ブックコミュニティ第7回
新しいムーブメント
かつては「読書会」と呼ばれ、最近では「ブッククラブ」と称される集まりとは、事前に決められた本を参加者が読み、集まって感想や意見を交換する活動のこと。この形式はアメリカで1700年代後半に流行し、知識を共有し合う場として発展してきました。現代になって、なぜ再びブッククラブが注目を集めているのでしょうか? その背景には、社会的な変化や個人の価値観の変容があります。
特に、Z世代の女性がこのムーブメントをけん引していると言われています。パンデミックの影響で孤独感を強く感じた経験から、対面で人とつながる活動に、あらためて強い関心を示していることや、スマートフォンやパソコンを長時間見続けることに疲れ、デジタルの世界から離れて自分の時間を充実させたいと考える人が増えていることが原因と分析されています。
ブッククラブのスタイルは、時代に合わせて進化しています。かつては主催者の家で開催されていた読書会が、今ではレストラン、カフェ、書店など多様な場所に移り、よりカジュアルで参加しやすい形式に変化しています。また、ブッククラブをデートイベントやランニングイベントと組み合わせることで、より多くの人々が興味を持ち参加する工夫も見られます。これにより、ブッククラブは単なる本の議論の場から、他者と意見を共有し、新しいつながりを築く「コミュニティ」の場へと発展しているのです。
今回は、そんなブッククラブでの新しいムーブメントをご紹介します。
1.「ロマンタジー」ジャンルの人気
「ロマンタジー」とは、「ロマンス」と「ファンタジー」を組み合わせたジャンルで、恋愛要素とファンタジー世界が一体となった物語を描きます。このジャンルは若者を中心に大きな注目を集めています。一般的には、複雑な世界設定や魔法、冒険を背景に、主人公たちのロマンスが展開されます。有名な作品としては、『A Court of Thorns and Roses』シリーズや『The Wrath & The Dawn』シリーズが挙げられます。ロマンタジーは、物語に深みを与える恋愛のダイナミクスとファンタジー要素が組み合わせられており、現実からのエスケープ感を楽しみたい読者に特に支持されています。
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2.「サイレント・ブッククラブ」の台頭
「サイレント・ブッククラブ」は、通常のディスカッション形式の読書会とは異なり、参加者が集まって静かに本を読むことに焦点を当てたブッククラブです。会の冒頭や終了時に短い会話があることもありますが、主な活動は個々が持参した本を静かに読むことにあります。この形式は、読書を通じた静かな時間を楽しむことにより、日常の喧騒から一時的に逃れることができると評価されています。マインドフルネスや個人の時間を重視するトレンドと合致し、特に大都市の忙しいライフスタイルにマッチしています。欧米では「Introvert-Friendly(内向的な人向き)」として人気が急上昇しています。
Silent Book Club:世界中で活動するサイレント・ブッククラブの公式サイト。
3. 読書会の立ち上げ支援ツール
デジタルツールの発展により、読書会も大きく進化しています。特に「BOOKCLUBS」などのプラットフォームは、世界中の人々が簡単にオンラインで読書会を開いたり参加したりすることを可能にしています。このサイトやアプリでは、クラブを簡単に立ち上げ、参加者を招待し、読書後に意見を交換する場を提供します。参加者の多くは女性で、特に共通のテーマや作者に基づいたクラブが人気です。例えば、特定のジェンダー問題、歴史的な作品、あるいは自己啓発本に焦点を当てた読書会が多く見られます。パンデミック時に一層人気が高まり、現在も続いているこのトレンドは、人々の読書体験の新たな形を生み出しています。
BOOKCLUBS:世界中のブッククラブで愛されているサイト/アプリ。
このように、ブッククラブはそれぞれのニーズやライフスタイルに合わせて、個別の読書体験や共感を通じた共有方法を提案しています。これにより、読書の文化的価値を広げる新しいアプローチとして注目されており、現代社会でますます重要な役割を果たしています。