2020年8月号

中国は国際世論を敵に回しても確固として香港の民主派勢力の封じ込めに動いている。メディアによれば、しかも香港の金融センターとしての機能については、中国指導部は本土の経済力を梃子にして慎重に保全する構えをみせている。香港の民主派に対する弾圧は香港安全維持法を制定し、法の支配の原則の下での取り締まりという体裁を整えているが天安門事件の再来を思わせる。警察を前面に出して人民解放軍と本土政府は後方に控えているが、指揮を執っているのは本土の共産党である。その意味で香港は第2の天安門になっていると言えよう。本土化する香港は、今度は中国国内の金融センターとして再生し、やがてアジアのグローバルな国際金融センターとして復活するかもしれない。

米トランプ政権は台湾に過去最高位の閣僚を派遣して、緊密な米台関係を演出した。これに対し中国は台湾海峡にジェット戦闘機を飛ばすなど反発した。米国は台湾の自国陣営への取り込みを天下に示し、最も敏感な問題で中国を挑発したと言える。こうしたトランプ政権の動きの背景には、香港自治を否定した中国の動きがあり、これに対抗して台湾を国際舞台に復帰させようとする米国の狙いがあるとみられる。

韓国関係では、メディアが米関係者筋のリーク情報として、米国防総省が在韓米軍をめぐり削減を含めた選択肢をホワイトハウスに提示したと報じる。メディアは、部分的にしても朝鮮半島からの米軍撤退は米国の弱さの兆候と世界中で受け止められる可能性があり、費用の節約にもならないと批判。中国と北朝鮮の専制独裁者を喜ばすだけで国内政治上も大統領選で民主党のバイデン候補に塩を送る結果になると指摘し、目先の政治的計算で削減という重大な決定をすべきでないと強調する。

北朝鮮がようやくコロナ感染者の発生を認めた。北朝鮮国営メディアによれば、感染者第1号は韓国から帰還した脱北者だった。このため当局は緊急システムを発動し、かなりの数の人々を隔離し、かつ「全人民キャンペーン」と銘打った反ウイルス運動を展開したと報じる。メディアは北朝鮮の狙いについて、韓国その他の諸国からの援助獲得であり、韓国からの脱北者を最初の感染者としたのは面子を保つためだろうとの専門家の見方を伝える。北朝鮮もいよいよコロナ禍で追い詰められてきたとみられる。

東南アジア関係では、フィリピン・ペソが他の新興国通貨と比べて安定的に推移していると報じられた。要因として、高水準の外貨準備、比較的少ない対外債務、原油輸入国として原油価格急落の恩恵、出稼ぎ労働者による活発な海外送金が挙げられ、安定した経済のためフィリピン建て資産の人気も衰えていないとされる。海外送金が落ち込まない理由として、多くが医療関係従事者であることが挙げられている。

インド社会ではカーストによる差別が依然として根強く残っている。差別は広く宗教界、官僚組織、司法界さらにはジャーナリズムの世界にもみられ、メディアはカースト間の結婚は依然としてきわめてまれだと報じ、居住地域にみられる排斥は米国の人種差別と類似していると指摘する。