世界のブックフェアー

2024 年、インドが開く本の世界:ニューデリーとコルカタの国際ブックフェア

2024 年、インドのブックフェアが世界の注目を集めています。インドの出版市場は、多様な言語と広大な人口を背景に、経済成長とデジタル化の進展を受けて急速に成長しています。この市場拡大には、近年の識字率の向上も寄与しており、若者を中心に、より多くの人々が書籍を利用するようになったことを反映しています。インドの出版市場の規模は、2024 年には約 1 兆ルピー(2024 年 8 月現在 1 ルピー=約 1.7 円)に達すると予測されており、これは、米国、中国に次ぐ世界第三位の巨大市場となります。

このような盛り上がりのなか、2024 年に開催されたニューデリー・ワールド・ブックフェアとコルカタ国際ブックフェアは、インドの出版市場の活力を示すとともに、世界中の出版社や著者が参加する重要なイベントとなり、国内外から大きな注目を集めました。

ニューデリー・ワールド・ブックフェア(New Delhi World Book Fair)

2024年 5 月 22 日開催
https://www.nbtindia.gov.in/ndwbf2024/

インドの首都ニューデリーで開催されるニューデリー・ワールド・ブックフェアは、1972年に始まりました。今年 2024 年は、2 月 10 日から 18 日までの日程で開催され、出版社や書店など、世界中から 2000 以上の出展者が集まり、来場者数は一日平均 10 万人を記録しました。

今年のフェアのテーマは「多言語インド、生きた伝統」。インドの多様な言語環境と、それが世界の文学に与える影響が焦点にされ、多言語出版の推進と異文化間の協力を促進するプログラムが数多く組まれました。また、今回特に注目された話題の一つは、デジタル出版と著作権の国際取引であり、新しいテクノロジーを取り入れた出版プロセスのデモンストレーションが行われました。

2024 年のニューデリー・ワールド・ブックフェアは、インドだけでなく世界中の文学と出版に新たな光を当てるイベントとして、その成功を確固たるものとしました。このフェアは、出版業界のプロフェッショナルだけでなく、一般の読者にとっても、多様な文化とアイデアが交差する場として、貴重な体験を提供し続けています。

コルカタ国際ブックフェア(International Kolkata Book Fair)

2024年 5 月 22 日開催
https://www.kolkatabookfair.net/

2024 年 1 月 18 日から 31 日まで開催された第 47 回コルカタ国際ブックフェアは、290 万人という記録的な来場者を迎えて幕を閉じました。この来場者数は、ブックフェアとしては世界最高となります。会場には千以上のブースが設置され、英語を含むインドの 22 の公用語で書かれた本はもちろん、世界の主要な言語で書かれた多種多様な書籍が出品されました。また、今回のテーマ国にはイギリスが選ばれ、イギリスの文学、芸術、科学に関する展示やトーク、議論が行われ、イギリスからの著名な学者や作家が参加しました 。

来場者数ではニューデリー・ワールド・ブックフェアを上回るコルカタ国際ブックフェアですが、出版業界の専門家向けという側面が強いニューデリーとは異なり、より一般大衆向けのイベントとして位置づけられています。トークショーやディスカッションをはじめ、本や文化を紹介する盛りだくさんのプログラムは、一般の読書愛好家に向けたものが多く、家族連れや学生から高齢者まで誰もが楽しめることもこのイベントの特徴です。

このフェアは、世界各国の文化や文学の交流の場として、出版にかかわる人々のネットワーキングの場として、また古書や限定版、絶版書など、なかなか見つからない貴重な本の発見の場としても評価され、多様な人々の関心を集めています。

これらのブックフェアは、インドがいかに多様な言語と文化を持つ国であるかを示しました。出版業界だけでなく、一般の訪問者にとっても、世界各地の文学と文化に触れる絶好の機会が提供され、インドのブックフェア市場が教育の推進、文化の交流、そして国際的なビジネスの橋渡し役としての役割を果たしていることが明らかになりました。インドのブックフェア市場は、今後も世界中の出版業界において、さらに重要な位置を占めることでしょう。

<ライタープロフィール>

荒木智子(あらき・ともこ)
立命館大学英米文学専攻卒業。バベル翻訳専門職大学院法律翻訳専攻修士課程修了。
特許翻訳歴約 10 年。心も体も健康に 150歳まで生きるのが目標。完全菜食主義で、野菜は自然農で自給を目指す。自然の美に感動しながら田舎で楽しく暮らしています。

 

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