2020年9月号

メディアは中国のコロナ後の経済について、主要国がマイナス成長に落ち込むなか真っ先にプラス成長に転じ、経済規模で他の新興国との格差を拡大し、米国との格差も縮小して猛追すると予想し、これを支えるのは習近平国家主席の新経済政策「シノミクス」であり、その効果を過小評価すべきでないと主張する。その一方、シノミクスは国内で富の格差を拡大したと指摘し、特に低・中所得層はパンデミックで大きな被害を受けたが政府の救済策は不十分だと批判。経済急回復の問題点として、回復自体がぜい弱でまだら模様、貿易相手国の景気が二番底に陥るリスク、回復の持続可能性への疑問、債務の増大や銀行システムの悪化懸念、さらには経済指標に対する懐疑などを挙げる。

台湾が米国を中心とする日本を含む西側諸国と連携して、新たなグローバル・サプライチェーンの構築に動き出した。現在のグローバル・サプライチェーンの中国依存リスクが米中対立やコロナウイルス・パンデミックにより明確になったことが背景にある。米国も在台協会やDFCが準備を整えていると報じられている。分野としては半導体、医薬品、エネルギー産業、中国に代わる移転先として東南アジアが挙げられている。ただし、EUはこうした動きを米国の政治的圧力による反中運動として捉え一線を画す構えを見せており、今後の動向を見守っていく必要がある。

韓国の文在寅大統領が名誉毀損法を利用して、敵対者を相手に多数の名誉毀損訴訟を起こし、言論機関の取り締まりにも乗り出すなど自由や人権の抑圧に動いている。メディアは北朝鮮の弾圧行為と同列にあると批判して、米政府に是正を求める行動を起こすよう訴えている。同時に左派政権である文政権は、軍事独裁政権時代からの長い迫害体験から批判的メディアを政治的反対勢力として捉える強迫観念から脱却できず、過敏に反応しているのであり、心配すべき行動ではないとの見方も紹介する。

北朝鮮では、経済制裁に加えてパンデミックや台風による被害が経済的困窮に拍車をかけている。こうした北朝鮮を中国が積極的に支援し、北朝鮮経済の対中依存度が高まっている。北朝鮮のダミーとみられる多数の中国企業が2014年から17年にかけて貿易額全体の20%に達する船積みに関与したとメディアが伝える。また海外出稼ぎ労働者からの送金やサイバー攻撃による現金窃取が重要性を増しているが、各国の旅行制限により出稼ぎ労働者の海外派遣がきわめて困難となっており、そのためか、先月サイバー攻撃を再開したと米政府の4機関が共同で警告したと報じる。

東南アジア関係では、インドネシアとフィリピンが政治のためにコロナウイルスの感染拡大が防止できていないと指摘された。メディアは、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領とフィリピンのドゥテルテ大統領の性格や人となりと共に感染防止策や執行状況を分析し、両者を強権的手法で対処しているが成功していない指導者のグループに分類する。またドゥテルテもジョコも制度を見直し、効率のよい責任ある政府を構築する努力に欠け、有権者も強く求めていないと批判して問題の深さを明示する。

インド政府は、パンデミックにより経済が急減速するなか、巨額の不良債権を抱える金融システム救済のために返済猶予や債務再編などからなる新不良債権対策を打ち出した。リスク債権はテレコムと公益事業の2分野に集中し、不良債権化する危険が高まっている。このため銀行の不良債権比率も今後上昇すると見込まれ、民間大手銀行は資本増強のために市場からの資金調達で対応しているが、国有銀行は政府頼みで自己資本比率の低下が不可避とみられている。