2020年12月号

中国の習政権は民間企業を国の方針に従わせ、事業を国家目標の達成に向けて方向付けようとしている。背景として、民間部門は予測不能な存在で全面的に信用はできないという考え方や、複雑な経済の運営には国の計画立案者の方が適しているとの見方が政権内に広がっていることが指摘されている。かつて社会主義市場経済ともてはやされた改革開放の経済体制が市場経済につきものの混乱が生じると、共産党が牛耳る国家権力の発動により収拾を図るという往事の計画経済のいわば原点に回帰するような結果になっている。こうした動きは中国経済の活力や効率性を奪うリスクがあり、中国経済が抱える新たな大きな問題として注目していく必要がある。

台湾と米国との間で経済対話が初めて開かれ、台湾が成果を挙げているコロナ対策などの健康医療や半導体サプライチェーン、さらに5Gとテレコミュニケーションなどを含む幅広い分野での協力関係の推進が確認された。合意文書として5カ年協定が調印された。これには法的拘束力はないとされているが、今後の米台関係を規定する合意として象徴的以上の意味があるといえる。特に台湾側は将来の米台貿易協定の成立を展望していると報じられている。

香港の金融ハブとしての地位が揺らぐなか、韓国のソウル市がそれに取って代わろうと動き出している。市内の汝矣島(ヨイド)にある国際金融センターを候補地として考えている。ただし厳しい規制、柔軟性に欠ける労働市場、高い税率そして高騰する住宅価格や家賃などを勘案するとソウル市には国際的金融都市で働く外国人人材を引き付ける魅力があるだろうかという問題が挙げられている。ソウル市当局は家賃、賃金、通訳費用を支援する企業誘致のインセンティブパッケージを用意していること、コロナウイルス対策での成功、さらにはソウルには他の諸都市にない独自のアイデンティティがあるなどのアナリストのコメントもあり、楽観的見方をしているとメディアは報じる。東京もまた香港に代わる金融センター構想を推進しようとしているので、こうしたソウル市の試みは十分注視していく必要がありそうだ。

北朝鮮が核武装や閉鎖性、貧困といった印象の強い金正恩体制について、もっとソフトなイメージを広めようとしている。その狙いは、ソーシャルメディアを通じて普通の国というイメージを売り込み、制裁の緩和を世界の世論に訴えることにあるとメディアは伝える。しかし秘密主義と閉鎖を守る国是からみてもその広報宣伝活動には限界があるとみられる。

東南アジア関係では、フィリピンの海外出稼ぎ労働者は熱心に海外で働き、稼いだ資金を本国に送金し家族を支援しているが、国内の政治を変革する役割は未だ期待できないとメディアが伝える。理由として、第1に政治力を発揮できる中産階層に成長していないこと、第2に彼ら自身が専制体制の地域で働き、独裁政治への疑問をあまり抱いていないこと、第3にそうした役割が期待できるプロの専門家層は海外に永住していることを挙げる。

インド経済は、その大半を占める中小企業がコロナで大打撃を受けて急激に縮小している。メディアは、モディ政権の経済政策の故に経済はコロナ前から躓き状態にあったためにコロナ前の経済成長に戻るのが困難だと伝える。政府は2660億ドルの景気刺激策を打ち出しているが焼け石に水だと述べ、こうした状況を「ビジネスの大量破壊」と評する。