みなさんは、文章を書いていて「もっと簡潔にまとめたい」「読みやすく整えたい」と感じたことはありませんか?

推敲は誰にとっても悩ましい作業ですが、AIを活用すれば、文章のチェックやリライトをスピーディかつ効果的に進めることができます。

とはいえ、「それならもう使っているよ」という方も少なくないでしょう。ただし、漠然と「直して」とお願いするだけでは、的外れな提案が延々と続き、かえって時間を奪われてしまうこともこともあります。

大切なのは、AIに「どこを」「どのように」改善してほしいかを具体的に伝えることです。ひと手間かけて指示を明確にすれば、AIはみなさんの意図を汲み取り、驚くほど的確なリライト案を返してくれます。

今回は、AIを使った推敲・リライトの基本から、実践的な活用法までを、具体例とともにご紹介します。

1. AIに文章をチェックさせる方法

AIは、文章の文法・構成・表現をチェックするのに非常に便利です。

ただし、AIに全部お願いしますと雑に投げるのではなく、
(1)粗検出 → (2)構造診断 → (3)スタイル最適化の順に働きかけ、ごちゃごちゃした提案を整理して受け取ることが大切です。

(1)粗検出(誤字・重複・曖昧表現)
「とりあえず全部直しました」というAIの玉石混交の提案を避けるために、ミスのチェックを先に済ませる。
プロンプトの例:
「以下の文章で、①誤字脱字 ②重複語 ③意味が曖昧な表現を抜き出し、修正案を箇条書きにしてください。」
(2)構造診断(論理の飛躍・段落構成)
文章の芯がブレていないか確認する。
プロンプトの例:
 各段落を「要旨→根拠→結論」の順で整理し、再構成案を示してください。
(3)スタイル最適化(読者像/媒体に合わせる)
読者像が変われば「適切な文体」も変わるため、最終段階で調整する。
プロンプトの例:
ターゲット={    }、媒体={    }。専門用語には10語以内の解説を添えて書き直してください。

このように、ジョブを細分化したほうが、AIの提案が「混線」しません。

実際の操作手順
  1. 原稿全体をコピー → AI入力欄に貼り付け。
  2. 上表の(1)~(3)を別々のメッセージで順番に送る。
  3. 出力ごとに「ここは採用/ここは保留」と自分の判断を挟む。
  4. 最後に「まとめて清書」をAIに頼むか、自分で仕上げる。

ワンポイント:最初から「全部直して!」と丸投げすると、AIは「何を優先すべきか」がわからず、冗長な提案を大量に返す傾向があります。目的別に分けて指示することで、修正作業の混乱を防げます。

2. 簡潔で伝わりやすい文章へのリライト

文章が長くなると、読者に伝わりにくくなります。

リライトのポイント
  • 無駄な言葉を削る
  • 一文を短くする
  • シンプルな表現にする

例:冗長な文章をリライト

プロンプトの例:
以下の文章を、[リライトのポイント]に注意して簡潔で伝わりやすい文章にリライトして。
([リライトのポイント]・無駄な言葉を削る・一文を短くする・シンプルな表現にする)
リライト前(冗長な文章) リライト後(簡潔な文章)
このスマートウォッチは、健康を管理するためにとても役立つ機能が多数搭載されており、特に心拍数のモニタリングや睡眠トラッキング機能が優れています。 このスマートウォッチは健康管理機能が充実しています。なかでも心拍数モニターと睡眠トラッカーが優秀です。

ポイント

  • 「とても役立つ機能が多数搭載されており」「健康管理機能が充実しています」
    【解説】
    無駄な言葉を削る・シンプルな表現
    「とても役立つ機能が多数搭載されており」を「健康管理機能が充実」に凝縮し、抽象語「多数搭載」も削除。
  • 「~多数搭載されており、特に心拍数の~」「~しています。なかでも心拍数モニター~」
    【解説】
    一文を短く分割
    元文は並列を含む長文だったので、前半と後半に分割。
    シンプルな語句
    「モニタリングモニター」「トラッキングトラッカー」「優れています優秀です」と短く言い換え。

まとめると:

  • 不要語の削除・語句の凝縮で文字数を圧縮。
  • 1文を2文に分け、主語-述語の関係を明確化。
  • 専門語を短い名詞形に統一し、読みやすさを向上。

3. 文体の統一と整え方

文章の文体がバラバラだと、読者に違和感を与えます。

文体を統一するポイント
  • 語尾を揃える(です・ます調 or だ・である調)
  • 一貫したトーンを保つ(フォーマル or カジュアル)
  • 主語の統一(「私」or「筆者」or 無し)

例:文体がバラバラな文章を修正
「文体を統一するポイント」を参考にして、ご自分でプロンプトを考えてみましょう。

リライト前(文体が統一されていない) リライト後(文体を統一)
このスマートウォッチは、健康を管理するのに便利です。心拍数が測定できる。さらに、睡眠の質もチェック可能なので、ユーザーは自分の健康状態を知ることができるのだ。 このスマートウォッチは、健康管理に便利です。心拍数を測定でき、睡眠の質もチェックできます。これにより、自分の健康状態を把握しやすくなります。

ポイント

  • 「測定できる」「チェック可能」「測定でき、チェックできます」に統一。
  • 「できるのだ」「把握しやすくなります」に変更し、フォーマルな印象に。

4. 実践:「AIに文章を添削させてみよう」

最後に、ChatGPTを使って文章をリライトする実例を見てみましょう。
ここでは、(1)粗検出2)構造診断3)スタイル最適化の手順で試してみます。

1)粗検出

今回は、筆者がAIを活用して作成したブログ記事の一部を、手順に従ってリライトしてみましょう。
参考:<AI活用>翻訳ライターのためのニュース英語解説 https://youtu.be/x9am_E-O_z8

<作成したブログ記事のオリジナル>

トランプ大統領がPBSNPRへの連邦資金提供を停止する大統領令に署名した背景には、単なる財政削減を超えた政治的意図が見え隠れする。大統領はこれらの公共放送機関が「急進的で覚醒的なプロパガンダ」を広めていると非難し、偏向報道の是正を名目に資金カットを正当化した。しかし、公共放送の役割は単なるニュース提供にとどまらない。広告収入に依存しない中立的な立場から、少数派の声や地域社会の課題を拾い上げ、商業メディアでは報じられにくいテーマに光を当てる。それゆえ公共放送は「公共の利益」に奉仕する存在として、民主主義社会における多様な情報源の一角を担ってきた。

プロンプト(粗検出):
以下の文章で、誤字脱字 重複語 意味が曖昧な表現を抜き出し、修正案を箇条書きにしてください。
<作成したブログ記事のオリジナル>を入力)

ChatGPT:

以下は、該当の文章に対する①誤字脱字②重複語③意味が曖昧な表現の抜き出しと修正案です。

① 誤字・脱字
特に重大な誤字脱字は見受けられませんが、表記揺れや読みやすさの点で若干の改善の余地があります。
• 「見え隠れする」
◦指摘内容:誤字ではないが、硬い文章の中でやや口語的。
◦修正案:
・「垣間見える」
・「透けて見える」

② 重複語
• 「名目に資金カットを正当化した」
◦指摘内容:「名目」と「正当化」は類似の意味で重なりやすく、やや冗長。
◦ 修正案:
・「偏向報道の是正を理由に資金カットを行った」
・「偏向報道を問題視し、資金提供の打ち切りを正当化した」

③ 意味が曖昧な表現
• 「急進的で覚醒的なプロパガンダ」
◦指摘内容:「覚醒的」が不明瞭(直訳的で意味が伝わりにくい)。英語の“woke”の訳だと推測されるが、日本語では一般に通じにくい。
◦修正案:
・「急進的でいわゆる“リベラル思想”に偏ったプロパガンダ」
・「過度に政治的正しさを強調したプロパガンダ」

• 「一角を担ってきた」
◦指摘内容:「一角」が曖昧で具体性に欠ける。
◦修正案:
・「重要な役割を果たしてきた」
・「多様な情報源の柱の一つとなってきた」

まとめ(修正文の例)

トランプ大統領がPBSNPRへの連邦資金提供を停止する大統領令に署名した背景には、単なる財政削減を超えた政治的意図が垣間見える。大統領はこれらの公共放送機関が「急進的で、政治的正しさを過度に強調したプロパガンダ」を広めていると非難し、偏向報道の是正を理由に資金カットを行った。しかし、公共放送の役割は単なるニュース提供にとどまらない。広告収入に依存しない中立的な立場から、少数派の声や地域社会の課題を拾い上げ、商業メディアでは報じられにくいテーマに光を当ててきた。それゆえ公共放送は「公共の利益」に奉仕する存在として、民主主義社会における多様な情報源の柱の一つとなってきた。

2)構造診断

プロンプト(構造診断):
各段落を「要旨根拠結論」の順で整理し、再構成案を示してください。

ChatGPT:

以下は、あなたの元の文章を「要旨→根拠→結論」の構造に基づいて再構成した案です。段落ごとに役割を明確にし、論旨をよりクリアにしました。

【第1段落:要旨・背景】
要旨:
トランプ大統領は、PBSやNPRといった公共放送への連邦資金提供を停止する大統領令に署名した。
根拠:
その背景には単なる財政削減以上の、政治的な意図が存在する。
結論:
この決定は、メディア政策を通じた政治的影響力の行使として注視すべきである。

【第2段落:根拠の具体化】
要旨:
トランプ大統領は、公共放送が「急進的で政治的正しさを過度に強調したプロパガンダ」を広めていると主張している。
根拠:
偏向報道の是正を理由に、資金提供の打ち切りを正当化した。
結論:
これは報道内容への不満を契機とした政治的制裁とも受け取れる。

【第3段落:公共放送の価値と役割】
要旨:
公共放送には、単なるニュース提供以上の社会的役割がある。
根拠:
広告収入に左右されず中立性を保ちながら、少数派の声や地域社会の課題に光を当て、商業メディアでは扱われにくいテーマを掘り下げている。
結論:
こうした公共放送は、「公共の利益」に奉仕する情報源として、民主主義社会において不可欠な存在である。

再構成後の全文(結合版)

トランプ大統領は、PBSやNPRといった公共放送への連邦資金提供を停止する大統領令に署名した。その背景には、単なる財政削減を超えた政治的な意図が垣間見える。この決定は、メディア政策を通じた政治的影響力の行使として注視すべきである。

大統領は、これらの放送機関が「急進的で、政治的正しさを過度に強調したプロパガンダ」を広めていると非難し、偏向報道の是正を理由に資金提供の打ち切りを正当化した。このような動きは、報道内容への不満を背景とした政治的制裁とも受け取ることができる。

しかし、公共放送は単なるニュース提供にとどまらない役割を果たしている。広告収入に依存せず中立性を保ちながら、少数派の声や地域社会の課題を取り上げ、商業メディアでは報じられにくいテーマに光を当ててきた。こうした公共放送は、「公共の利益」に奉仕する情報源として、民主主義社会における多様性と健全な言論空間を支える柱の一つである。

3)スタイル最適化

プロンプト(スタイル最適化):
ターゲット=一般読者、媒体=ニュースサイト。専門用語には10語以内の解説を添えて書き直してください。

ChatGPT:

以下は、一般読者をターゲットにしたニュースサイト掲載向けの記事の書き直し版です。専門用語には10語以内の簡潔な注釈を添え、全体の流れは「要旨→根拠→結論」をベースに再構成しています。

トランプ氏、PBSとNPRへの資金停止 公共放送の役割と政治介入の懸念

トランプ前大統領は、米国の公共放送であるPBS(Public Broadcasting Service)とNPR(National Public Radio)への連邦資金の提供を停止する大統領令に署名しました。これは単なる財政削減というより、報道内容への強い不満と政治的な狙いが背景にあるとみられています。

偏向報道を理由に資金打ち切り

トランプ氏は、PBSやNPRが「急進的で“ウォーク(woke)”なプロパガンダ(※特定の思想を広める宣伝)」を流していると非難しています。ここでの「ウォーク(woke)」とは、社会的不正義や差別への意識が高い姿勢を指す言葉で、最近では保守派から批判的に使われることが増えています。

トランプ氏は、これらの放送局の報道姿勢が左寄りで偏っているとして、「公正な報道に反する」との理由で資金提供をやめる判断を下しました。

公共放送が果たしてきた役割

しかし、公共放送は単なるニュース配信を超えた存在です。広告に頼らないため、商業的な利益に左右されず、中立的な立場を保ちやすいとされています。また、NPRやPBSは、大手メディアでは取り上げにくい少数派の声や、地域社会の課題を丁寧に報じるという重要な役割を担っています。

たとえば、地方の教育問題や環境保護、移民の生活実態など、民間メディアでは採算がとりにくいテーマに焦点を当て、社会の多様な視点に光を当ててきました。

民主主義を支えるメディアの一角

公共放送は「公共の利益(public interest)」に奉仕するメディアとして、政治的圧力から独立した情報発信を目指してきました。これは、民主主義における言論の多様性を守る上で欠かせない要素です。

今回の資金打ち切りは、そうした独立性に対する政治的介入とも受け取られかねず、報道の自由やメディアの自律性をめぐる新たな議論を呼びそうです。

用語解説(本文中注釈)
• PBS(Public Broadcasting Service):米国の非営利公共テレビ局
• NPR(National Public Radio):米国の公共ラジオ放送局
• プロパガンダ:特定の思想を広める意図的な情報
• ウォーク(woke):差別や不公正に敏感な姿勢。近年は政治的含意あり
• 公共の利益(public interest):社会全体の幸福や健全性を守る価値基準

どうですか?かなり読みやすい記事にまとまりました。ここまでくれば、ちょっとした手直しで完成版ができそうです。

今回のまとめ

AIを活用した推敲・リライトは、「何をどの順に修正するか」を明確にすることで、驚くほど効果的になることが分かりました。今回ご紹介したポイントは次の4つです。

  1. 目的別にプロンプトを使い分ける
    誤字脱字の確認、構成の見直し、文体の調整など、目的ごとに指示を分けてAIに入力しましょう。丸投げではなく、段階的に進めることがコツです。
  2. 簡潔で伝わりやすい文章にする
    一文を短く、表現をシンプルに。冗長な言い回しは、意味を損なわない範囲で削ぎ落とします。
  3. 文体とトーンを整える
    語尾やトーンがばらつかないよう、読み手と媒体に合ったスタイルに統一します。
  4. AIの提案を選別し、人間の視点で仕上げる
    AIの出力はあくまで「たたき台」です。すべてを鵜呑みにせず、自分の意図と読みやすさを最終基準に、編集者の目で整えましょう。

AIは、文章の見落としやすいクセを客観的に指摘してくれる頼もしいパートナーです。ただし、最終的に「読まれる文章」に仕上げるのは人間の判断。今回の手法を活かせば、効率よく、質の高い文章が書けるようになります。

次回は、「AIを活用した説得力のある文章の作り方」を解説します。


小室誠一:Director of BABEL eTrans Tech Lab
https://www.youtube.com/@eTransTechLab

おすすめの記事