欧米のライターズマーケット近況

第8回 世界のライターズ・マーケット近況(2025年3月)

ニュースレターによるマーケティング

前回、BookTokを話題に取り上げた際にも触れたように、SNSやプラットフォームはコンテンツを広める上で非常に有効ですが、依存しすぎるとリスクを伴います。そこで近年、ニュースレター(メールマガジン)を活用したマーケティング手法が改めて注目されています。ニュースレターを通じて読者とダイレクトにつながることができれば、本当に届けたい相手にコンテンツを直接配信できるほか、読者からのフィードバックを得やすくなるという利点もあります。
今回は、ライターやクリエイターがニュースレター形式でコンテンツを配信できるプラットフォーム「Substack」を紹介します。2017年にアメリカでサービスが開始されたSubstackは、日本発のメディアプラットフォーム「note」と似た点もありますが、異なる特徴も多いため、あわせて説明します。


ニュースレター配信

Substackは、個人のライターやクリエイターがニュースレター形式でコンテンツを配信し、収益化できるプラットフォームです。
noteと同様、Substackのホーム画面には注目の記事が一覧表示されており、読者はそこで興味のある記事や配信者を見つけた場合、「Subscribe」(登録)ボタンからメールアドレスを入力することで購読を開始できます。記事はその後、登録したメールアドレス宛に直接配信されます。

収益化の仕組み

ニュースレターは無料・有料いずれの形式でも配信可能で、有料の場合は月額または年額のサブスクリプションモデルを採用しています。
noteが記事単位での販売が主流であるのに対し、Substackは継続的な購読を前提とする点が特徴です。
プラットフォームの利用自体は無料ですが、収益が発生した場合、Substackはその10%を手数料として受け取ります。決済には「Stripe」というサービスを使用します。

読者との関係

Substackの最大の利点は、配信者が自らメールリストを所有し、自由に管理できる点です。他のソーシャルメディアと異なり、Substackを離れた後もメールアドレスを活用して読者との関係を継続できます。
noteの場合は、あくまでプラットフォーム内のフォロワー機能によって読者とつながる仕組みのため、SNS的な側面が強いのが特徴です。
また、Substack内でもコメント機能やディスカッションスペースを活用し、読者との交流を深めることができます。

簡単な操作性と多彩なコンテンツ形式

Substackが選ばれる理由のひとつは、コーディングや複雑な設定を必要とせず、プロ仕様のニュースレターを簡単に作成・配信できる操作性にあります。
テキストだけでなく、ポッドキャストや動画の配信にも対応しているため、多様なコンテンツを発信することが可能です。
ただし、現時点ではインターフェイスが英語のみで提供されているため、日本のユーザーにとってはややハードルが高いと感じられるかもしれません。

Substackの事例

ジャーナリストやブロガーが独立して活動する場として利用する例が多いようです。
例えば、歴史学者のHeather Cox Richardson氏は「Letters from an American」というニュースレターを運営し、アメリカ政治の背景にある歴史について分かりやすく解説しています。
また、環境ジャーナリストのEmily Atkin氏は、環境問題に特化したニュースレター「HEATED」と同名のポッドキャストを運営し、幅広い層から支持を集めています。

現在は英語での配信が主流ですが、中国語や日本語によるニュースレターも存在します。興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

参照
Substack:https://substack.com/home

参照
Heather Cox Richardson「Letters from an American」:https://heathercoxrichardson.substack.com

参照
Emily Atkin「HEATED」:https://heated.world/

<ライタープロフィール>

村山有紀(むらやま・ゆき)
IT・ビジネス翻訳歴10年以上。国内外の様々な場所での生活と子育ての
経験をふまえ、自分らしい発信のスタイルを模索中。