2018年9月21日号

――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――

(毎週金曜日配信    計 4 回総集編)

執筆:前田高昭  (国際金融ジャーナリス)

北東アジア関係では、中国にとってトランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争は思う壺であり、中国は交渉を必死でまとめようとは全く思っていないとメディアが論評する。中国指導部は米国との貿易戦争によって国内の輸入代替製品への需要が高まり、国民が米製品ではなく自国製品を購入することを歓迎していると述べ、それは中国が経済的な独立を国家目標にしているためであり、トランプ大統領は中国に対する貿易戦争の効果について危険な思い違いをしていると警告する。

台湾を外交面から支援する姿勢を米政府が見せ始めた。メディアはこれを歓迎する一方で、その姿勢が不徹底なこと、またトランプ政権下での動きに不満を示す。米政府の優柔不断とも思われる行動は、結局、中国からの脅しに屈しているためとみられている。

韓国では検察が最高裁長官を含む裁判官について汚職容疑で全面的に捜査するという異常事態に陥っている。下級審(高等法院、地方法院)については以前から、財閥に対して訴追や判決で手心を加えてきたとの批判があったが、大法院(最高裁)が朴前大統領に対し、恩恵を見返りに政治的に有利な判決を下したとの疑いで検察が捜査に乗り出した。司法制度が危機に直面していると懸念されている。

9月6日、米司法省は北朝鮮の工作員を一連のサイバー攻撃へ関与したとして訴追したと明らかにした。司法省は6月に同工作員を起訴していたが、この日まで公表していなかった。米当局者は公表が遅れた理由についてはコメントを控えているが、メディアは、米政府が歴史的な米朝首脳会談で合意した非核化について進展がみられないことに苛立ちを深めていることを挙げる。

東南アジア関係では、ミャンマーを率いるアウン・サン・スー・チー氏について、ロヒンギャの大量虐殺やそれを暴いたジャーナリストの投獄について何も語らないノーベル平和賞の受賞者は、ミャンマー軍による犯罪の共謀者だとメディアが断罪する。スー・チー氏は、その政府の名において血が流されたことに抗議し、政府の職を辞すべきだったと主張する。

インドの通貨ルピーが8月末、対米ドルで71ルピーに下落し、過去最安値を更新した。メディアは、グローバルな貿易摩擦によってさらに下落する可能性があると警告するが、4~6月期の経済成長率が8.2%の高成長を記録するなど経済は好調。ただしエコノミストは、成長率は8月以降、減速して通年では年率7.5%の成長率になると予想しており、当局は景気動向を踏まえて通貨安を放置しているとの見方もある。

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