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第53回 アメリカ書籍レポート

第 53 回 アメリカ書籍レポート-柴田きえ美

世界の出版事情― 各国のバベル出版リサーチャーより 第 53 回
アメリカ書籍レポート
-4 月- 春 柴田きえ美(バベル翻訳専門職大学院生)

西海岸では、2 月、3 月と大雨が続いておりました。ここ数年カリフォルニアは水不足が続いていたものの、今回の記録的な大嵐はその降雨量に手放しで喜べるものではありませんでした。ベイエリア、LA のみならず、私の住む地域周辺でも高速道路が水没し帰宅困難となった人々も多々おりました。私も移動前に冠水道路をまめにチェックしなければならず、まるで迷路のように遠回りしながら帰宅しました。また、大雨と大風の影響で停電や通信障害も起こりました。しかしながら、3 月の終わりにようやく雨が止み、4 月は春らしい暖かさで迎えることができまし
た。相変わらず朝晩の冷え込みは厳しいのですが、街のそこかしこでイースターの飾り付けが見られるようになり、植物も葉は鮮やかな緑、花も徐々に咲き始めています。今回は春を感じられる書籍と、また今年 3 月に亡くなったアメリカの絵本作家、イアン・ファルコナー氏の作品「Olivia」にも触れたいと思います。

 


The Biggest Easter Basket Ever(2008)

著:スティーヴン・クロール
絵:ジェニー・バセット
邦訳:なし

作品について:
“Biggest Ever” シリーズの一つ。ネズミ村の子供達、デズモンドとクレイトンが主人公。イースターも近くなったある日、村長さんが「イースターバスケットのコンテストをします。一番大きなバスケットを作った人には、景品がありますよ」とお知らせをしました。そこでネズミの子供達は、それぞれが一番大きなバスケットを作ろうと奮闘します。ワラや枝を使って大きなバスケットを手作り。家族も協力し、バスケットに入れるウサギのぬいぐるみやキャンディー、マシュマロなどを詰めていくのですが、デズモンドとクレイトンは二人とも、肝心な卵を忘れてしまいました。慌ててお店に買いに行ったものの、慌てた二人はぶつかって卵が台無しに・・・。でも、そうだ。二人で協力して一番大きいバスケットを作れば、誰よりも大きいものが作れそうだね!伝統的なイースターの楽しみ方と、みんなで協力することの大切さを描いた作品です。

著者:
スティーヴン・クロールは、マンハッタンで生まれ育ち、2011 年 3 月 8 日にマンハッタンで亡くな
ったアメリカの児童作家。“Is Milton Missing?” (1975)でデビューし、本作品のシリーズを含め、作
品には子供達への教訓が描かれている。代表作の一つ、『ドタバタ・クリスマス』(訳:岸田衿子、
出版社:佑学社、1981)は日本でも翻訳出版されている。様々な人種、文化的背景の人々が住む街で
暮らしてきた経験は、彼の作品に大きく影響している。

 


Give Bees a Chance (2017)

著:Bethany Barton
邦題::なし

作品について:
子供向けノンフィクションの絵本です。蜂についてもっとよく知ろうというコンセプトの元、子供達にもわかりやすい表現で蜂の生態や人間の暮らしとの関わり、存在の重要性を説いています。25,000種類もの蜂がいること、ご存じでしたか?古代エジプトの墓からも蜂蜜が発見されており(しかも、まだ食べられる!)、養蜂の歴史は古いことが分かります。また、蜂はハチミツの生産だけでなく、その他様々な植物の育成にも影響があり、このまま蜂が減り続けると果物、野菜、ナッツなどは実を付けることができなくなり、私たちは食べるものがなくなってしまいます。確かに刺されると痛いのだけれど、全ての蜂が必ず人を刺すわけではないのです。蜂を守るためにも、むやみに殺さないこと、蜂に優しい花を育てることをみんなで心がけましょう。

著者:
LA 在住の女性で、過去に 3 回蜂に刺された経験があるものの、それでも自然を愛する気持ちは消えなか
ったとか。デビュー作 ”Trying to Love Spiders”(2015)は翌年に 3・4 年生が選ぶ、Children's
Choice Award を受賞した。学校訪問を積極的に行っており、虫や算数など、子供達が苦手とするものと
向き合い、良い方向へと変換する手伝いをしている。

 


オリビア (2000)

著:イアン・ファルコナー
訳:谷川俊太郎
出版社::あすなろ書房 (2001)

作品について:
作品について:
もともとは著者の姪っ子にクリスマスプレゼントとして作成した作品。元気溌剌な子豚の女の子が主人公のお話で、何にでも全力でチャレンジ。朝の着替えも、ダンスも、砂のお城を作るのだって、元気に取り組む。家族で美術を見た後は、おうちで自分も壁画に挑戦。ようやく寝る時間になっても、家中の本を読む気満々!見守る親も疲れちゃう。でも、愛らしいオリビアに微笑まずにはいられない。シリーズ化しアニメにもなりました。2001 年度コルデコッ
ト賞銀賞を受賞。
著者:
今年 3 月、63 歳で亡くなったイアン・ファルコナー氏の代表作。イラストレーターとして、雑誌「ニューヨーカー」の表紙イラストも手掛けていた。また、クラシック・バレエやオペラの舞台や衣装のデザインにも携わっていた。ドクター・スースの影響を受け、画面に多くを書き込まないシンプルなイラストと、モノトーンを基調としてごく最小限に赤などのアクセントを入れた洗練された色使いが特徴。

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