的にはshallは「するものとする。」と訳します。ただし、特にこの義務は重要、契約の根幹にかかわる義務だと考える場合、「しなければならない」と訳すことはあります。

Seller shall inform Buyer of any change in its Products.

通知するものとする。

売主は、契約製品の変更を買主に 通知しなければならない。

通知する義務を有する。

・法令では、「ものとする」「しなければならない」いずれも使用する。

・shall を権利表現に使用しないこと!

×Employee shall have the right to receive compensation            〇Employee has the right to receive compensation

いずれの場合も「従業員は、報酬を受領する権利を有する」

日本語の「するものとする」は義務表現のため、権利表現につけません。

×「権利を有するものとする」

(2) may  「許可」「任意裁量」を表す助動詞

<訳し方> 「~することができる」

 (a)「許可」の例

Licensee may sublicense the Patent to Subsidiaries.

「ライセンシーは、本特許をその子会社にサブライセンスすることができる。」

 (b)「任意裁量」の例

Licensor may disclose additional information of the product, at its discretion when it finds it necessary.

「ライセンサーは、(ライセンサー)が必要と認めた場合、製品の追加情報を開示することができる。」

・契約書では「推量」の意味で使われることがある。

Confidential Information may contain information provided by third parties.

「秘密情報には、第三者によって提供された情報を含む場合がある。」

Seller may inspect and/or copy Buyer’s records regarding the number of flu test kits sold to Buyer during the previous calendar quarter.

*may

*“~inspect and/or copy”

A and/or B=“A and B”+“A or B”=A及びB+Aだけ+Bだけ= A若しくはB又はその両方

・選択肢が3つ以上の場合「A若しくはB又はそのいずれかの組合せ」

Seller will not sell any components, jigs, molds, equipment and/or half finished products relating to the Product to any third party.

「売主は、契約製品に関連する部品、治具、金型、器具若しくは半製品又はそのいずれかの組合せを第三者に売却しない。」 

・and/orが多用されている場合and/or=「又は」と訳しても良い。

Seller may inspect and/or copy Buyer’s and/or its subsidiaries’ records and/or books regarding sold and/or disposed products, half-finished products and/or components. 

「売主は、買主又はその子会社の販売又は処分された製品、半製品又は部品に関する記録又は帳簿を検査又は複写することができる。」

(訳注) 日本語の「又は」には、個別的な意味と共に  両方をあわせた意味がありますので、  and/orは 「又は」と訳しています。

*calendar quarter (暦四半期)

Calendar year=「暦年」=1/1~12/31

Fiscal year/Business year/Financial Year=「会計年度」「事業年度」=国・会社によって異なる

(3) Will「予見表現」の助動詞

<訳し方> 「~する」

*ただし、契約書では、Shall と同じ義務を表す助動詞として使われる場合もあるので注意。

Seller shall deliver the LCD manufacturing equipment to Buyer’s manufacturing site and Buyer will perform an

acceptance inspection and notify Seller of the result within fifteen (15) days after delivery thereof.

*shall と will の訳し分け

<予定されている行為>

売主(Seller) ⇒LCD 製造設備を買主の製造拠点に納入すること。売主の義務買主(Buyer) ⇒受入検査を行って、その結果を売主に通知すること。買主の義務

売主は、LCD 製造設備を買主の製造拠点に納入するものとし、買主は、当該設備の納入後十五(15)日以内に受入検査を行い、その結果を売主に通知する。

<訳注> 「この契約書では、義務表現の助動詞、shall と will が混在しています。起草者の意図を正確に訳出するために、shall は「~ものとする」、will は「~する」と訳しています。

売主は、LCD 製造設備を買主の製造拠点に納入しなければならず、買主は、当該設備の納入後十五(15)日以内に受入検査を行い、その結果を売主に通知するものとする。

*deliver 「納品」「引渡し」が良い。 以下「Legalese」で説明

*thereof 契約書で使われる場合、thereof は前に言及された本契約書以外の文書や物を指します。

delivery thereof = delivery of the LCD manufacturing equipment

(4) Must「要件」「資格」を表す助動詞

<訳し方> 「~しなければならない」

(例)He must finish high school to be eligible to apply to the XX Collage.”

「XX大学に応募する資格を得るためには、高校を卒業していなければならない。」

(例)The Customer must be located in Tokyo to apply for discount.

「顧客が割引を申請するには、東京に所在地がなければならない。」

「~東京に所在地があることを要件とする。」

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*ZOOM(オンライン)で受講できます。                           

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『ピーターラビット』で楽しく翻訳を学ぶセミナー(1)

― 『ピーターラビット』シリーズの石井桃子訳と

川上未映子の新訳を比較してわかること ―

石井桃子は多くの翻訳作品を生み出していますが、その中で最も有名なものは『クマのプーさん』の翻訳です。原文を読むうちにプーさんが自分の頭の中で動き、話し始めたと語っているように、ミルンの文体や『プーさん』のユーモア感覚は石井桃子と合っていたようです。それと対比されるのが、ビアトリクス・ポターの『ピーターラビット』シリーズです。ポターの本は、大変苦労して訳したと石井桃子は述べています。その理由の一つとして、ポターの文は、自分自身に欠けている単純さ、正確さ、緻密さで成り立っているからではないかと分析しています。また、簡潔な話を、絵とむきあうスペースに組み込まねばならないことにも苦労したということです。

今回のセミナーでは、第一作のPeter Rabbitと、その続編に当たるBenjamin Bunnyの石井桃子訳と川上未映子訳とを比較し、時代による変化とともに、絵本特有の翻訳の難しさについても考えます。

【セミナー目次】

1.石井桃子とビアトリクス・ポター

2.翻訳者としての川上未映子

3.Peter Rabbitの翻訳の比較

4.Benjamin Bunnyの翻訳の比較

5.昭和の翻訳と令和の翻訳

6.絵本翻訳の難しさ

  • 講師:夏目康子(ナツメ ヤスコ)

・大妻女子大学短期大学部英文科准教授

・青山学院大学、早稲田大学て゛も教鞭をとる

・マザーグース、英米児童文学、絵本を研究

<著書>

『マザーグースと絵本の世界』(岩崎美術社)

『不思議の国のマザーグース』(柏書房)

『英語で遊ぼう!マザーグースたのしさ再発見1~3』他

<翻訳>

『子どもはどのように絵本を読むのか』ヴィクター・ワトソン他編著

(共訳、柏書房)

『クリスマス百科事典』ジェリー・ボウラー著(共訳、柊風舎)

『アイルランドの風の花嫁』津川=マーダン江利子著(共訳、金星堂)他

  • セミナー日程: 202333日(金)15時~1630分(日本時間)
  • 申込締切 :2023228日(火)(日本時間)

◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓

https://www.jta-net.or.jp/seminar_20230303.html

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「年金を受給しながら趣味と翻訳業を楽しむには」セミナー

― 仕事(翻訳)と趣味のワークバランス ―

年金をもらいながら翻訳業と趣味を両方楽しめたら…。そんな夢のような生活を実現するためのヒントをお教えます。

子供たちが独立した後、あることがきっかけで、翻訳の仕事優先の生活から、趣味である旅行を楽しみながら仕事もする生活にシフトしてから4年以上経ちました。契約翻訳会社を一社に絞り、その会社から仕事を依頼されなくなったら翻訳者を引退するつもりでしたが、予想に反して参加するプロジェクトは増えるばかり。そこで、私の個人的経験を公開し、これから趣味と翻訳の仕事の両立を図っていきたい方に何らかのヒントになれば幸いです。

【セミナー目次】

1.いつになったら自分の人生を楽しめるのか?

2. 年金をもらいながら、現役生活を続けるには?

3.シニアになっても必要とされる翻訳者でいるには?

4. 翻訳業の辞め時

  • 講師:ハクセヴェルひろ子

・日本の大学卒業後、商社と外資系金融機関に勤務

1992年トルコに移住

1999Proz.com に登録

2005年バベル翻訳大学院にて翻訳修士号を取得

2008Proz.com Certified PRO認定会員

・現在トルコに在住し、実務翻訳に従事する傍ら、

趣味の旅行と仕事の両立を目指して奮闘中

  • セミナー日程: 2023426日(水) 15時~1630分(日本時間)
  • 申込締切 : 2023420日(木)(日本時間)

◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓

https://www.jta-net.or.jp/seminar_230426.html

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  • ●翻訳試験のご案内●●

*試験は全てインターネット受験ですからご自宅での受験となります。

  • ●実施日:2023218日(土)(日本時間)
  • ●締切:2023214日(火)(日本時間) 

◆《出版翻訳能力検定試験》

1) 第39回 絵本翻訳能力検定試験 (英日)

2) 第36回 スピリチュアル翻訳能力検定試験 (英日)

https://www.jta-net.or.jp/about_publication_exam.html 

◆《ビジネス翻訳能力検定試験》

1) 第52回 医学・薬学翻訳能力検定試験(英日・日英)

2) 第52回 特許翻訳能力検定試験(英日・日英)

https://www.jta-net.or.jp/about_business_exam-2.html 

◆《中国語翻訳能力検定試験》

1) 第37回 中日ビジネス一般翻訳能力検定試験

2) 第37回 日中ビジネス一般翻訳能力検定試験

3) 第37回 中国語リーガル翻訳能力検定試験

https://www.jta-net.or.jp/about_chinese_translation_exam.html 

◆第47回 翻訳プロジェクト・マネージャー資格基礎試験

https://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm.html

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情報提供 : 一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)

●一般社団法人 日本翻訳協会● https://www.jta-net.or.jp/ 
・設立:198610
Mission:「翻訳に対する社会の認識を高めること及び翻訳に関する技術及び知識を増進することによって翻訳の水準を高めること並びに翻訳者を支援してその自立を促進することを通じて、世界の文化交流及び産業経済の発展に寄与することを目的とする。」
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