2018年10月5日号

――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――

(毎週金曜日配信    計 4 回総集編)

執筆:前田高昭  (国際金融ジャーナリス)

中国は米中貿易戦争が実際には貿易に関する戦争ではなく、中国を封じ込め、その台頭を抑止するという米国の試みであり、中国の発展プロセスを押さえ込み、中国の経済的権益や安全保障を脅かす戦略としてとらえているとメディアが報じる。中国指導部はこの問題をダンピング、産業補助金、技術移転の強制などの米政府が批判する問題だけでなく、例えば、台湾、新疆ウイグル自治区の人権、太平洋における軍事演習などを含む幅広い問題からとらえていると伝え、これは中国の本音であるとともに、そう理解することが好都合でもあるからだと指摘する。

台湾が国連総会開催の機会を捉え、活発な外交活動を展開している。2人の閣僚を現地に派遣し、総会には参加できないまでも、国連持続可能開発目標などの国連機関との関係強化に動いている。また台湾と国交を維持する17カ国の一部も総会の場で台湾支援の動きを示しているとメディアが伝える。

朝鮮半島では、韓国の文大統領が訪朝し、今年3回目となる南北首脳会談が開かれた。メディアは今回の南北首脳会談を核とミサイルの廃棄という問題では実質的に何の進展もみられなかったと評し、さらに平壌共同宣言に盛り込まれた南北協力事業的な計画を実現するためには北朝鮮に対する制裁措置の緩和が必要となるため、事実上、北朝鮮の対外貿易再開を認めるよう求める内容だったと強い警戒感を示している。

東南アジア関係では、フィリピンの通貨ペソが新興国通貨の中での最悪の下落を記録している。原油価格の上昇やインフレの加速、財政と経常収支の双子の赤字、さらに投資家が全般的に新興国市場に背を向けていることなどが背景にある。海外労働者の本国向け送金が年末に集中し、ペソは持ち直すとの見方もあるが、米中貿易戦争の悪影響も懸念されている。こうした状況の中で中央銀行が政策金利を0.5%引き上げた。

インドネシア中央銀行も今年5回目となる政策金利の引き上げに踏み切り、同時にルピア後押しのために外国投資家による国内での通貨ヘッジを奨励する手段の導入を決定した。政策金利の7日物リバースレポ金利を0.25%引き上げ5.75%とした。

インドで国民の半数をカバーする「長寿インド」、通称「モディケア」といわれる医療制度が発足した。過去の経済発展の恩恵を受けていない最貧層を対象としており、来年に予定されている国政選挙においてモディ陣営の主要な選挙綱領の1つとなると報じられている。ただしモディケアの創出する新需要が、すでに逼迫している医療インフラをさらに圧迫するのではないかと懸念されている。