中国経済がデフレ懸念に直面している。1990年代にバランスシート不況に見舞われた日本と同様の状況に陥り、企業収益の悪化、個人消費の減少、失業者増大などのリスクにさらされ、世界経済への影響が懸念されている。しかも、デフレ圧力への対処やデフレ回避に対する政府の政策手段のけん引力に疑問が提起されている。メディアは、教科書的な対策の一つとして大規模金融緩和を挙げるが、企業や家計はすでに多額の債務を抱えて融資需要が弱く、利下げの効果が上がりにくいと指摘する。また地方政府の債務問題を取り上げ、不良債権処理の推進とそのための債務リスケや利下げなどの実施を提案し、家計心理の改善の必要性にも言及する。中国経済がデフレに陥れば重要原材料や消費財に対する需要が失われ、また輸出品が世界市場で軒並み値下げされれば、一部の国の競合他社を圧迫し、雇用や投資に打撃を与えるとみられる。
米政府は台湾に対して総額3億4,500万ドルの軍事支援を決定した。供与する兵器のリストが公表されていないので詳細は不明でだが、台湾側から推定3億3,220万ドルのりゅう弾砲など砲弾の要請があり、また1億0,800万ドルと推定される装輪車両や軍事装備の交換品と補給品を一括注文する補給支援契約が含まれていると報じられている。台湾国防部は、今回の武器支援は中国の「軍事・グレーゾーン作戦による脅威の拡大」に対する台湾の強靭性が強めると述べており、軍事支援は中国のグレーゾーン作戦に対する台湾軍の兵器の補強、強化を目的の一つとしていると思われる。
韓国で政権が北朝鮮寄りの左翼政権から保守派の尹錫烈政権に変わり、南北関係が激変したとメディアは報じる。尹政権は好戦的な北朝鮮と歩調を合わせて軍事的な準備態勢を強化し、日米との軍事演習を実施し、国内政策でも統一省の改革に踏み切った。同省トップに保守強硬派の金暎浩(キム・ヨンホ)氏を任命した。早速、新長官は左翼政権が曖昧にしていた北朝鮮の人権問題に注意を向け始めたと伝える。ただし南北政権がともに軍事力の強化に走り始めたことがいかなる結果をもたらすか、北の暴走を止める有効な手立てに通じるのかに注目したい。
北朝鮮の金体制はコロナ後の現在も鎖国を続けている。この状況は、多くの一般国民にとって苦痛であるが金委員長にとって好都合であるからだ。パンデミックによって党と国民に対する統制と権力を強化し、またウクライナ戦争や険悪な米中関係のおかげで世界の詮索好きな目から遠く離れて核ミサイル開発計画にまい進できるようになっている。厄介な外国人が戻ってきてあちこちを嗅ぎ回り、とりわけ経済の脆弱さをほじくりだして体制のデメリットを強調することもない。昨年、北朝鮮は記録的な数のミサイル発射実験を行った。核兵器の備蓄量については、20発分から最大116発分までと信頼できる見積もりがある。メディアは、金委員長は可能な限り長い間、何らかの形でこうした支配にしがみつこうとするだろうと予測する。
東南アジア関係では、タイで5月に総選挙が実施され民主派の前進党が勝利し、8党連立による政権樹立を試みているが、軍の意向を受けた上院の反対によって阻まれている。首班指名は下院(定数500)と軍が任命した上院(定数250)の合同で実施され、過半数取得が必要とされるためである。そうしたなか、タクシン元首相の息がかかった第2位の「タイ貢献党」が第3位の「タイ誇り党」と組んで、政権組成を試みることになった。タイ貢献党主導の政権は、王室名誉毀損法を改正せず、前進党を連立政権の一部にしない新憲法草案を提案すると宣言し、他政党に参加を呼びかけている。他政党、特に親軍派の動きが注目されているが、前政権時代の「タイ誇り党」と「タイ貢献党」は政治的に対立する立場にあったとされ、両党の協力が計画どおり進むのかも注目される。
インドは製造業の輸出において、低教育水準の労働力、女性工場労働者の少なさ、過大評価された通貨という3つのハンディを抱えているとメディアは指摘し、教育と女性の労働参加は達成に何年もかかるとして、ルピー安の推進を早期の輸出振興策として提案する。しかしインドのエリート層や当局者たちは、わずかなルピーの下落も国家の屈辱として捉えており、1990年代以降、企業リーダーと新富裕層はルピー高の維持を望んできた。中国、韓国、台湾、ベトナムなど東アジア諸国は輸出拡大のカギとして為替レートの切り下げを活用しており、インドの動きはきわめて消極的と言える。インドの為替政策の一面に光を当てた提言として注目したい。