WEB雑誌 The Professional Writer誌 発刊

‘翻訳’を超えて――既成概念にとらわれない

バベルグループ代表 堀田都茂樹
バベルグループ
代表
堀田都茂樹

バベルは2024年に創立50周年を迎えました。

この半世紀、私たちは、約500号を発刊した月刊誌「翻訳の世界」、米国連邦政府の認証を受けて20年にわたり運営した米国翻訳大学院、そしてその知的・人的蓄積を基に開設した知求翻訳図書館を通じて、未訳の魅力的な作品を発掘し、出版社に提案、あるいは自ら翻訳出版を行ってきました。

その中で、多くの翻訳者が自身の翻訳ドメインを見つけ、翻訳者としての使命・ミッションを探求してきました。

そして、2025年――バベルは新たなステージへと踏み出します。
翻訳者は単なる「翻訳」を超え、自らのドメインやミッションに基づき、自分の言葉で表現し、創作するという、新たなキャリア――翻訳ライター(Trans-writer)として歩み始める時代です。

このチャレンジを支援するために、バベルグループは以下の3つの場を用意しました。

  • 📖 新刊WEB雑誌『The Professional Writer
  • ✍️ 「読みやすい日本語を書くためのルール」講座・単行本
  • 📝 「読みやすい日本語を書く検定」試験

ここで改めて問いかけます。
翻訳とライティングの距離、そして翻訳者とライターの関係性について、共に考えてみませんか?


大谷翔平の成功に学ぶ――既成概念を超える力

世界的に活躍するドジャースの大谷翔平選手。その成功の秘訣は、既成概念にとらわれない姿勢にあると私は思います。

私自身、高校球児として甲子園を目指し、ピッチャーとしてプレーしていました。叔父が巨人軍・南海フォークスの投手だったこともあり、社会人野球への道も視野に入れていました。

しかし、「投手は投げることに専念すべき」という既成概念に縛られ、打撃や盗塁といった他のスキルを諦めてしまったのです。

一方、大谷選手は、幼い頃からのオールラウンドプレイヤーとしての姿勢を貫きました。
投手でありながら、打撃、走塁でも活躍する「二刀流」「三刀流」スタイルを確立できたのは、既成概念を破る勇気と、卓越した基礎体力があったからです。

翻訳者にも同じことが言えます。
ただ翻訳するだけでなく、広い視野と知的総合力を備えることで、ライターとしても自立できるようになるのです。


翻訳者とライターを分けない時代へ

「翻訳者」と「ライター」は別の職業である。
この考え方こそ、いわばLimited Belief(限定された思い込み)です。

この思い込みを手放すことで、翻訳者は自らの可能性を大きく広げることができます。

ここで、バベルが翻訳大学院教育を通じて確立してきた6つのコンピタンシー(Competencies)をご紹介します:

  • ① Language Competence(言語表現力)
  • ② Cultural Competence(一般教養力)
  • ③ Expert Competence(専門知識)
  • ④ IT Competence(生成AI・支援ツール駆使編集力)
  • ⑤ Managerial Competence(マネジメント力・柔軟性)
  • ⑥ Humanic Competence(使命感・人間関係構築力・人間力)

これらの力を身につけることで、翻訳でもライティングでも大きな力を発揮できます。
特に6つ目の「使命感」は、他のすべてを統合する中核的な能力です。


長寿企業と二刀流の共通点

日本には、100年、200年、300年と続く企業が世界で最も多く存在しています。
世界最古の現存企業も日本にあるという事実はご存じでしょうか?

その長寿の秘訣は、「復元力(Resilience)」と「使命感(Mission)」にあると言われます。

翻訳者もまた、この2つの力を持つことで、「二刀流」「三刀流」のような多様なキャリアを築くことができるのです。

「既成概念にとらわれない」――これは、バベルが創立以来掲げてきた理念です。

この精神こそが、翻訳者・ライター・そしてあらゆるプロフェッショナルにとっての成功の鍵であると、私は確信しています。