新着情報

第8回 アメリカ大陸最大の本の祭典-グアダラハラ国際ブックフェア

グアダラハラ国際ブックフェア(FIL)は、1987 年にはじめてメキシコのグアダラハラ大学によって創設されて以来着実に知名度を上げ、現在ではアメリカ大陸最大の書籍イベントにまで成長しました。FIL は、世界中の文学愛好家や業界関係者が集まる、スペイン語圏で最も重要なブックフェアとみなされています。このフェアは、他の国際ブックフェアと同様に、ワークショップ、セミナー、ネットワーキングイベントなどを通して、新人作家や出版業界関係者に貴重なコネクション作りの機会を与えます。しかし、それだけにとどまらず、「文化の祭典」という側面も持つのがこのフェアの特徴です。来場者は、美術、映画、演劇、ライブパフォーマンス、料理など、本という枠に縛られないさまざまな文化イベントを会場内だけでなく、グアダラハラの街全体で楽しむことができます。

第 38 回グアダラハラ国際ブックフェアは、2024 年 11 月 30 日から 12 月 8 日にかけて開催されました。FIL は、2020 年にパンデミックによるバーチャル開催を余儀なくされたあと、翌年には会場での開催を再開したものの、入場者数は振るいませんでした。しかし昨年には、パンデミック前の数字を取り戻し、今年はさらに昨年を 5 万人ほど上回る 90 万 7300 人が会場を訪れ、64 カ国から 2,763 社の出版社が参加するなど、予想を上回る大盛況のうちに幕を閉じました。特に、FIL チルドレン・エリアは大成功を収め、若い世代 194,239 人がワークショップやショーに参加しました。また、フェアの売り上げは 35% 増となり、2024 年の FIL は、さまざまな記録を更新しています。

主賓国として招かれたスペインからは、著名な作家やアーティストを含む 300 人を超える代表団が参加しましたが、これは史上最大規模の主賓国代表団です。ブックフェアの参加者のうち約 14 万人がスペイン館を訪れ、8 千冊以上の本が販売されました。また、9 日間にわたるコンサートには、1 万人近くの観客が訪れました。今回のフェアを通して、スペインは、ラテンアメリカとの深い文化的つながりを強調し、FIL は、スペインの参加に感謝し、バレンシア地方のハリケーン被災者に対する 75,000 ユーロの寄付を発表しました。

毎年 FIL において授賞式が行われる FIL 文学賞は、スペイン語、フランス語、イタリア語、ポルトガス語などを含むロマンス語で執筆されたロマンス語文学の分野で最も権威のある賞の一つで、作家の全キャリアにわたる文学的貢献をたたえるものです。受賞者に 15 万ドルもの多額の賞金が授与されることも特徴となっています。今年は、ポルトガル語作家のミア・クート氏がこの賞を受賞しました。クート氏はモザンビーク人で、アフリカ人作家として初の受賞となります。受賞の主な理由としては、その革新的な言語表現、アフリカ文学の可視化への貢献、自然との調和や環境問題に対する新たな視点の提供などが挙げられています。

また、今回のフェアには、ノーベル文学賞受賞者であるアブドゥルラザク・グルナ氏が参加し注目を集めました。グルナ氏は、植民地主義がアフリカに与えた影響、移民や難民の問題、社会問題に対する文学の役割などについて深く掘り下げ、参加者に強い印象を与えました。

2024 年、グアダラハラ国際ブックフェアは、来場者数や参加者数などで大成功を収め、その存在感を世界にアピールしました。主賓都市としてバルセロナを迎える 2025 年の開催が期待されます。

<ライタープロフィール>

荒木智子(あらき・さとこ)
立命館大学英米文学専攻卒業。バベル翻訳専門職大学院法律翻訳専攻修士課程修了。
特許翻訳歴約 10 年。心も体も健康に 150歳まで生きるのが目標。完全菜食主義で、野菜は自然農で自給を目指す。自然の美に感動しながら田舎で楽しく暮らしています。

0
おすすめの記事