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第54回 アメリカ書籍レポート

第 54 回 アメリカ書籍レポート-柴田きえ美

世界の出版事情― 各国のバベル出版リサーチャーより第 54 回
アメリカ書籍レポート
-6 月- 父の日特集 柴田きえ美(バベル翻訳専門職大学院生)

ここ最近、『7つの習慣』(著:スティーブン・R・コヴィー博士)を様々なところで目撃します。書店はもちろん、スーパーや図書館、果ては古書店でも目立つ場所に設置されているのです。
再び人気急上昇したのか、または特集が組まれているのかわかりませんが、何年たっても変わらずに通用する書籍なのだと感じました。(または、実は読みかけて途中で“積読”になっているので、早く読み終えなければならない、という何らかのリマインドなのかもしれません。)
6月ですので、書店でも父の日特集が組まれています。働く世代のお父さんたちには『7つの習慣』のようなビジネス書は通年通して人気ですが、今回はそうしたビジネス・ジャンル以外で興味深い書籍をご紹介します。小説やノンフィクション・クライム本など各種ありましたが、完全にオフの日に読みたい書籍に着目してみました。アクションヒーローの舞台裏、SF ファンタジーのアメリカンコミック、そしてアメリカで注目度の高いスポーツの一つ、野球の総まとめ本、ぜひ手に取ってみてくださいね。

 


The Last Action Heroes(2023)

著:Nick de Semlyen
邦訳:なし

作品について:
80 年代から 90 年代のハリウッドを席巻したアクション映画のヒーローたち。彼らの活躍の舞台の裏側を書き連ねた作品です。誰もが知ってる『ランボー』、『ターミネーター』『ダイ・ハード』の撮影秘話はどんなものなのでしょうか。アクション俳優として黄金時代を気づき上げた、シルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、スティーブン・セガールらや、友人、知人、撮影協力者などが当時の出来事を語るインタビューを通して、当時の撮影風景がまざまざとリアルに描写されます。彼らアクションヒーローの時代はやがて、1993 年『ジュラシックパーク』の台頭とともに、筋肉隆々の男性が活躍する時代は幕を下ろしたのです。

著者:
ニック・デ・セムライエン(Nick de Semlyen )は、世界最大の映画雑誌「エンパイア」の編集者であり、2019 年には、コメディ映画のスターたちに焦点を当てた『ワイルド&クレイジー・ガイズ』(Wild and Crazy Guys)を出版している。映画ジャーナリストとして、ローリングストーン誌、スタッフ誌、タイムアウト誌にも寄稿している。ロンドン在住。

 


サーガ 1 (2012)

作:ブライアン・K・ヴォーン
画:フィオナ・ステイプルズ
翻訳:椎名ゆかり
出版社:小学館集英社プロダクション (2015)
シリーズ::Saga (16 歳以上対象)

作品について:
大人向けグラフィックノベル(アメコミ)Saga シリーズの第1巻。アメコミというとスーパーマンやスパイダーマン、バットマンなどのアベンジャーシリーズが最もよく知られていますが、こちらの『Saga』は 2012 年から発刊し、現在でも人気の高い高年齢層向けコミックです。2013 年、タイム誌のグラフィックノベル・トップ 10 に選ばれ、同年、ヒューゴー賞(Best Graphic Story)を受賞しました。その後も優秀な米国発行漫画に送られるアイズナー賞やハーベイ賞を次々と受賞しています。作画担当の Fiona Staples の画風は作りが繊細で、一般的なアメコミのように色彩も鮮やかです。ストーリーは、激化する宇宙戦争で対立する異世界の二人が恋に落ち、危ういながらも懸命に小さな家族を形成しようとする、ファンタジーと SF が融合した物語です。終わることのない異世界同士の諍い、生き残りをかけた人々の戦いと愛をドラマチックに描いた作品です

著者:
ブライアン・K・ヴォーンは、LA 在住の漫画原作者。本作品のほかにも、『Y : ザラストマン』(誠文堂新光社、2016 年、訳:江原, 健)も出版している。本作品の世界観は、子供の時から着想しており、退屈な数学の時間に世界観を作りこんでいったのだそう。また、有名な米ドラマ『Lost』のうち3シーズンの脚本を手掛けている。

 


The Baseball 100 (2023)

著:Joe Posnanski
邦訳:なし

作品について:
長きにわたりスポーツ・ジャーナリストとして活躍してきた著者が野球の歴史と伝説的選手たちを総まとめした一冊。100 人の歴史に残る名選手たちのその来歴、人柄、成績といったプロファイルを語り、野球の歴史に対する彼
らの影響力について振り返ります。Clayton Kershaw はピッチャーとして、21 世紀の野球界でどのような活躍をしたのでしょうか。Hank Aaron と Babe Ruth の来歴と影響力はどのように異なるのでしょうか。また、当時の政策上分断されていたネグロ・リーグにもスポットライトを当て、黙殺されてきた才能にも着目します。アメリカの野球ファンにとっては、実に興味深い内容となるでしょう。
著者:
Joe Posnanski は、長きにわたり The Athletic、Sports Illustrated、NBC Sports、The Kansas City Star で執筆してきた、著名なスポーツ・ジャーナリスト。これまで、『The Secret of Golf』を含む 6 冊を出版し、ニューヨークタイムズのベストセラー1 位を獲得しています。また、5 つの団体からナショナル・スポーツライター・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、エミー賞を 2 回受賞しました。ノースカロライナ州在住。

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