2021年7月号

中国では共産党が創設100周年を迎えた。メディアはいずれも100年の歴史に対する批判と今後の100年に対する懸念に満ちた論評を展開。中国共産党の100年の歴史は、最終的に成果だけでなく、その犯罪行為によっても判断されて然るべきだと主張する。

台湾の蔡英文政権は、長年の懸案だった米台貿易投資協定の締結に向けてバイデン政権と交渉を再開した。メディアはその意義について、米新政権の台湾関係強化路線が改めて確認され交渉が結実すれば、中国の反発を警戒しながらも台湾との関係強化を望む国々に政治的口実を与えると指摘する。同時に問題点として、台湾によるラクトパミン豚肉の輸入制限や目玉の一つである半導体供給の協力問題の詳細が不明であることを挙げる。

韓国の文大統領が最後の努力を北朝鮮政策に注ぎ、様々な外交努力を重ねているとメディアが報じる。同大統領は、「非核化と制裁緩和のサイクル」が核弾頭やICBMのような北朝鮮の死命を制する問題を交渉のテーブルに乗せると主張しているが、これには様々な障害があり、最終的にはこの問題に対する真の解決策は見当たらないとの厳しい現状認識がその政治的遺産となるだろうと指摘する。

北朝鮮の金総書記が政治局会議でパンデミック対策の「失敗」と感染防止努力の「甚大な危機」に言及して高官を叱責し、降格したと報じられた。メディアはこの発言に関連して、新型コロナウイルスの感染爆発が発生した、あるいは、深刻な食糧危機に鑑み特に中国に対して遠回しに援助を呼びかけたという2つの見方を示す。ただし、第1の見方は金総書記が発言したという政治局会議が大規模感染の中で開催されたとは考えにくいこと、感染地域の閉鎖という事態も探知されていないことなどを挙げて否定的な見解を示し、むしろ最大の支援国である中国へ遠回しに援助を求めたとの解釈に傾いている。

東南アジア関係では、マレーシアで王室が政局において存在感を高めており、国王が議会重視を打ち出し、民主主義擁護の姿勢を鮮明にしているとメディアが伝える。弱小な多数派を率いるムヒディン首相も国王の意に沿って大型景気対策やワクチン接種促進などの政策を打ち出し、高い支持率を維持していると報じる。マレーシアが立憲君主制の下で政局の安定を保っている面があることに注目したい。

インドの深刻なコロナ危機とそれに伴うワクチン輸出禁止措置によって、クワッドが単なる反中軍事同盟ではなく、コロナ対策で地域に実用的な援助を提供できる組織であることを証明する米政府の試みが損なわれているとメディアが報じる。背景に米政府が日米豪からの財政および後方支援を受けて、インドが東南アジア向けのワクチンを供給するクワッド・ワクチン・イニシアチブを先導していたことがある。ただし事態はまだ順調に進んでいるとの米高官の発言もあり、今暫く推移を見守る必要がある。