AIを使えば、短時間で文章を作成できます。しかし、そのままでは「どこか不自然」「情報が薄い」と感じることも多いでしょう。たしかにAIは、構文的に整った文を出力するのが得意です。しかし、「読んで心が動く文章」となると、まだ人間の力が必要です。
今回は、AIが生成する文章の特徴と、人間がそれをどう整えれば「読まれる文章」になるのかを、具体例とともに解説します。
1. AIが生成する文章の特徴
まずは、AIの得意・不得意を整理しましょう。
AIの得意なこと
- 一貫した文法と語彙の使用 → 誤字・脱字が少なく、正確な文を出力
- シンプルでわかりやすい表現 → 短文で構成され、読みやすい
- 大量の情報を整理する能力 → 要約やリスト作成が得意
AIの苦手なこと
- 単調になりがち → 同じ構文や語彙が続くことがある
- ありきたりな表現が多い → 「テンプレート感」が強く、個性に欠ける
- 論理の飛躍があることも → 前後の文脈がかみ合わないケースがある
例:AIが書いたワイヤレスイヤホンの紹介文
AIの文章
「最新Bluetooth搭載のワイヤレスイヤホンは、クリアな高音質と最大32時間再生、直感的なタッチ操作で、毎日を快適に彩ります。」 |
一見、問題がないように見えますが、「クリア」「直感的」「快適」といった抽象的な表現が並び、製品の個性や使用シーンが伝わりにくい内容になっています。
2. 不自然な表現を修正する方法
AIの出力を「自然な日本語」に近づけるには、人間が以下のような視点で修正を加えることが大切です。
(1)単調な表現を改善する
修正前(AIの文章) | 修正後(人間が調整) |
「ワイヤレスイヤホンは、コードがないため快適に音楽を楽しめます。Bluetoothでスマートフォンと接続できます。」 | 「ワイヤレスイヤホンなら、通勤中の電車内でもコードが邪魔にならず、カバンや服に引っかかる心配なしに音楽を楽しめます。」 |
単に「快適」と言うのではなく、具体的な場面での使いやすさを描写する。
(2)ありきたりな表現を避ける
修正前(AIの文章) | 修正後(人間が調整) |
「ワイヤレスイヤホンは、多くの人に使われています。」 | 「ワイヤレスイヤホンは、通勤中のビジネスパーソンやランニング中の人、カフェで勉強する学生など、幅広い人に愛用されています。」 |
「多くの人」よりも、具体的なユーザー像を示すことで説得力が増す。
(3)文脈に合った表現を選ぶ
修正前(AIの文章) | 修正後(人間が調整) |
「ワイヤレスイヤホンは、未来的なデバイスです。」 | 「ワイヤレスイヤホンは、コードレスで操作も音質も進化した先端テクノロジーのデバイスです。」 |
「未来的」よりも、具体的な特徴(先端テクノロジー)を入れることで、伝わりやすくします。
3. AIの文章をより「人間らしく」するコツ
ここからは、「読ませる文章」へと引き上げるためのテクニックを紹介します。
コツ(1):主観や感情を入れる
AIの文章は「説明調」になりがちです。読者が共感しやすいように、感情を加えます。
修正前(AIの文章) | 修正後(人間が調整) |
「このワイヤレスイヤホンは、多くの機能を備えています。」 | 「このワイヤレスイヤホンを使った瞬間、雑音のない音楽とスムーズな操作に感動し、『もっと早く使えばよかった』と思いました。」 |
単なる説明ではなく、自分のことのように感じられるエピソードで感情に訴える。
コツ(2):比喩や例えを使う
読者がイメージしやすいように、比喩を取り入れる。
修正前(AIの文章) | 修正後(人間が調整) |
「このワイヤレスイヤホンは、音質が良く、通話にも使えます。」 | 「このワイヤレスイヤホンは、まるで耳元に小さなコンサートホールがあるような音質で、通話もクリアに響きます。」 |
比喩を入れることで、記憶に残る表現になる。
コツ(3):リズムを意識する
同じような文の並びを避け、短文と長文を組み合わせる。
修正前(AIの文章) | 修正後(人間が調整) |
「ワイヤレスイヤホンは、Bluetoothで接続できます。音楽を聴いたり、通話をしたりできます。バッテリーも長持ちします。」 | 「ワイヤレスイヤホンはBluetoothで簡単に接続でき、音楽を楽しんだり通話をしたりと便利に使えます。さらにバッテリーも長持ちで、外出先でも安心です。」 |
文章のリズムを意識して、自然な流れに。
4. 実践:「AIに書かせた文章を添削してみよう」
では最後に、AIが生成した文章と、その添削例を見てみましょう。
AIの文章(元の文)
「ワイヤレスイヤホンは、コードがないので快適に使えます。Bluetoothで接続でき、音楽や通話に便利です。」 |
人間が修正した文章
「音楽を聴いているとき、ポケットやバッグに引っかかるコードにイライラしたことはありませんか?このワイヤレスイヤホンなら、そんな煩わしさから解放され、自由に動けます。Bluetooth接続でスマホからワンタッチで音楽を再生でき、電話がかかってきたときもイヤホンを外さずそのまま通話が可能。まるで自分だけの特等席で、好きな音に包まれる心地よさを体感できます。」 |
- 「快適」→ 読者のストレス体験を想起させてから解決策へ
- 「便利」→ 何がどのように便利なのかを具体的に展開
- 最後に「特等席」などの比喩表現で余韻を残す
5. おまけ 「人間らしい文章」を書かせるコツ
最後に、ChatGPTで「人間らしい文章」を書かせる8つのコツを挙げておきましょう。これらの内容をプロンプトに含めることで、少しでも修正の少ない文章を生成してもらえるようにします。
- ペルソナ設定:年齢・職業・性格など具体的に描写。
- 口調と文体指定:「カジュアル」「説明っぽく」など話し方を例示。
- 感情を盛り込む:「びっくり!」「うれしい!」などリアクションを加える。
- 実体験を入れる:失敗談や成功例でリアリティUP。
- トレンドを活用:話題のサービスや流行語を取り入れる。
- 共感を誘う質問:「これ、あるよね?」「私だけ?」と投げかける。
- 文章にメリハリ:短文でテンポ、長文で説得力を。
- PREP構成で整理:結論→理由→例→結論で伝わりやすく。
ちなみに、PREP構成とは情報をわかりやすく伝えるための文章構成法で、以下の4つの要素でできています。
- Point(結論):最初に結論をズバリ伝える
⇒ ワイヤレスイヤホンは毎日を快適にしてくれる。 - Reason(理由):その結論に至った理由を述べる
⇒ コードがないから邪魔にならない。 - Example(具体例):具体例・事例を挙げて説得力を補強する
⇒ 例えば、電車の中でもカバンに引っかからないし、ジョギング中も落ちにくい。 - Point(結論の繰り返し):最後にもう一度結論を強調する
⇒ だから、移動が多い人には特におすすめです。
「結論 → 理由 → 例 → 結論」の順なので相手にわかりやすく説得力が増します。
プレゼン・スピーチ・短い文章に最適です。
今回のまとめ
AIの文章を自然にするためには?
- 単調な表現を改善する
- ありきたりな言い回しを避け、具体化する
- 感情・比喩・リズムを加えて「読ませる」文章へ
AIは頼れる相棒ですが、最終的に読み手に届くかどうかは「人間の手」にかかっています。
一文一文に、読者への「気持ち」を込める──それこそが、AI時代の新しいライティング術です。
次回は、「AIによる文章の推敲・リライト術」を解説します!
小室誠一:Director of BABEL eTrans Tech Lab
https://www.youtube.com/@eTransTechLab