2021年8月号

中国関係では、世界の超大国・中国という概念に挑戦した論説記事を紹介した。まず記事は、超大国になるのは複雑な仕事であり、中国の能力、熱意、意志が試されると指摘。問題を軍事的分野と貿易、製造という経済分野に分け、経済の重みは大きなレバレッジとはなるものの政治的には決定的ではないと主張する。軍事面では、中国はこれまで米国の世界に張り巡らした同盟国体制や軍事的プレゼンスを崩そうとする動きをみせていないこと、米国のようにその軍と基地を歓迎した国々に対して安全保障を提供する可能性が低く、対抗する独自の代替システム構築は困難と思われることを挙げ、最終的には、超大国になるには米国とは異なる新しい方法を見つけるか、野心をあきらめるかだと論じる。

台湾では6月に米台間でTIFA協議が再開され、自由貿易協定の締結への期待が高まっていたが、7月に米国で大統領に通商交渉権限を与える大統領貿易促進権限(TPA)法が失効し、交渉進展の芽が摘まれた。バイデン政権は議会に新TPA法を求める意向はないと報じられているが、自由貿易協定には幾つかの利点がある。加えて台湾との協定には中国に対する地政学的な意義があり、バイデン政権の台湾政策の観点からも今後の同政権の動きが注目される。

韓国で住宅価格の上昇が止まらない。ソウル首都圏でマンションの平均価格が過去5年間で倍増している。このため国民、特に中間層が経済的不平等を拡大させている根本原因を攻撃すると公約して登場した文在寅政権への怒りを募らせている。これに対する文政権の対応はモグラ叩きと評されている。中間層の間に政権への怒りが次の大統領選を控える与党陣営に打撃を与えている。

北朝鮮の食料事情が熱波と干ばつによって一段と悪化している。金総書記もこうした食料状況を「窮迫している」と評しているが、専門家は穀物や米を含む大幅な食料不足は北朝鮮が単独で対処できる規模を超えていると指摘し、最大300万人の命が失われるとの見方も示している。

東南アジア関係では、シンガポールが仮想通貨などのデジタル資産の取引で世界の金融ハブのなかで特にライバルの香港市場に先行して取引所の参入を認める決定をした。シンガポール当局にとって重要な命題は、投資家の保護とマネーロンダリング、テロ資金の調達や詐欺などの仮想資産の悪用の防止とのバランスをいかに取るかにある。日本を含む世界各国の当局者が大きな関心を持って見守っているテーマであり、今後の動向を注視したい。

インドからは、メディアが第2波となる5月のコロナ禍による被害の惨状を詳細に報じる。大被害の主因はデルタ型の変異ウイルスにあり、解決策は人口の8割以上のワクチン接種以外にはないとの専門家の見方や当面はデルタ型と共生していく他はないとの意見を伝える。ただし児童の感染率が低く、多くは無症候で重篤者が極めて少ないと報じる。