2019年5月17日号

――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――

(毎週金曜日配信    計 4 回総集編)

執筆:前田高昭  (国際金融ジャーナリス)

中国の広域経済圏構想「一帯一路(BRI)」に対して国際的批判が高まっている。メディアは、中国のインフラ・プロジェクトは要注意で不快なサプライズが含まれている可能性があると警鐘を鳴らす。BRIは一般的に金融、デザイン、建設、それに外交関係の強化を絡ませたパッケージとして提示されているが、案件への投資に不透明な条件での多額の借金が伴う場合には、借り手は慎重の上にも慎重を期すべきだと助言する。こうした批判を受けて中国は北京で開かれたBRI首脳会議で採択された共同声明で債務の持続可能性に関する国際合意を尊重し、環境に優しい経済成長を促進する融資を行うことで合意したと報じられている。

台湾では来年1月に総統選が実施される。これに鴻海精密工業の郭台銘会長が国民党から立候補すると表明し、台湾政局に衝撃を与えている。一般的には、同氏の出馬は中国政府も歓迎するはずとみられ、また同氏も中国政府が主張する線に沿って歩む意向を示唆する発言をしているが、メディアは、これには国民党の指名獲得という別の狙いが込められていると指摘。交渉術にたけた同氏は、中国政府の期待どおりに動くとは限らないとの見方を示す。

韓国では第1四半期の経済成長率が予想に反して前四半期比0.3%減と前四半期の3.3%増から急減速し、グローバル金融危機以来の最悪を記録した。原因として政府支出の減退、予想を上回る半導体メモリ部門の不振、それによる設備投資の減少、米中貿易紛争による輸出の停滞が挙げられている。ただし4月に入り製造業部門購買担当者指数は3月の48.8から過去6ヶ月間の最高となる50.2へ上昇するなど改善の兆しをみせている。

北朝鮮は5月に入り短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体の発射実験を繰り返している。金委員長がこうした挑発姿勢を打ち出すなか、米政府も石炭輸出を禁じる国連の経済制裁措置に違反したとして北朝鮮最大級のばら積み貨物船を差し押さえ、「瀬取り」の取り締まり強化に動くなど強硬姿勢を堅持している。米朝交渉が停滞するなかで両者の睨み合いが続いている。

東南アジア関係では、インドネシアで先ごろ実施された大統領と議会選挙でジョコ氏の再選が確定した。要因として、メディアは同氏がイスラム穏健派の大物を副大統領に据えたことを挙げる。しかし、それによって対立候補プラボウオ氏との間でイスラム強硬派対イスラム穏健派と非イスラム勢力、という対立の構図が先鋭化したと伝える。ジョコ氏がより問題の多い改革の実現や多極主義の推進に努力する可能性を指摘。これにプラボウオ陣営が街頭デモの激化で対抗し、社会の亀裂がいっそう深まると懸念を表明する。

インドについて、メディアが今は低位中所得国に属するが、そこから上位中所得国さらには先進諸国へと進むには、外資に大胆に門戸を開く必要があると論じる。それにはテクノクラートの財務大臣や投資担当大臣を登用しなければならないと主張する。また外資導入の障害として、債務不履行を簡単に起こすインド企業や問題の多いシャドーバンキングの存在を挙げて対策の必要性を強調し、政府の果たすべき役割や外資の導入についての方法論などを説く。