中国指導部は今回のような経済危機の再来を予測して、その世界の政治経済に与える影響について中国なりの中長期的戦略を描いて周到に準備していたとメディアが伝える。報告書をまとめたのが米中貿易交渉で中国チームを率いた経済担当副首相の劉鶴氏である。こうした初期段階の準備によって、中国は危機対応を有利に進めているとみられると指摘する。ただし、劉副首相は報告書で過剰な拡張的外交と不必要な軍事的関与を差し控えるよう提言している。指導部がそうした劉氏の提言をどのように生かしていくかを注視する必要がある。
メディアはまた、中国のコロナウイルス対応をめぐるトランプ米大統領の脅しが人民元安の圧力となっていると伝える。現在の元は、米大統領選を控えて攻撃的姿勢を強めるホワイトハウスの犠牲者との見方を示し、対ドルで7.50元にまで下落する可能性を示唆。同時に新興国通貨の追随下落と新興国経済の不安定化に懸念を表明する。ただし元安は必ずしも中国の輸出を伸張させず、また大幅な元安は非友好的措置と見做されるために人民銀行はこれを避けるとみられており、人民銀行の采配が注目される。
台湾ではコロナウイルスの新規感染者が発生していない状況が続いている。しかし当局は、国境封鎖の解除に極めて慎重で、十分に安全な治療薬やワクチンが開発され、利用可能とならなければ外国人の入国禁止令を継続すると述べ、行動制限などの解除についてもスポーツや文化的イベントの部分的かつ小規模での再開を許容する程度に止めている。
韓国で国政選挙が実施され、文政権と与党はコロナ危機対策を評価されて大勝した。しかし同危機で打撃を受けた経済の建て直しのために文政権は当初目指した政治的遺産、すなわち財閥改革と南北和解という目標を後退させざるを得なくなったとメディアは指摘する。特に輸出依存型の経済の損傷は甚大で国民は政府の景気刺激策にもかかわらず先行きに悲観的だと述べ、IMFも今年の韓国経済がマイナス成長に陥ると予測。北朝鮮との和解も米朝関係に左右されるとして進展が見込めないと予想する。
北朝鮮の金委員長がしばらく公の場に姿を表わさず健康に異変が起きたとの憶測が広まっていたが、国営メディアが肥料工場の竣工式への出席を伝え、噂は払拭された。コロナへの警戒感から平壌を一時離れたのが実情と報じられている。米朝関係も米大統領選を控えて進展は期待できず、膠着状態に陥るとみられている。ただし北朝鮮が感染者も死者もいないと主張するコロナウイルスが実は深刻な状況にあるとすれば、対話のテーブルに付く可能性が出てくるかもしれない。
東南アジア関係では、ASEAN諸国が外国直接投資(FDI)の投資先として世界で比重を増し、特に中国の競争力が後退するなかでベトナムとシンガポールが脚光を浴びている。前者は金融サービスと製造業、後者ではフィンテックとテクノロジー分野で注目されている。情報通信技術(ICT)への投資も活発で中国、インド、香港などが投資先として見直されている。また再生可能エネルギー、ホテル・観光、不動産などの伝統的部門でもASEAN諸国が健闘している。
インドでも6週間前にコロナウイルスの感染拡大防止のためにモディ首相が全土にわたって厳しい都市封鎖を実施した。国民に自宅待機を命じ、学校、オフィス、鉄道、航空などを閉鎖し、州境すら封鎖した。人々も忠実に従い、感染拡大防止に成功した。だが最近厳しい都市封鎖を緩め始めると直ちに感染者数と死者数が増加し始めた。封鎖解除の前に感染の実態を知るために検査の徹底が必要だと政府タスク・フォースの責任者は語る。まさに現在の日本が参考とすべき状況である。