2020年11月号

中国で第19期中央委員会第5会全体会議(5中全会)が開かれ、2025年までの第14期5カ年計画の草案などが話し合われた。習政権は米国とのデカップリングや脱グローバリゼーションを展望し、次の5カ年計画を策定すると共に超長期の計画を内外に宣言した。核となる政策は、内需の育成とテクノロジー分野での大躍進による自足であり、さらに2050年における中国の最富裕国と技術最先進国入りを目標に掲げた。ただしメディアは、計画には詳細が欠けており、かつ過剰債務の克服と対米摩擦への対処などの難題が待ち受けていると指摘する。目標は遠大だが前途は多難である。

台湾関係では、トランプ米政権が最初の任期が終わる時期に矢継ぎ早に台湾防衛支援のための武器売却を承認した。10月21日に空対地ミサイル、次いで26日に対艦ミサイルシステムなどそれぞれ総額18億ドルと28億ドルの武器売却を承認した。トランプ大統領の再選戦略である中国叩きの一つともみられるが、台湾は米大統領選挙でバイデン候補が勝利した場合、同候補が副大統領を務めたオバマ政権時代の対中融和政策が復活するのを懸念している。

韓国では景気後退に歯止めがかかったとメディアが報じる。経済が早期回復に向かっている要因として、コロナウイルスの迅速な感染拡大防止に成功したことに加えて輸出重点型、とりわけサービス重点型の輸出国であることが寄与したとされる。中国についても似たようなことが報じられている。

北朝鮮が国境を閉鎖し外交官を退去させる、あるいは軟禁するなど、かつてないほど孤立を深めているとメディアが伝える。対米外交の停滞によって経済制裁の緩和あるいは撤廃の希望を失い、加えてコロナ禍によって厳格な国境閉鎖に迫られて、再び核とミサイルの開発深化の道を突き進み、この間、北朝鮮の体制維持に利益を持つ中ロが密かに支援を続けていると伝える。孤立を深める北朝鮮が次の一手として何を打ち出してくるかが注目される。

東南アジア関係では、菅義偉首相が就任後初の外遊でベトナムとインドネシアを訪問した。メディアは、金融面で言えばアジアにおいて中国に対する実質的な挑戦者は日本だと述べ、日本が金融力をもって強権姿勢を高める中国に対抗することに期待を示す。日本のそうした力を支える存在として、08年の世界的金融危機で余り打撃を受けなかった健全な邦銀と国際協力機構(JICA)の存在を挙げ、日本政府の「自由で開かれたインド太平洋」政策を支援していると指摘する。

インドと米新政権との今後の関係についてメディアは、先ず米現政権と新政権との外交方針の違い、次いで副大統領にインド系米国人のカマラ・ハリス氏が就任することを挙げて問題点を指摘する。第1は、モディ首相が進める国内イスラム教徒の排斥などの人権問題で、バイデン、ハリス両氏はインドの世俗主義と多民族的、多宗教民主主義の伝統と矛盾すると批判する。第2はカシミール紛争で、両氏はインド政府に対して説明責任をトランプ以上に求めると示唆する。第3は対中関係で米現政権は中国を念頭にインドと軍事関係を強化しているが新政権でも不変と予測する。